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海外ファンドが温泉に投資拡大、後継者問題好機に

  • ソフトバンク系のフォートレスは約90の施設運営、REITも好調
  • 温泉旅館・ホテルの5割で後継者決まらず、廃業リスクに直面

「ONSEN」ーー。外国人旅行者向けサイトでも人気を集める日本の代表的な観光資源に海外ファンドが投資を拡大している。インバウンド需要の強さを背景に温泉施設の新設や既存のホテル・旅館の買収が熱を帯び、関連する不動産投資信託(J-REIT)の資産も増勢だ。

Traditional Japanese Inns

日本の文化を感じやすい温泉(松泉閣花月)

Photographer: Shiho Fukada/Bloomberg

  2月に大阪市湾岸部の高層ビルに巨大な温泉型テーマパーク「空庭温泉」を開業したのはソフトバンクグループ傘下の米フォートレス・インベストメント・グループ。不動産部門の最高投資責任者(CIO)であるトーマス・プリー氏は米国と大阪を何度も往復し、開発の陣頭指揮を執った。

  自身も温泉と和食を愛するプリー氏は、「温泉は日本特有のもので、都会の温泉には大きな需要がある」とみている。個室露天風呂に置く信楽焼の湯船や栃木県から運んだ庭園のしだれ桜はこだわりのアイテムだ。外国人旅行者に加え、癒やしを求める働く女性客の獲得を狙い、利き酒のできる日本酒ショップや「ドラゴンボール」など1万5000冊のコミック本を置く休憩室も併設した。

Traditional Japanese Inns

温泉では食事も楽しみの一つ(松泉閣花月)

Photographer: Shiho Fukada/Bloomberg

  フォートレスは日本で約90の温泉施設やホテルを展開しており、今後4年間でホテルなどを含む日本の不動産に最大4000億円を投資する構え。系列REITのインヴィンシブル投資法人では2018年に12件のホテルを取得し、運用資産に占めるホテルの比率は昨年末時点で64.1%と1年前から3.2ポイント上昇した。

  競合のベインキャピタルも、15年に傘下に収めた大江戸温泉物語など30以上の施設を展開。3月に熊本県の「亀屋ホテル華椿」を取得し、4月には三重県で温泉リゾートを開業した。事業拡大へ全国で物件を募集している。温泉・温浴施設に特化した大江戸温泉リート投資法人の資産規模は367億円と1年間で約4割増えた。

  米ファンドの温泉投資熱は金融市場でも注目を浴び、インヴィンシブルの投資口価格は今年に入り20%以上上昇。大江戸温泉リートも10%近く上げ、東証REIT指数の上昇率6.6%を上回って推移している。

香港ファンド傘下で新おかみ奮闘

  香港の投資ファンドであるオデッセイ・キャピタル・グループは昨年、新潟県越後湯沢の老舗旅館「松泉閣花月」を承継した。昭和30年創業の花月は設備投資負担で資金繰りが難航、借り入れ先の地方銀行主導で進めた事業計画もうまくいかず、新たなスポンサー探しに至った。

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越後湯沢にある「松泉閣花月」おかみの富井智子さん

Photographer: Shiho Fukada/Bloomberg

  祖父の代から続く老舗を継いだおかみの富井智子氏(40)は「経営に危機感はなく、時の流れに身を任せていた。接客が私たちにとって最優先だったから」と振り返る。オデッセイが招いた新支配人の下、ホームページの刷新や外部セールスを積極化させ、売り上げは15%増えた。新しいオーナーは「従業員を追い出すこともなく、雇用を継続し、足りないところを補うやり方はありがたい」と富井氏は言う。

  オデッセイで日本の不動産投資を統括するマネジングディレクター、クリストファー・アイエロ氏は「不景気と間違った経営のため、多くの旅館が過小に評価されたまま放置されているが、海や山などロケーションは抜群だ」と指摘。「日本のホスピタリティーセクターには驚異的な投資機会がある」とし、今後3年で5億ドルを投じ、日本の老舗旅館を20軒ほど取得する計画だ。

  環境省によると、全国に温泉地は約3000カ所、宿泊施設数は1万3000カ所ある。日本政策投資銀行などの調査では、昨年初めて3000万人を超えた外国人旅行者の訪日目的で温泉とショッピングは、特にアジア勢の間で人気が高かった。

Inside Fortress Investment's Onsen Theme Park

風呂上がりは好みの浴衣でリラックス(空庭温泉)

Photographer: Buddhika Weerasinghe/Bloomberg

  不動産助言会社のアイビー総研の関大介社長は、「公衆で裸にならない外国人にとって、温泉はユニークで日本の文化を感じやすい世界。ストライクゾーンだ」と話す。今後は後継者不足問題から売却物件が大量に出てくることもあり、海外ファンドはそのうまみを理解しているとみる。

  中小基盤整備機構が17年に全国1600の施設を対象に行った調査によれば、温泉・観光地のホテル、旅館の5割で後継者が決まっていない。

  ビズリーチの南壮一郎社長は後継者不在の旅館承継のため、3月に新たなプラットフォームを立ち上げた。「旅館は地域経済で目立つ存在。売却することにはいまだに抵抗があるようだ」しつつ、家業から企業への転換で存続の可能性があることが浸透し始め、かたくなな姿勢は「少しずつ雪解けしている」との見方を示した。

温泉・ホテル系REITの年初来推移
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