コンテンツにスキップする
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

地銀はいずれ政府による資金注入迫られる可能性も-山本元日銀理事

  • 地銀のリスクテイクは金融政策と無関係に起こっているわけではない
  • 日銀の超低金利政策で低収益にあえぐ地銀を責めることができるのか
A pedestrian walks past the Bank of Japan (BOJ) headquarters in Tokyo, Japan, on Wednesday, Oct. 31, 2018. The BOJ stayed the course on monetary stimulus while confirming in updated price forecasts that it won’t meet its inflation target for years to come.
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

日本銀行元理事の山本謙三氏は、地方銀行の将来的なリスクについて「今のような超低金利政策が続けば、地銀の自己資本は着実に低下していくので、どこかで資本注入を迫られる可能性がある」との見方を示した。

  17日のインタビューで、日銀が同日公表した金融システムリポートについて「金融システムは危機的状況には至ってないが、地銀の収益悪化が確実に進んでおり楽観できないという内容だ」と指摘した。山本氏は同リポートを策定する金融機構局局長、同担当理事を歴任した。

  同リポートでは、企業の資金需要が現在と同じペースで減った場合、約6割の地銀が2028年度に最終赤字になると試算。24-26年度にかけてリーマンショックに匹敵する金融危機が生じた際の影響を検証したストレステストでは、地銀の自己資本比率は6.5%に低下した。

  山本氏は「国内基準行の規制水準である4%は上回っているが、昨年4月の金融システムリポートは8%が『安定性の目安』と明示した。ストレスをかけた結果、徐々に注意ゾーンに入ってくるという試算だ」と説明した。

  14の金融活動指標の基調からの乖離(かいり)を色で識別したヒートマップでは、不動産業向け貸し出しの対国内総生産(GDP)比が1990年末以来、初めて過熱を示す「赤」が点灯。不動産業向け貸出比率を高める金融機関ほど「自己資本比率が低い傾向」があると同リポートは指摘した。

リスクテイクの背景

  山本氏は、地銀によるリスクテイクの背景には収益悪化があるとした上で、「その要因は二つある。一つは地方での資金需要の減退で、もう一つは金融政策だ。金融政策と無関係に起こっているわけではない」と語った。日銀は異次元緩和の下で、大規模な国債購入を行うことで地銀の伝統的な運用手段を奪うとともに、10年物金利を0%に誘導している。

  山本氏は「一国の中で市場経済が占めるウエートが縮小し、民間銀行にとって活動余地が狭められている」と指摘。一例として独立行政法人「福祉医療機構」の融資を挙げる。調達金利は国債金利に連動しているため、介護施設や病院向け設備資金の金利は10年で0.2%から0.3%。「競合先がそんな金利を出してくるので、金利はどんどん下がる。その中で低収益にあえぐ地銀を責めることができるのか」と語る。

  長短金利操作をやめ、国債買い入れをゼロにすれば、「長期金利は成長率に応じた金利水準に近づいていくだろう」と指摘。国という最大の資金不足部門を市場経済に引き戻すことができれば、「民間銀行も市場メカニズムの中で活動できるようになる。国債の利息は低いので過去のような収益率は得られないが、一定の収益の下支えにはなるはずだ」としている。

  山本氏は1954年生まれ。76年に東大教養学部を卒業して日銀に入行、金融市場局長、決済機構局長なども務めた。2012年から18年までNTTデータ経営研究所会長、現在は自ら立ち上げたオフィス金融経済イニシアティブ代表。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE