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ドラギ総裁が残す世界一難しい仕事、「普通」の後継者に険しい道

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  • ドラギ総裁は10月末に8年の任期を終えて退任
  • 「なんでもやる」発言でソブリン債危機からユーロ救う
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世界で一番難しい仕事は何かと言えば、欧州中央銀行(ECB)で総裁を務めることかもしれない。同中銀はユーロを採用する19カ国のための金融政策を決定しなければならない。 2014年からは域内銀行の監督責任も負っている。ユーロ圏の将来についての議論にも深く関わっている。発言は常に熱い視線にさらされる。

  10月末に8年の任期を終えて退任するドラギ総裁の場合、世間が注目するのは発言ばかりではなかった。政策決定後の記者会見で身に付けているネクタイの色まで、金融政策姿勢のヒントになると一部のウォッチャーは冗談交じりに話し注視してきた。

  クレディ・アグリコル・グループのアナリスト、ルイ・ハロー氏は実際、総裁が締めた18本のネクタイの色柄と政策に関係があるか分析した。結論として、関係はなかった。ブルーのネクタイの時に相場が動く傾向は若干見られたが、その方向は上下どちらもあったため、取引のヒントにならなかった。

ECB President Mario Draghi End of Era Rates Decision

ドラギ総裁のネクタイ

Photographer: Alex Kraus/Bloomberg

  イタリア人らしいファッションセンスはともかくとして、ドラギ総裁(71)は難しい仕事を楽々とこなしているように見えた。スタンドプレーと金融への深い洞察によって、総裁は市場を動かし歴史を変えてきた。有名な「なんでもやる」発言は、11-12年のソブリン債危機から共通通貨ユーロを救ったと評価されている。ドラギ総裁の下でECBはその役割を銀行監督へと拡大させ、欧州で最も強力な機関となった。

  しかし欧州首脳らは今、ドラギ総裁の後任を見つけなければならない。バイトマン・ドイツ連邦銀行総裁、ビルロワドガロー・フランス銀行総裁のほか、オランダ、フィンランドと各国から候補の名前が挙がる。欧州に人材が不足しているわけではないが、カリスマ性と能力の点でドラギ総裁には及ばないようにみえる。「普通」の総裁が、通貨同盟の結束を保てるかどうかが最大の問題だ。

  11年に就任したドラギ総裁はソブリン債危機さなかの翌年、救済プログラムに同意した国の国債を無制限に買い入れることを約束するアウトライト・マネタリー・トランザクション(OMT)を打ち出した。15年には米国に追随して量的緩和(QE)導入に踏み切った。これらが可能だったのは、ドラギ総裁の高いコミュニケーション能力と欧州首脳らの支持を取り付けたスキルに負うところが大きい。

  ドラギ総裁の後を引き継ぐのが容易でないことを疑う人は少ないだろう。同総裁の下でECBは1国の政治に動かされることなく行動し、「欧州プロジェクト」を推進してきた。このプロセスはまだ道半ばだ。ユーロ圏には単一の財務省もなければ税制と歳出の決定を巡る連携も不十分だ。

  ドラギ総裁は世界で一番難しい仕事を、異例の手腕を持って果たしてきた。同総裁が去った後、ユーロ圏の脆弱(ぜいじゃく)性が再び顕在化しないとは限らない。

原題:Mario Draghi Is Finally Giving Up the Hardest Job in the World(抜粋)

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