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アポロ13号帰還に倣え、日銀は追加緩和と共に正常化の道筋を-神津氏

  • 無理にUターン試みれば膨大なコストかかるか破綻するかのどちらか
  • ETFは決済機能付き個人向け投信に転換、地銀などが販売する手も

日本銀行OBの神津多可思リコー経済社会研究所長は、終わりの見えない異次元緩和を手じまうには、追加緩和の機会を逆に利用して正常化への道筋を示すべきだとの見方を示した。半世紀前に月に向かう途中で事故を起こした米宇宙船アポロ13号があえて遠回りして奇跡の地球帰還を果たしたことに触れ、「異次元緩和の手じまいもそれと似ている」と述べた。

  11日のインタビューで、「2%物価目標を降ろしますとは言わない方がいい。無理にUターンを試みればすごくコストがかかるか、破綻するかのどちらかだ」と指摘。むしろ追加緩和をやるようなタイミングで、「単にもっとやるというのではなく、どのような軌道で正常化に向かうのか、ちゃんと起承転結が付くような算段をした上でやるというストーリーが大事になっている」と語った。

Bank of Japan Watchers See Chance of More Stimulus Amid Shift at Fed And ECB

日銀本店

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  1970年4月、アポロ計画3度目の月面着陸を目指して打ち上げられたアポロ13号は、機械船の酸素タンクの爆発事故によりミッションを中止した。エンジン損傷の可能性から直ちに地球に引き返すことは断念。酸素、水、電力に限りがある危機的状況の下、月の裏側を回って地球に戻る軌道に乗せることで、3人の宇宙飛行士は無事生還を果たした。

  日銀は3月の金融政策決定会合で海外経済、輸出、生産の現状判断を引き下げた。25日の会合後に示す3年先の物価見通しでも2%達成は困難との声が強く、市場では次の一手は追加緩和との見方が増えている。神津氏は「次のはっきりした景気拡大局面でなければ、なかなか緩和度合いを低下させるのは難しいだろう」と語った。

  追加緩和に踏み切るなら「期限のない資産購入をどう手じまうかということとセットでないと、市場の安心感は十分醸成されないようになってきている」と指摘。ここから先は「出口のイメージを織り込みながら、今はもっと過激なことをするが、将来はうまく収めるという絵を伝えないと、資産購入を通じた効果は十全に発揮されない」と指摘した。

ETFも発想の転換を

  市場では、追加緩和の手段として指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れ拡大を挙げる向きが多い。神津氏は「さらに買い入れを増額することもあり得るだろうが、その時はやはり手じまいに向けての算段が重要になってくる」と述べた。

Ricoh Co. Takashi Kozu

神津・リコー経済社会研究所長

Source: Ricoh

  例えば、日銀が保有するETFを全部まとめた上で、家計の年金や資産形成に資するような小口の投信に組み替える。信託銀行や投信販売会社、証券会社、地域金融機関を対象に入札で売却し、米国のマネーマーケットファンド(MMF)のように決済機能を持たせるなどの工夫をした上で、個人向けに販売する。「そんなことも検討してみてはどうか」と提案した。

  日銀保有株式は今のままだと「肉の塊。うまく料理して普通の人が食べられるような金融商品にして、バランスシートから落としていく。そういう発想の転換が必要だ」と神津氏は指摘。地方の金融機関にとっても、イールドカーブが寝た状態はこれから悪くすれば10年続くかもしれないわけで、「それだったら手数料を稼げる金融商品があった方がいいのではないか」と語った。

  神津氏は1980年に東大経済学部卒業後、日銀に入行し、政策委員会室や金融機構局の審議役などを歴任。2010年にリコー経済社会研究所主席研究員に就任し、16年4月から所長を務める。

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