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「築地ブランド」地盤沈下、市場移転で客離れ-カジノ候補との見方も

  • 再開発に「最高のロケーション」、IRは総合的に検討-小池都知事
  • 五輪後の景気刺激策になるが誘致は世論次第-東洋大・佐々木氏

東京・築地の「場外市場」で魚卵などを販売しているマルタ食品は、中央卸売市場が豊洲に移転してから半年で客足が大幅に減った。飲食店エリアでは外国人観光客らが食べ歩きを楽しむが、「我々のような物品店では全然買わない」。店の現場を切り盛りする菅原孝司さんは、このままでは「築地ブランド」が急速に失われていくと危機感を募らせる。 

  昭和から平成にかけて「日本の台所」と呼ばれた築地の地盤沈下が予想以上に急速に進んでいる。昨年の卸売市場移転後も残っていた小規模店舗の幾つかは閉店に追い込まれた。東京都は国際会議や展示会などを開催可能なMICE(マイス)施設や高級ホテルを整備する方針だが、国会での法整備を受け、カジノを含めた統合型リゾート施設(IR)の誘致に乗り出す布石ではとの見方も出ている。

Tsukiji Outer Market

築地「場外市場」の店舗前を掃除する女性

Photographer: Keith Bedford/Bloomberg

  市場の跡地は東京ドーム約五つ分に当たる23ヘクタール。江戸時代に作られた浜離宮恩賜庭園にも隣接し、自然環境にも恵まれており、東京都の小池百合子知事は「都内に残された最高のロケーション」と称している。

  知事は卸売市場の豊洲移転を決断した2017年6月の時点では築地市場跡地を「食のテーマパーク機能を有する新たな市場」として整備する構想を示したが、今年に入るとMICE施設を柱にした再開発方針を公表した。2月の都議会では野党側が当初方針との整合性を追及したが、知事は再開発の方向性は変わっていないとかわした。この間、国政の場では18年にIR整備法が成立している。

  日本維新の会の柳ヶ瀬裕文都議は再開発方針の素案が明らかになった1月、自身のブログで「築地カジノ構想だ」との認識を示した。都が1月から2月にかけて行ったパブリックコメントでも、「IR構想そのもの」「カジノは不要」と意見が寄せられ、都は築地の街づくりで「カジノは想定していない」と回答した。

  水産加工品を扱う築地丸福水産の中沖昌宏社長は、とにかく「人の出入りがある街になってほしい」と早期の再開発を求める。東京都が再開発方針に盛り込んだ「食文化」を発信する施設が整備され、そこで営業を続けることが理想だと話す。

  実家が水産仲卸を営む地元中央区の渡部恵子区議(立憲民主党)も、場外市場への客足減少は「想定外」としており、このままの状況が続くと「街がもたなくなる」と危機感を示している。同氏は跡地の再整備が急務としてMICEには賛成だが、近くに学校、病院があるため、カジノを含めたIRについては適さないと反対している。

IR、当面は国内3カ所

  IR運営会社は、都内随一の繁華街・銀座に近い築地再開発の動向に強い関心を示している。日本MGMリゾーツのエド・バワーズ最高経営責任者(CEO)は、市場跡地について「非常に魅力的で、大きな可能性がある」と指摘、立地も良くIR開業には十分なスペースであると評価。2014年には米国本社の幹部が現地視察、候補地として調査した。ラスベガス・サンズで国際部門を率いるジョージ・タナシェビッチ氏も、築地は調査地の一つであり、開業すれば「成功するだろう」と話した。

  昨年成立したIR整備法では、当面は日本国内3カ所にIRを設置する見通し。現在誘致申請を予定しているのは大阪府・市、和歌山県、長崎県で、東京都は昨年実施された内閣府の調査に「申請を検討中」であると回答。そのほか北海道、千葉市、横浜市も申請を検討としている。具体的な申請・認定の時期は未定だが、大阪府・市は24年の開業を想定し準備を進めている。

Tsukiji Market under demolition work in Tokyo

解体の進む築地市場跡地 (写真中央・4月6日撮影)

The Yomiuri Shimbun via AP Images

  MGMとサンズは現時点で誘致を明確に示している大阪での開業に最も関心を示しているが、東京が仮に手を上げれば新たな選択肢となる。メルコリゾーツ&エンターテインメントも交通インフラが整った関東、関西両方の都市に関心があるとしている。

  小池知事は東京へのIR誘致について先月のインタビューで、「ポジティブな部分とネガティブな部分、それを総合的に考えたいと思っている」と述べ、現時点で明確な態度は示していない。都の方針では築地跡地は20年の東京五輪・パラリンピックでは車両基地として使用、22年以降段階的に整備し、全体の完成は40年代になる。

台場・青梅地区  

  元ゴールドマン・サックス証券アナリストで現在はIR専門サイトを運営する小池隆由氏は、「築地にカジノを含む施設ができれば、とんでもなく経済性が出るだろう」としながらも、東京都内で候補地となるのは、日本企業が長年IR開業を検討している台場・青海地区との見方を示す。大阪府・市がまとめた基本構想では、大阪でのIR開業による事業者の投資規模は9300億円。同氏は「東京であれば1兆円は超えるだろう」とみる。

  東洋大国際観光学部の佐々木一彰教授は、東京都にとってIRは五輪後の景気刺激策にもなり得ると将来性に着目する。来年夏に都知事選を控えており、誘致表明は「世論の風向き次第」と予想している。

 

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