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再生医療のシリコンバレー、日本で世界リーダーに-サンバイオ社長

更新日時
  • 外傷性脳損傷対象SB623は先駆け審査の対象に、今期中の申請目指す
  • SB623は世界4地域で実用化へ-日本では自社販売、他地域では提携

約100年来、不可能とされてきた脳の再生に取り組むサンバイオは、個人投資家を中心に注目を集め、同社の再生細胞薬の臨床試験結果は度々株式市場に影響を及ぼしている。

  森敬太社長(51)はブルームバーグとのインタビューで、来年に製薬企業への脱皮、2025年には再生医療のグローバルリーダーに成長することを目指し、株価が開発への期待のみによって左右されない事業基盤を構築したいとの考えを示した。

  「バイオの分野で日本の技術によって世界に新しいカテゴリーを作りたい」と01年に米シリコンバレーで創業。14年に日本で再生医療関連法が施行され世界最速の承認制度が導入されるのに合わせ13年に拠点を日本に移した。「再生医療では今は日本が世界の中心。『再生医療のシリコンバレー』になりつつある」。

SanBio Co. CEO Keita Mori Interview

森敬太社長

Photographer: Kentaro Takahashi/Bloomberg

  同社が18年間にわたって開発している再生細胞薬「SB623」は、健常者の骨髄液から採取した間葉系幹細胞を大量培養して患者の脳に注射し、患者自身の細胞を刺激することで神経回路の再生を促す。健常者の細胞を培養し患者に投与する「他家移植」であるため量産化が可能だ。

  現時点で主な対象となるのは慢性期外傷性脳損傷(TBI)と慢性期脳梗塞で、自動車やスポーツなどでの事故によるTBIの患者数は米国で約530万人、日本で約4万人、脳の血管が詰まって運動や言語の障害につながる慢性期脳梗塞の患者数は米国で約574万人、日本で約78万人に上るという。

目標は「ブロックバスター」

  「対象となる患者数と患者に与えるベネフィットを考えれば、SB623だけでグローバルリーダーに十二分になれると思っている。戦略としてはこの薬の価値の最大化だ」。SB623は、日本、米国、欧州、アジアでの実用化を目指しているが、日本では自社販売、それ以外の地域では提携と自社販売の両軸で進める方針だ。ピーク時年間売上高1000億円超の「ブロックバスター」にする目標に手応えを感じている。

  同社はSB623の他に4個のパイプライン(新薬候補)を持つ。「いったんSB623が実用化され売り上げと利益が出たら、他のパイプラインも開発を加速していく」と説明。自社の事業開発能力をフルに生かし、社外からの製品開発権導入や合併・買収(M&A)によってさらにパイプラインを増やし、現在、日米で約50人の社員数は25年には最低でも数百人規模になっているとの見通しを示した。

  SB623は、TBI対象で8日、厚生労働省から革新的医薬品を優先審査する先駆け審査指定制度の対象品目に指定されたほか、米国時間16日に米国脳神経外科学会で日米臨床試験(フェーズ2)の詳細結果が発表された。日本では今期(20年1月期)中に再生医療等製品としての製造販売の承認申請、来期中の承認取得を目指す。 

「サンバイオ・ショック」

  TBI対象の日米臨床試験(フェーズ2)で主要評価項目達成と発表した昨年11月以降、株価は一時3.2倍まで上昇。バイオ関連株をけん引する役割を担った。半面、TBI対象よりハードルが低いとみられていた脳梗塞対象の米国での臨床試験(フェーズ2b)で、有効性について主要評価項目を達成できなかったとの解析結果速報をきっかけに、今年1月30日には前日比26%急落

  余波はバイオ関連株や新興株市場全体に及び、「サンバイオ・ショック」とも呼ばれた。バイオ相場全体への影響力の大きさは、同社に対する株式市場の注目度の高さを示す。

徐々に下値切り上げ4月25日には一時前日比14%上昇

  「サンバイオが開発しているものは全て駄目なんじゃないかと思ってしまった株主がいたのではないかと推測している。現時点ではかなり理解が深まっている」とし、事実関係がいろいろな濃淡で理解されていると思うと話した。1月に予想外に未達成の結果を見た時には「びっくりし、ショックだった」が、すぐに何とかしようと気持ちが切り替わり、3月25日には開発継続を表明した。

  TBI対象は順調で、最速で患者に届けることを目指し、脳梗塞対象についても今期中に詳細解析を経て臨床試験の方法等の検討を開始できるとみており、大日本住友製薬ともこれまで通り共同で開発を進めていきたいと述べた。さらに脳出血対象についても臨床試験の準備段階に入っている。

  野村証券の繁村京一郎アナリストは22日のリポートで、「SB623が細胞製品として成り立つデータが示されたことで、会社が開発継続を表明している慢性期脳梗塞プログラムの再設計へ向けた取り組みが前進する可能性」に引き続き注目するとしている。  

  2月に2500円割れまで落ち込んだ株価は今月に入って下値を徐々に切り上げつつある。25日にはSB623が欧州医薬品庁から先端医療医薬品の指定を受けたとの発表をきっかけに一時前日比14%上昇、6%高の4420円で引けた。

  ●森敬太(もり・けいた)1967年6月23日生まれ。北海道出身。東京大学農学部農芸化学科卒、同大学院修了。米カリフォルニア大学バークレー校経営学修士。キリンビール、米インフォマティクス関連企業を経てサンバイオを設立。趣味はフィギュアスケート。

(アナリストの見方を追加し更新します.)
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