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【コラム】大型投資の醍醐味、味わいたいなら中国より日本-ゴパラン

  • 日中の環境に違い-日本政府のM&A後押しも重要な要因
  • 比較的新しい企業が中心の中国にはない問題も日本にはある

中国が日本を抜き世界2位の経済大国となって久しいが、日本はまだ少なくとも1つの領域で中国に勝る。プライベートエクイティー(PE、未公開株)投資だ。米KKRの創業者は最近、米国外での「最優先」は日本だと宣言した。PE投資各社は業界再編の機を捉えて稼ぐなら、中国より日本の方がずっと魅力的だとみている。金融環境と同様、政策もその理由だ。

  中国市場の圧倒的大きさからすれば、驚きかもしれない(ここ5年平均で大中華圏のPE投資は本土の人民元ファンドも含め年720億ドル=約8兆円=だが、日本はわずか90億ドル)。中国本土には成長企業があふれ、香港や米市場での中国企業による新規株式公開(IPO)で利益を狙うこともできる。

  世界中のPE投資会社が巨額の資金を集め、中国の消費ブームやテクノロジーを巡る熱狂を当て込み対中投資を行う。実際、KKRは中糧肉食(コフコ・ミート・ホールディングス)や深圳市随手科技に出資している。

Barbarians at the Gate

  だが中国の魅力を損ねる幾つもの要因もある。投資対象となり得る大半の企業は日米ほど成熟していない。依然として企業帝国を築きたいという意欲が強く、投資家が購入できるのは少数株のみだ。平均的な購入可能額は数億ドル台で、米ベインキャピタルを軸とする約180億ドル規模の東芝メモリ買収と比べるとあまりにも小ぶりな投資にしかならない。

  日本でリッチな選択肢を提供しているのは、苦境に陥っているコングロマリットだ。こうした企業グループは非中核資産の宝庫で、JPX日経インデックス400を構成する4分の1ほどの企業が1社当たり100以上の子会社を抱える。

  世界的な業界リーダーを生む真のチャンスがこうした日本企業の資産の中にあり、それ故、本土に焦点を絞った中国のPE投資家には味わえない醍醐味(だいごみ)もある。2010年から日本に拠点を置き、以来これまで6つの案件に投資しているKKRは、こうした戦略に基づきパナソニックのヘルスケア事業を13年に買収。その後、「PHC」と社名変更することになるパナソニックヘルスケアは、ドイツのバイエルから糖尿病ケア事業を買い、今は米サーモフィッシャーサイエンティフィックから解剖病理事業買収の真っただ中だ。

  KKRは16年に日産自動車から部品子会社カルソニックカンセイも買収した。そしてカルソニックカンセイは18年、フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)の自動車部品部門マニエッティ・マレリを買った

  日本では何年か前まで強欲な乗っ取りを企てる外国勢と見なされていたPE投資会社だが、政府が企業の合併・買収(M&A)を積極的に後押ししていることも重要だ。東芝が高収益の半導体メモリー部門を、日産がカルソニックカンセイをそれぞれ手放した際、国内で反発はほとんどなかった。コーポレートガバナンス(企業統治)と株主リターンの重視を安倍晋三首相が促していることが、少なくともその一因となっている。

  これは、広がり過ぎたコングロマリットをスリム化し、業績の劣る企業の経営陣を代えることを意味する。海外のPE投資会社はその両方を支援でき、そして本質的には成熟企業であるこうした日本勢による世界的な事業拡大の手助けもし得る。

  日本にはまた、比較的新しい企業が中心の中国にはない別の問題もある。あまたの家族経営企業は創業者の引退が迫る中で、後継者問題で危機を抱える。PE投資会社はこうした問題にも対処可能だ。

Turnaround Kings

  KKRの元中国責任者らは最近、中国本土重視のPEファンド向けに20億ドルを集めており、誰も中国についてあきらめてはいない。ただ世界中で巨額の資金が調達されているものの、投資する対象が不足しているため実際の投資は進んでいない。日本がそうしたマネーの居心地の良い落ち着き先になる可能性はある。

  (ニシャ・ゴパラン氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、M&Aや銀行業を担当しています。以前はウォールストリート・ジャーナルとダウ・ジョーンズでエディターや記者として働いていました。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:KKR Has Good Reasons to Prefer Japan Over China: Nisha Gopalan(抜粋)

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