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ドローンの未来VR体験も、投信販売に腐心-貯蓄から移行進まず

  • 投資成功体験なく、低金利下でも貯蓄が安全策との意識ーAMOne
  • 個人向け投信の新規設定本数、リーマンショック以来の低水準

テレビに向けてリモコンを操作すると、注文した品物をドローンが届けてくれる。投資信託運用のアセットマネジメントOne(AMOne)は、そんな近未来を仮想現実(VR)で見られる装置約3000個を投信の販売員に配った。

  ネット販売やオンライン決済、物流などインターネットを介する商取引をテーマにした投資信託商品について販売員に現実味を持って体感してもらい、販売促進ツールとしても利用してもらうためだ。

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「販売員はVR装置で電子商ビジネスの未来を体験」

Photographer: Takaaki Iwabu/Bloomberg

  工夫を凝らす背景には、投資信託になじみのない世代を中心に1人でも多くの顧客が興味を持ち、投資を経験してほしいとの危機感がある。日銀の資金循環統計によると、家計金融資産約1830兆円のうち約54%を現預金が占め、投資信託の保有はわずか3.7%。2001年に小泉純一郎内閣が「貯蓄から投資へ」を政府方針としてから、間もなく20年となるが投資への移行はほとんど進んでいない。

  AMOne営業企画部の泉谷正彰・資産形成ビジネス推進室長はその理由について、「投資は怖い、損をするとのイメージが強い」と指摘。1980年代後半からのいわゆるバブル期には普通預金の金利が2%を超えており、貯金をするのが最も安全との意識が強かった。「投資で成功体験を積む」機会がなかったことが超低金利下でも貯金を続けてしまう背景だと分析する。

  金融庁が今年1月に公表した調査によると、金融事業者96社合算ベースで5割弱の顧客の運用損益率がマイナスとなっている。銀行や証券会社が販売した投資信託の平均保有期間は短期化し保有顧客数が伸びていない。

  一方、保険金を一括で払い込むことで運用手段の一つとして利用される一時払い保険の販売は四半期ごとに大きく伸びており、顧客意思より収益目標を意識して特定の顧客に繰り返し乗り換えを進めている可能性があると金融庁は指摘している。

  AMOneは、VRなど販促ツールで投資家の裾野を広げると同時に、投資をした顧客にファンドの現状と見通しを小まめに伝える「フォロー資料」の配布に力を入れ、市場環境が悪いときこそ保有を続けて長期投資につなげてもらう試みをしている。

長寿社会の資産形成

  政府が投資による資産形成を促進する理由は、金利低下だけではない。医療の発達により60歳の人が95歳まで生きる割合は1995年に約14%だったのに対し、2015年には25%に増えた。貯蓄を取り崩した高齢者を公的年金のみで支えることは難しくなっている。

  このため、長期・積み立て・分散投資促進を目指し、14年に少額投資非課税制度(NISA)を導入。16年には未成年者向けの「ジュニアNISA」を、18年には特に少額からの積み立てを支援する「つみたてNISA」を加えた。

  しかし、17年の投資信託協会の調査によると、投資信託の保有者の68%が50代以上で、20代は4.6%にとどまっている。AMOneの花村泰広・投資信託情報サービス部担当部長は、「20-30代が数十年かけて資産を増やしていく必要がある」時期に若者の投資が進まないことを問題視。さまざまな販売促進策を打つことで、「あらゆるきっかけを使って投資家の裾野を広げる取り組みは必要」と語る。

  個人向けの投資信託の新規設定本数は18年度に前年度比で2割減少し、リーマンショック後の09年以来の低水準となった。

  調査を実施した日興リサーチセンターの藤原崇幸主任研究員は、近年、新規設定ファンドが「人工知能(AI)」や「ロボティクス」などテーマを絞ったものに集中する一方、資金は「運用実績のある既存ファンドに流入する」傾向が見られるとコメント。業界が長期運用を意識しているからこそ、実績ある過去の商品を評価する流れにあるとみている。

  信託協会の池谷幹男会長(三菱UFJ信託銀行社長)は3月の会見で、貯蓄から資産形成への流れを進めることは「わが国の大きな課題」との認識を示した上で、販売実績を上げるためのプッシュ型営業は改善されつつあり、投資信託は適切なニーズに応えるビジネスモデルに変わりつつあると述べた。

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