コンテンツにスキップする

日銀プットと指針強化が唯一の手、マイナス金利は逆効果ー門間前理事

  • 株が落ちたらETFを思い切り買い、いわゆる日銀プットを強化する
  • 2%目標は触らぬ神にたたりなしで、そっとしておくのが日銀の戦略

日本銀行前理事の門間一夫氏は、指数連動型上場投資信託(ETF)の柔軟な買い入れとフォワードガイダンス(政策金利の指針)の強化が日銀に残された数少ない緩和手段で、マイナス金利深掘りは取り得ないと述べた。フォワードガイダンス強化は10月の消費増税前に実施される可能性もあるとの見方を示した。

  9日のインタビューで、日銀が取り得る緩和手段について、急激な円高進行などで「株が落ちたらETFを思い切り買う。日銀は昨年10月と12月、目標の年間購入額6兆円を上回る10兆円近いペースで買ったが、それをさらに上回るようなことを局面によってやる」と言明。「いわゆる日銀プットであり、これを強化する」と語った。

  プットオプションは金融資産を決められた価格で売る権利で、相場下落時の保険の役割を果たす。かつて米連邦準備制度理事会(FRB)が株安局面で実施した金融緩和が相場の下支え役となり、当時の議長名を付けてグリーンスパン・プット、バーナンキ・プットなどと呼ばれた。

  門間氏は「残されたもう一つの手段はフォワードガイダンスの強化だ。これは言葉の問題なので、いかようにも強めることができる」との見方を示した。

Bank of Japan Watchers See Chance of More Stimulus Amid Shift at Fed And ECB

日本銀行

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  日銀は「消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在の極めて低い長短金利の水準を維持する」としているが、門間氏は「10月が近づいてくると意味がなくなってくる」と指摘。物価上昇率が今後0%近くまで下がる可能性もあるため、例えば「デフレ再燃の懸念が存在する間は現状の金利を維持する」などに変えることは「増税前にもあり得る」と述べた。

  マイナス金利の深堀りは「もう使えない」と断言する。ただでさえ厳しい過当競争をあおれば銀行収益がさらに悪化することを市場も分かっているので「銀行株が下がるかもしれない。2016年1月のマイナス金利導入時と同じで、結果的に株が全般的に下がり、円高になる可能性もある」と指摘。日銀が踏み切るには「すごく勇気がいるので、そんなリスクを冒すことは割に合わないと思うだろう」と語った。

2%目標は触らぬ神にたたりなし

  日銀は25日に公表する経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、2021年度までの消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)の前年比見通し(政策委員の中央値)を示す。門間氏は「全般的に若干下方修正され、21年度は1.6%上昇くらいではないか」と指摘。黒田東彦総裁が2013年4月、2%物価目標の実現を掲げ異次元緩和を始めて以来、4月時点の3年先の見通しとしては最低水準を予想する。

  麻生太郎財務相は2%物価目標について、3月12日の国会答弁で「もう少し考えを柔軟にやってもおかしくないのではないか」と発言。15日の閣議後会見では「2%にこだわり過ぎると、そちらの方がおかしくなる」と述べた。

  門間氏は「2%目標が金科玉条のごとく重要課題ではないという認識が政府内にかなり浸透してきた」とみるが、目標を変える可能性は「非常に低い」と予想する。すでに十分柔軟化しており、「あとは形が残っているだけで、もう実はない」と言明。形を変えれば金融緩和の後退と受け止められる可能性があり、日銀としては「触らぬ神にたたりなしで、そのままそっとしておくのがリスクの少ない戦略だ」と主張した。

  門間氏は東大経済学部を卒業後、1981年に日銀に入行し、チーフエコノミストである調査統計局長や企画局長、企画担当理事を歴任した。2016年5月にみずほ総合研究所に入社、エグゼグティブエコノミストを務める。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE