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【コラム】中国にはスパイさせよ、過剰反応は禁物-フィックリング

  • OSINT(オープンソースインテリジェンス)が情報の中心
  • スパイ合戦は国家安全保障への純粋な脅威では必ずしもない

米中のライバル関係がヒートアップする中で、米政府は日常活動の陰に隠れたスパイ行為を特に懸念しているようだ。米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は4月、ビザ(査証)の取り消しか見直し対象となった中国の学者や政策専門家は過去1年間に30人に上ると報じた

  中国人実業家・学術関係者に対する比較的オープンなアプローチは今や、終わりつつあるのかもしれない。だが米政府が本当にそうすれば間違いだ。その理由は中国が対米スパイ活動をしていないからではなく、まさにそれをしているからだ。

  学業の名の下でのスパイ活動はあり得ないと考えるようなら甘い。(主に中国人学生を狙った)工作活動に中国人留学生協会が使われていることは周知されている。実際に共産党指導者への協力を求められば、中国本土の学者や企業幹部は誰一人として拒むことはできないだろう。

  大事なのは、世界中のほぼ全ての国が秘密情報員を用いていると念頭に置くことだ。ただそうした要員の多くがかき集めることのできる情報に大した価値はない。

  振り返れば1947年には、後に米中央情報局(CIA)を率いたアレン・ダレス氏が議会に対し同局情報の8割余りは今で言う「OSINT」、つまり新聞や業界誌、学術研究、書籍、政府文書、企業の投資資料など出版物からのオープンソースインテリジェンスだと語っていた。現代の大規模な人的移動や写真の拡散、ソーシャルメディアなどは公開情報の飛躍的増大を意味する。北京の情報当局は海外の工作員を介してより、ウェブ検索でこうした多くの資料に容易にアクセスできるのだ。

  本物のスパイが集めるような「HUMINT」、つまりヒューマンインテリジェンスは、欠けたパズルのピースと考えた方がいい。全体像を見るためには有益だが、一つ一つでは役立たない。もちろん、最もリッチな情報は「SIGINT」(電波シグナル傍受などで得るインテリジェンス)とサイバー攻撃から得られる。米人事管理局データベースへの2015年のハッキングは中国が絡んでいると伝えられた。この時は約2200万人分の社会保障番号や個人データが流出した。

  認識すべきより重要なことがある。スパイ合戦は国家安全保障への純粋な脅威では必ずしもないということだ。多くの場合、むしろ安全保障を強化し得る。

  ナチス・ドイツのソ連侵攻は、主にインテリジェンスの収集・活用が失敗した結果だ。スターリンは数々の警告をヒトラーからの個人的な保証を基に軽視した可能性がある。一方、ナチスはソ連の徹底抗戦に向けた決意と軍事産業を打撃から立て直す能力を極端に過小評価した。1960年に米偵察機がソ連上空で撃墜された後、当時のアイゼンハワー米大統領が論じたように、冷戦が本格的な衝突に転じるのを阻止した一因はスパイが集めた情報だった

  戦略的な競争相手だというだけで、秘密の情報をもっと収集しようと図る中国に米政府は過剰反応すべきではない。対策を強化すべき理由は確かにあるが、オープンな社会であれば、微細な穴から情報が漏れるという現実にかなり鷹揚(おうよう)に構える必要があるという事実は変わらない。

  (デービッド・フィックリング氏は商品および工業・消費者向け製品企業を担当するブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。ブルームバーグ・ニュースやダウ・ジョーンズ、ウォールストリート・ジャーナル、フィナンシャル・タイムズ、ガーディアンでの記者経験があります。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:China’s Spying on the U.S. That’s a Good Thing: David Fickling(抜粋)

    This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.

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