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【コラム】進展した米中交渉、合意しても一時的な停戦か-エラリアン

  • 欧米の共闘は実現可能であり望ましくも見える
  • 広範な共闘は、欧米がそれぞれの貿易問題を解決してからの公算

米中通商交渉に大幅進展の兆しが先週見られ、両国が達した「新たなコンセンサス」を中国側は歓迎した。だが1つ疑問が残る。米国はなぜ、中国の一部貿易慣行に関して同じ懸念を抱く他の欧米諸国と共闘するよりも2国間の合意を望むのだろうか。

  中国の貿易慣行に対する米国の怒りは、大きな不均衡継続や強制的な技術移転、通商活動への補助金、知的財産権の不十分な保護などに向けられていると言われる。トランプ政権はこうした分野の全てにおいて中国に譲歩を強いることに焦点を絞り、貿易摩擦の影響は米国よりも中国の方がずっと大きいと確信、この戦略に絡む短期的な痛みは吸収するつもりでいる。

  「ゲーム理論」に基づけば、米国は「協力」から「非協力」にシフトしたゲームに勝つ最良の立ち位置にいる。中国にとって、米国の圧力に屈するのが最善の結果ではないとしても、あり得る別の選択肢、特に貿易戦争の長期化よりはましだろう。全てではないにしても、米国の憤りの大半は米国の同盟国も中国に対して感じるものだ。欧米の共闘は実現可能であり望ましくも見え、そうなれば対中交渉の立場が強化され、交渉力で「てこ」が働くことになる。

  欧州にとって米国との共闘には、中国からの譲歩を引き出す可能性を高める以上の魅力がある。域内の結束に絡んですでに幾つもの課題を抱える欧州連合(EU)が今対応しなければならないのは、中国の「分断統治」アプローチだ。主要欧米諸国が懸念する中で、イタリア政府は最近、ローマを訪れた中国の習近平国家主席と広域経済圏構想「一帯一路」の覚書を交わした。

  ゲーム理論を通して見れば、米国が採っている戦略の簡単な説明は可能かもしれない。まず内政という文脈においては理にかなう。欧州側と意見をすり合わせる必要がなければ、2020年の米大統領選を控え、中国との合意の内容とタイミングをトランプ大統領はコントロールしやすくなり、有権者にアピールできる。要求や課題を小出しにして相手を制する「サラミ戦術」とそれに関連した「繰り返しゲーム」の戦略も妥当だ。中国が将来的に別の国と合意した場合、同じ条件を米国に適用してもらう目的があるからだ。

  また中国側と2国間合意に達しても実践は困難かもしれないとの懸念を踏まえ、将来の交渉ラウンドにおける選択肢を残しておくのも米国にとって合理的だ。米国が求める程度に中国が対米黒字を減らすことは容易ではない。海外からの経済的逆風を克服し、国の発展過程で中所得国のわなを避けたい中国にとって、国有企業を通じた刺激策というこれまで積極的に活用してきたアプローチを手放すことも難しい。

  これら全てが、グローバル経済に広がる通商摩擦を米中合意が決定的に終わらせる可能性は低いことを示唆している。むしろ米中合意は一時的な停戦にすぎず、それも履行段階で課題に直面する公算が大きい。中国からのさらなる保証と譲歩を狙う広範な共闘が組まれるのは、欧州と米国がそれぞれの貿易問題を解決してからということになりそうだ。

  (モハメド・エラリアン氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。パシフィック・インベストメント・マネジメント=PIMCO=の親会社アリアンツのチーフ経済アドバイザーで、PIMCOでは最高経営責任者と共同最高投資責任者を務めました。著書には「世界経済 危険な明日」などがあります。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:China-U.S. Trade Deal Could Be Just a Truce: Mohamed A. El-Erian(抜粋)

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