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Photographer: STR/AFP

【コラム】中国よ、「わな」避けたいなら3つの癖やめよ

  • 第1の癖は、自己防衛策として家計が貯蓄を殖やすこと
  • 第2は財政・金融刺激策依存、第3は国有企業頼み
TOPSHOT - This aerial photo taken on May 14, 2019 shows containers stacked at a port in Qingdao in China's eastern Shandong province. (Photo by STR / AFP) / China OUT        (Photo credit should read STR/AFP/Getty Images)
Photographer: STR/AFP

米国と世界経済を短期的に損ねるリスクがあるにもかかわらず、中国勢に対する米市場参入障壁を高くすることで、中国側に重い長期コストを課そうとしているのがトランプ米大統領だ。大統領が本当に脅かしているのは、中国が高所得国となるチャンスかもしれない。

  中国指導部が長く認識しているのは、「中所得国のわな」を回避するためには経済発展モデルの転換が必須だということだ。実際に他の多くの途上国が高所得国への脱皮に失敗している。中国はここ20年、世界市場から極めて強い追い風を受けながら、国内の改革を図ってきた。だが外部環境は変わりつつある。中国からの輸入に対する関税を引き上げた米国は、中国テクノロジー企業の米市場へのアクセスをも制限。さらに中国本土からサプライチェーンをすでに移し始めた米企業もある。

  外からの順風が逆風に転じつつある中で、中国は繁栄を続けるためにはこれまでよりずっと多くを内需に頼る必要がある。金融システム内でリスクを積み上げることなく内需を拡大するには、過去数十年の大半で国内成長を支えてきた借金頼みの政府投資や非効率な国有企業に依存するのではなく、大規模な家計消費と民間投資を促さなければならない。だが、中国には経済・金融面での不安定さが高まると常に幅を利かせる3つの癖がある。この癖を克服できなければ、こうした取り組みは失敗するだろう。
 
  第1の癖は、自己防衛策として家計が貯蓄を殖やすことだ。特に景気見通しに確信が持てない場合、家計は医療・教育費や退職後の生活資金として極めて高水準の貯蓄に励む。過去数年は貯蓄率な慎重な引き下げに成功していた中国だが、ここ1年程度はそれも停滞気味だ。直近の統計は、改善が進むより先に問題が悪化する可能性を示唆している。(健康保険や教育・年金制度の改善を含め)潤沢な資金を備えた保険制度を家計に提供し、家計がもっと安心して消費できるよう、中国にはまだまだやるべきことがある。

  第2の癖は、経済がソフトパッチ(軟調局面)に入るといつも財政・金融刺激策に戻るというものだ。こうした刺激策はかつてほど効果がないことが示されており、成長安定に求められる債務も大きくなっていて、金融システム内でリスクを増大させるだけだ。中所得国のわなを避けるためには供給サイドを重視し、さらに生産性を高め、国内の経済基盤を多様化する必要があるというのが多くのエコノミストの見方だ。

  3番目の癖は、国内総生産(GDP)の押し上げで政府が国有企業に頼りがちなことだ。中国では国有企業の効率性と生産性が低く一段と悪化している一方で、債務負担に占める国有企業の責任と不適切な資源配分が増えつつあるとの分析もある。中国がなすべきことは、より効率の良い民間企業に雇用と経済成長の大きな部分を担わせるよう力を与えることだ。

  米国との交渉で、貿易摩擦を解消し、より持続可能な関係を築くためカナダとメキシコはトランプ政権に譲歩したが、中国はこれまでのところそうした例にならうことに抵抗している。もし中国が先に挙げた3つの癖をやめられなければ、未来の展望は言うまでもなく、何十年にも及ぶ素晴らしい経済的成果も深刻なリスクにさられることになる。そうなれば、経済と国家安全保障を巡る懸念に突き動かされ、米国の世界的優位性に挑む中国の力を弱めようと行動している米国の政治家をさらに鼓舞するだけだろう。

  (モハメド・エラリアン氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。パシフィック・インベストメント・マネジメント=PIMCO=の親会社アリアンツのチーフ経済アドバイザーで、PIMCOでは最高経営責任者と共同最高投資責任者を務めました。著書には「世界経済 危険な明日」などがあります。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:China Could Pay High Price for Trump’s Tariffs: Mohamed El-Erian(抜粋)

    This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.

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