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土砂降りの平成幕開け、危機で財務膨張-チャートで振り返る(訂正)

訂正済み
  • 消費税は屋台骨に、日銀の異次元緩和は財政支える役割も
  • 経済大国2位の座から転落、生産性や少子化など浮き彫りに

平成元年(1989年)2月の国会開会日は、土砂降りだった。天皇陛下をお迎えするため国会議員が玄関先に居並ぶ中、警備の衛視は「いまだかつて国会開会式の行幸で雨が降ったことはない。すぐにやみますよ」と威勢が良かったが、その後も雨は降り続けた。当時、文部政務次官だった麻生太郎財務相は、中曽根康弘元首相が「平成はあまり良い御代(みよ)じゃないかも知らんなぁ」とつぶやくのを耳にしたという。

Bank of Japan Governor Haruhiko Kuroda Speaks At Parliament

国会議事堂

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  それから30年。麻生財務相は平成最後の今年の年頭訓示で、「現実問題として平成の御代は、われわれ財務省にとって厳しい30年だった」と振り返った。バブル崩壊、株価や地価の急落、金融機関が相次ぎ倒産する金融危機が起こり、金融機関の救済に追われた。2008年の米大手証券破綻に端を発した欧米発のリーマンショックが続き、政府はこれらに対応するため、財政出動を繰り返した。

歳出と税収の差は拡大

背景に金融危機や災害、新規国債発行で差額賄う

出所:財務省

  相次ぐ財政出動に加え、少子高齢化に伴う社会保障費の増大で、政府は広がる歳出と税収の差を埋めるため国債を増発。国と地方を合わせた長期債務残高は1000兆円を超え、平成元年の4倍超に膨れ上がった。財政再建に向けて同年に導入された消費税は、今年10月には10%に引き上げられる予定だ。国際競争力維持のために法人税率を引き下げる中、税収に占める消費税の割合は平成元年の6%から今年当初予算で31%まで上昇し、財政を支える屋台骨となった。

消費税、屋台骨へ成長

税収に占める消費税の割合は3割に

出所:財務省

  平成は消費税3%導入を決めた竹下登首相に始まり、安倍晋三首相まで計17人が政権を担った。1997年の橋本龍太郎政権時に消費税率を5%に引き上げ、2012年の野田佳彦政権時に民主、自民、公明の3党合意で10%への段階的引き上げを決め、14年に安倍首相が8%への増税を実施した。増税後の景気落ち込みを経験した安倍首相は、これまで10%への増税を2回延期。今回はリーマンショック級の経済危機が起こらない限り消費増税は実施するとの方針を示している。

マイナス金利下でも物価目標届かず

  歳出と税収の差が縮まらない中、財政を陰で支えたのは日本銀行だ。バブル崩壊以降の長引くデフレからの脱却に向け、日銀は1999年にゼロ金利政策、2001年に量的緩和を実施。13年には2%の物価安定目標を掲げ、量的・質的金融緩和を導入。その後も16年にマイナス金利政策、長短金利操作を導入するなどの追加緩和に踏み切っている。これにより、政府は13年度以降の5年間だけで、消費増税2%分に当たる5兆円超の国債発行コストを抑制できた。

中国が日本を2009年に抜く

上位主要国の実質GDP推移

出所:世界銀行(単位:兆ドル)

  平成の大半でデフレ経済を経験した日本は、世界2位の経済大国の座を中国に奪われた。背景には構造的人口問題があり、平成元年以降、米国は32%、中国は24%、英国は16%も人口が増えたのに対し、日本は3%増とほぼ横ばい。実際には2010年をピークに人口減少社会に突入しており、安倍政権が掲げる名目国内総生産(GDP)600兆円の実現には、労働力確保や生産性向上に加え、抜本的な少子化対策が課題となっている。

世界主要国の人口増加率

平成元年比で日本は3%、英国は16%、米国は32%

出所:世界銀行(直近のデータは2017年)

  労働力確保の観点では、平成元年以降、生産年齢人口が1000万人超減る中、主に女性と65歳以上の高齢者の働き手が増え、就業者数は500万人超増えている。さらに外国人労働者は08年以降の過去10年で約100万人増え、労働力をかさ上げした。一方、直近の1人当たりの名目GDPは27位と、平成元年の7位から大幅に下落。一人一人がそれぞれの花を大きく咲かせられるようにとの願いが込められた「令和」の時代は、「1人当たりの生産性向上」が重要な鍵を握る。

日本企業の利益配分

内部留保は17年度に過去最高の446兆円に

出所:財務省 法人企業統計(単位:兆円)

  生産性向上と深い関係にあるのは、企業の設備投資や賃金だ。企業部門は過去最高水準の利益を確保しながらも、設備投資の水準はバブル崩壊前のピークにはほど遠く、賃金はバブル崩壊後のレンジをようやく上に抜け始めた段階。過去30年を振り返ると、企業は生産性向上に一層の資金を傾けるようになったとは言えず、長引くデフレ不況の経験から内部留保をため込み、17年度には国家予算の4倍超となる446兆円に達した。

2014年を底に反転した日本の貯蓄率

専門家からは生活防衛との指摘も

出所:OECD Economic Outlook No.104

  長引くデフレ経済は家計にも大きく影響を及ぼし、いまだに消費マインドの改善には至っていない。総雇用者所得は増加傾向を続けているものの、高齢化とともに下がり続けてきた貯蓄率は14年以降に反転増となっており、専門家らは家計が生活防衛的になっているとの可能性も指摘する。大企業を中心とした収益改善効果は、投資や消費に広がる経済の好循環につながっておらず、物価目標2%を掲げる日銀を取り巻く環境も厳しさを増している。

1997年に所得と支出はピークアウト

足元では可処分所得が回復する中、消費支出伸びず

総務省・家計調査(2人以上の勤労世帯の月平均、単位:万円)

  平成の消費を振り返れば、勤労者世帯の消費支出は可処分所得と連動するように1997年にピークアウトしたものの、平成期間中の消費支出は0.4%減、可処分所得は8%増と差が出た。消費支出の内訳からは衣類や交際費などが大きく削減された一方、通信費が著しく伸びるという家計の消費行動の変化が見て取れる。インターネット普及率は01年の46.3%から17年の80.9%へと拡大し、GAFAと呼ばれる米グーグルなどの巨大IT企業が世界を席巻し、日本企業は時価総額上位から姿を消した。

消費支出、1989年と2018年の比較

衣類や交際費が減る一方、通信は増加

出所:家計調査(2人以上の勤労世帯の月平均、単位:万円)

  安倍首相は改元に関する会見で、少子高齢化が進み、世界が急速に変化する中、「平成の30年間ほど改革が叫ばれた時代はなかった」と振り返る。政治改革や行政改革の大なたが振るわれ、規制改革も進展。約70年ぶりの労働基準法改正となった働き方改革関連法の施行も、新年号が発表された4月1日から始まった。安倍首相は働き方改革によって「それぞれの夢や希望に向かって頑張っていける社会、一億総活躍社会を作り上げることができれば、日本の未来は明るい」と述べ、「令和」時代への期待を表明した。

(1パラ目の天皇陛下の表記を訂正します.)
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