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【コラム】中国が北極にも触手を伸ばしている

  • 北極海に面した領土のない中国が野心的な計画を推進
  • 北極圏の戦略的重要性、海底資源と北極海航路が高める
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Photographer: GOH CHAI HIN/AFP/GETTY IMAGES
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海を舞台にした覇権争いは南シナ海海底だけではない。北極海でもまた米中がしのぎを削る。北極海に面した国土のない中国だが、「ハイノース」とカナダが呼ぶ地域での影響力増強を図る野心的な計画を推し進めている。

  私が北大西洋条約機構(NATO)司令官だった当時、カナダ軍を率いていた友人のウォルト・ナティンチャイク大将にロシアのカナダ北極圏侵略を心配していないかと尋ねたことがある。大将は含み笑いをし「ジム、もし彼らが侵略を図ったら、私の任務は恐らく捜索・救助になるだろう」と返してくれた。要するに、極寒の地での作戦遂行は極めて困難だということだ。だが最近までそうした厳しい環境での経験がなかった中国が急速にノウハウを蓄え、積極的に触手を伸ばしている。

  中国に北極評議会(AC)へのオブザーバー参加が認められたのは2013年。ACはカナダとデンマーク(グリーンランドを持つ)、アイスランド、ノルウェー、ロシア、米国、スウェーデン、フィンランドで構成する影響力のある国際組織だ。NATO在籍時、私は幾つかのAC会合に参加したが、中国には発言力があった。会合に出席していた中国代表団のレベルの高さには驚いた。

  そして中国は今、原子力砕氷船を建造している。米国が深く考えもしなかったことだ。ロシアの砕氷船団は何隻かの大型原子力船を含め世界一だが、ロシアを除けば中国の3万トンを超える原子力砕氷船はどの国の砕氷船よりも能力がある。これが通常型の砕氷船6隻に加わるのだ。米国はと言えば、沿岸警備隊で実働している砕氷船は3隻のみ。そのうち2隻はかなり小さい。

  北極圏の戦略的重要性を高めているのが海底資源と北極海航路だ。氷の下の資源埋蔵量は天然ガス2兆立方フィート、原油1000億バレルに迫るとの推計もある。こうした資源の確保に必要となる掘削装置(リグ)の設置に道を開くのが砕氷船だ。そして氷が解け出している海で砕氷船の助けを借りて新たな航路の開拓が可能となれば、北極海は中国の広域経済圏構想「一帯一路」における地政学上の要所とも成り得る。

  ただ北極圏を巡り中国が抱く野心の中核を成すのは、軍事・政治・経済面でのロシアとの協力強化だ。この2つの超大国は海(欧州の海の中心であるバルト海)と陸(シベリア)で軍事演習を行っている。両国の結束は米国に対するけん制であり、北極圏に面したNATO加盟国へ大きな挑戦となる。

  北極圏での中国の台頭に米国はどう対応できるのだろうか。まずはNATO同盟国と協力し、ロシアと中国の活動に対する広域監視を改善させ、状況認識を深めることだ。次に国防総省は1年中使える砕氷船を少なくとも6隻建造すべきだ。そして米国はカナダと共にもっと定期的に北極圏で軍事演習をする必要があるだろう。

  米政府内の北極圏政策も一体化を進めるべきだ。国防総省が、沿岸警備隊を管轄する国土安全保障省と協力するのは当然だが、エネルギー省(天然資源開発)と環境保護局(環境調査)、そして国務省(同盟国やパートナー、友好国との協調)との連携も必要だ。

  世界的に安全保障を巡る緊張が高まる中で、極地つまり、北極と南極での現実の軍事対立などということは最後に心配すべきことだ。だが、中国とロシアが北極の氷の上で何をしようとしているかを、同盟国と協力し注視していくことこそ米国ができる平和維持の取り組みだ。

  (ジェームズ・スタブリディス氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。元米海軍大将でNATOで司令官を務めた経歴もあります。米タフツ大学フレッチャー法律外交大学院の名誉学部長であり、カーライル・グループのオペレーティング・エグゼクティブ・コンサルタントを務め、マクラーティー・アソシエーツの顧問委員会を率いています。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:China Is Joining the Rush for Arctic Riches: James Stavridis(抜粋)

    This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.

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