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【コラム】米中貿易戦争が世界秩序を徹底的に変える-カール・スミス

  • トランプ氏の米国民のための通商政策、中国との決別につながる公算
  • 米中が2つの連合を形成-それ以外の国々はどちらかを選ぶ必要

トランプ米大統領は自らが目指す通商政策の目的はシンプルで、米国民により有利な取引をまとめることだと言い続けてきた。だが貿易戦争激化に伴い、大統領の政策がこの目的を超えたところにつながる公算がますます大きくなっているように思われる。つまり中国との永続的な決別とグローバルパワーの新たな編成だ。

  貿易協議の行き詰まりは、中国側の交渉担当者が突然条件を変えたことがきっかけだと報じられた。この変わり身に米政権は不意を突かれた可能性がある。だがトランプ大統領の対応は明快だった。直ちに関税を引き上げ、中国を代表する企業であり通信機器メーカーの華為技術(ファーウェイ)に対する事実上の禁輸措置を発表した。これで中国の習近平国家主席は窮地に立たされた。貿易摩擦が国家の威信を懸けた問題に転じたのだ。早期の解決策に至る可能性のみならず、中国国民が米国への譲歩を受け入れるチャンスもまた限定的となった。

  他の対外戦略と比べ、トランプ大統領の中国への対応は実質が伴う。大統領選で強く批判してきた北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)をトランプ大統領は大成功と自賛するが、2つの協定には表面上の違いしかない。米議会での批准に弾みをつけるため、カナダとメキシコの鉄鋼・アルミニウムに課す追加関税の撤廃も受け入れた。同様にめぼしい成果がないにもかかわらず、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との会談はうまくいったと勝ち誇る。貿易慣行を巡って欧州と日本や、防衛支出については北大西洋条約機構(NATO)同盟国に対しても、強硬姿勢で臨むものの、それ以上にはほとんど発展しない。

  だが中国に関しては違う。米国のサプライチェーンに中国排除を促すとともに、貿易戦争の長期化に伴う影響から農家を守るため補助金プログラムを設けた。米中対立の行く先を暗示する内容だ。米中両国にまたがるサプライチェーンは継続的な混乱に見舞われることになり、世界の製造業は米国と中国どちらを中心に据える戦略を採用するのか決める必要が生じるだろう。

  デジタルの世界ではすでに現実だ。中国によるインターネット規制は世界を二分。グーグルやフェイスブックなどの米テクノロジー企業が中核を成す世界と、テンセント・ホールディングス(騰訊)が提供するメッセージアプリ「微信(ウィーチャット)」や検索エンジンの百度(バイドゥ) に依存する世界に分離した。レアアース(希土類)への米国のアクセスを遮断するとの中国の脅しは、商品市場をも分断する可能性を意味する。

  トレンドは明白だ。経済・地政学的な力を増しつつある中国の影響下にある国は、中国のサプライチェーンのほか、米国以外の多国籍企業との結びつき強化を求める圧力の高まりを感じるようになるだろう。一方で中国の台頭は、一部の国でポピュリズムをあおり、中国離れを促す政治的圧力も生じている。米国ではトランプ大統領が、対中貿易戦争は政治的に自分を有利にさせるとの認識を明確にしている。大統領はたぶん正しい。反中感情はトランプ大統領退任後も続くというのが恐らく実際のところだろう。

  こうした全ての要因を踏まえれば、米中貿易戦争は世界秩序の徹底的な崩壊の始まりのように見える。米中が敵対する2つの経済・地政学的連合を形成し、それ以外の国々はどちらかを選ぶよう強いられるのだ。欧州連合(EU)がどちらにも組みしない第3極となることは可能だろう。

  20世紀後半の大半に見られた米ソという2つの超大国が率いた世界は特例だし、ソ連崩壊後に始まった米国の圧倒的優位も決して長続きするものではなかった。ただ、最近まで、新たなタイプの2極体制が可能なようには思えた。米中間で一種の競争的パートナーシップが育まれ、その脇をEUが固めるというものだ。だがここ数週間の展開で、そうした世界は実現しない可能性が高まっているように感じられる。

  (カール・W・スミス氏は米ノースカロライナ大学行政大学院の元助教で、ブログ「Modeled Behavior=モデルド・ビヘイビアー」を始めました。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:The U.S.-China Trade War Will Remake the World: Karl W. Smith(抜粋)

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