1-3月期GDPは2期連続プラス-個人消費と設備投資は低迷
占部絵美
更新日時
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ヘッドライン強いが実体経済あまり強くない-みずほ総研の有田氏
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公共投資増加も期待され、内需の増加傾向は崩れてない-茂木再生相

Visitors look out from the observation deck of the Roppongi Hills Mori Tower, operated by Mori Building Co., in Tokyo, Japan, on Monday, March 18, 2019.
Photographer: Toru Hanai/Bloomberg2019年1-3月期の実質国内総生産(GDP、速報値)は、2四半期連続でプラス成長となった。伸び率は市場予想を上回った。2018年度の実質GDP成長率は前年度比0.6%増加した。内閣府が20日発表した。
1-3月期は中国経済などの鈍化から輸出が振るわなかったものの、輸入の大幅な落ち込みが全体としてプラスに作用したほか、公共投資の増加などが成長の押し上げに寄与した。内需を支える個人消費と設備投資が共に2四半期ぶりのマイナスとなったことで、実体経済は見かけほど良くなく、米中貿易摩擦長期化で先行き不安が残る可能性がある。
キーポイント |
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茂木敏充経済再生相の会見コメント:
- 公共投資の増加期待され、内需の増加傾向崩れていない。内需支えるファンダメンタルズしっかりしている
- 個人消費や設備投資は前期の反動によるところもある。中国経済減速で輸出の伸び鈍化、生産活動に弱さ続く
- 今年度予算を迅速かつ着実に執行、経済財政運営に万全期す
- 数字の良し悪しに一喜一憂するつもりない。消費税10月に引き上げる予定は変わらない

エコノミストの見方
第一生命経済研究所の新家義貴主席エコノミスト
- これは大きなサプライズ。設備投資と在庫がサプライズ要因となった。もちろん成長率全体としては輸入の落ち込みが大きなけん引力。これがなければ成長していなかった可能性が高い
- この結果をもって経済はしっかりしていると結論付けるのは避けたほうが良い。ただそうは言ってもこれだけ強い数字だと、思ったより景気は悪くないということになるのではないか
- まだ景気が踊り場から底を打ったとは見ていないし、中国経済の減速や米中貿易戦争など先行きの不確実性は高い。設備投資や在庫も2次速報で下方修正される可能性もある
- GDPは象徴的であるだけに今日の数字は増税派には追い風となる。今現在リーマンショック級の危機があると言うのはかなり難しい
みずほ総合研究所の有田賢太郎上席主席エコノミスト:
- 実体として力強さにかける結果。設備投資と個人消費がマイナスになっており、その結果として輸入が落ちた
- ヘッドラインは強いが実体経済はあまり強い状況ではない。市場のマイナス予想と違いが生じた理由の一つは、公共投資で見方が分かれていたこと
- 数字より景気実態は弱いと評価しているが、ヘッドラインが年率で2%に近い数字になってくると、景気後退と判断するには材料として欠ける。今回の数字自体はポジティブと判断される
- 月例経済報告については、景気後退という判断ではないとしても、一部で弱さが出ているというような何らかの注意文言が加わる可能性がある
- 10月の消費増税は基本的に実施する方向がメインシナリオ。海外の経済が必ずしもいい状況ではないので、消費増税をやめないにしても、景気対策として補正予算が組まれる可能性は十分ある
SMBC日興證券の丸山義正チーフマーケットエコノミスト:
- 市場予想に対する設備投資の上振れは素直にポジティブサプライズだが、民間最終需要はむしろ弱く、必ずしも手放しで喜べない
- 公共投資は強さを取り戻し、かつ先行きもポジティブ
- GDP統計が示した民間最終需要の弱さ、輸出減少を踏まえると、日本経済に関して過度にポジティブな展望を抱くべきではないが、同時に景気後退議論が行き過ぎだった点を確認できる。消費増税判断には玉虫色
- 財政拡張の恩恵などから、現時点で4-6月期と7-9月期はプラス成長の確保が見込まれ、18年10-12月以降に4四半期連続のプラス成長を展望できる
三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所の宮嵜浩シニアエコノミスト:
- 輸入が輸出の減少を上回る大きな落ち込みとなったことで、輸出と輸入の差である純輸出がプラス寄与となり、成長率を押し上げた
- 持ち家の帰属家賃を除く消費は前期比0.2%減少しており、消費は弱い
- 公共投資は補正予算の効果が出ており、経済全体を下支えした
- 民需の弱さが輸入の落ち込みとなって現れた格好で、プラス成長を手放しで評価はできない
背景
- 日本銀行は4月に公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、18年度の実質GDP成長率見通し(政策委員の中央値)を前回の0.9%増から0.6%増に引き下げた。先行き海外経済減速による輸出の弱めの動きや設備投資の増勢鈍化を予想
- 3月の景気動向指数では、一致指数の基調判断が景気後退の可能性が高いことを示す「悪化」に引き下げられた
- GDPの結果や景気動向指数の基調判断引き下げを受け、「緩やかに回復している」との見方を維持している政府の景気判断に変化が表れるのかが注目されている
- 5月の月例経済報告は24日に公表予定
(エコノミストコメントを追加して更新します.)
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