コンテンツにスキップする

【コラム】海の底でも米中の覇権争いが起きている

  • 海の底でも陸や海上と同じような対立の構図が展開されている
  • ファーウェイは世界中で100本近い海底ケーブルを手掛ける
relates to 【コラム】海の底でも米中の覇権争いが起きている

中国の野心的な海洋進出に警戒する欧米諸国が、海上交通の要所であり膨大な石油・ガス資源が眠る南シナ海を注視するのは当然だ。だが南シナ海は中国の海洋戦略が最も顕著に表れた一部にすぎない。

  はっきり確認するのは困難だが、インターネット経由の情報が事実上全て通る海底ケーブルの建設・修復における中国の影響力増大もまた重要だ。中国が仕掛ける「グレートゲーム」の全体像を理解するには、海の底を見る必要がある。

  インターネットの中核は人工衛星や携帯電話の基地局と見なされる傾向があるが、最も不可欠なのは大陸間を行き来する全てのデータ・音声の95%余りを運ぶ380本の海底ケーブルだ。そして、(少なくとも欧米側の観点から見て)敵のスパイ活動を許さないため、その大半は米国とその同盟国で敷設されてきた。グーグルやフェイスブック、アマゾン・ドット・コムなど米インターネット大手各社は海底ケーブルを建設した通信事業者から成るほぼ民間の共同体からケーブルの大半をリース契約したり買い入れたりしている。

  だが第5世代(5G)移動通信ネットワークの展開で世界をリードする中国のコングロマリット、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)はすでに海に進出している。同社は「ファーウェイ・マリン・ネットワークス」として世界中で100本近い海底ケーブルの敷設などを進める。昨年はブラジルからカメルーンに至る約4000マイル(約6440キロメートル)を完成させた。入札で競合する企業は、政府から補助金を受け取る中国勢は安い額を提示できると主張する。

  華為の5G技術にデータの抜け道、いわゆる「バックドア」が仕込まれているとの懸念がある中で、欧米の情報機関の専門家は海底ケーブルへの中国の関与に反対している。華為は中国の法律に従いネットワークのデータを政府に渡すよう義務付けられていると指摘する米国などに対し、華為は当然ながら建設中の海底ケーブル網における一切の不正操作を否定している。

  つまり、海の底でも陸や海上と同じような対立の構図が展開されているということだ。米国は海底ケーブルの安全保障問題にどう対応できるのだろうか。華為の海底ケーブル敷設を止める方策はなく、疑惑だけで民間セクターに中国企業との契約をやめさせることはできない。米国は自らが持つサイバー技術と情報収集能力を結集し、バックドアなど安全保障リスクの確たる証拠の収集に当たるべきだ。中国企業は高度な技術を持ち、事実上の警察国家と密接に絡み合っており、米国にとっては難しい取り組みとなる。

  米政府がそうしたリアルな証拠を同盟国と共有できれば、華為の海底ケーブル事業を、5Gを巡る懸念と同じような国際的な問題として訴えることも可能だ。すでに成果もある。オーストラリアは昨年、補助金を出すソロモン諸島につながる海底ケーブルに華為が関わることを禁止した。

  米国のジェイミー・フォゴ海軍大将は「極めて重要なインフラの一部である海底ケーブルは、世界経済にとって欠くべからざるものだ。われわれが確保している公海の国際的自由と同様、海底ケーブルの完全性と安全保障を米国は確実に守らなければならない」と私に語った。南シナ海の海上で目にする中国の脅威を考える必要があるのは当たり前だが、深い海底の暗みにもまた目を向けなければならない。

  (ジェームズ・スタブリディス氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。元米海軍大将で北大西洋条約機構=NATO=で司令官を務めた経歴もあります。米タフツ大学フレッチャー法律外交大学院の名誉学部長であり、カーライル・グループのオペレーティング・エグゼクティブ・コンサルタントを務め、マクラーティー・アソシエーツの顧問委員会を率いています。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:China’s Targeting Underwater Internet Cables: James Stavridis(抜粋)

    This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE