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【コラム】EU離脱巡る議会投票、敗者はメイ首相でない-ラファエル

  • 首相案に断固反対してきた数人が姿勢を変えた
  • 離脱強硬派は守れない公約を掲げその公約は譲れない一線と主張した

27日夜の議会投票で、英国は欧州連合(EU)離脱に小さく近づいたのかもしれないし、そうでないかもしれない。それは誰にも分からない。ただ、英国のEU離脱強硬派が描いていた展開から大きく遠ざかったことは間違いない。

  実際、27日は英与党・保守党を支配していた離脱強硬派の魔法がようやく解けた日として記憶される可能性がある。メイ首相はEUからもはやこれ以上の譲歩を引き出せず、自らが結んだ離脱案は議会で2回否決された。そこで、この離脱案が議会で承認されれば辞任すると表明し、残り少なくなった手持ちカードの一枚を切った。

  この提案に、それまで首相案に断固反対してきた数人が姿勢を変えた。離脱強硬派のリーダー、ジェイコブ・リースモッグ議員と、離脱派議員の多くが次期首相にと待望するボリス・ジョンソン前外相らだ。2人は過去数カ月、メイ首相の案を単なる妥協ではなく全面降伏だと呼び、EUへの「隷属」だとすら表現した。

  27日までに2人は言い回しを変えたが、遅過ぎたかもしれない。同日夜の議会では、合意なき離脱の選択肢を再び大差で排除した。EUがすでに応じない姿勢を明確にしている離脱派が主張する選択肢もことごとく退けた。投票に付された8つの選択肢のうち過半数の支持を得たものはなかったが、EU関税同盟への残留と国民投票再実施の2つはメイ首相案が今月の採決で得た票よりも多くの支持票を集めた。

  27日の投票は予選のような位置付けだ。次回の議員投票では支持が少ない選択肢は排除され、議会として合意できる選択肢をひねり出すことを目指す。投票結果は政府に対して法的拘束力を持たないが、無視できるような政府もないだろう。こうなると、離脱強硬派は危機的な状況に陥る。英国を確実にEUから離脱させたい議員らにとってメイ首相の案を選ぶことが最善策となるが、それが議会で承認される見込みはまだかなり薄いからだ。

  メイ首相は自らの案を再び議会採決にかけようとしているが、いまや議会の中道勢力が首相案を支持する理由もない。支持することで、EUとの将来の関係を巡る第2段階の交渉で首相案をほごにしかねないような離脱強硬派の次期首相誕生に手を貸す恐れがあるとすれば、なおさらだ。それならむしろ、離脱の長期延期の方がましだと考えるだろう。

  離脱強硬派は守れない公約を掲げ、その公約は譲れない一線だと主張してきた。首相に容赦のない非難を浴びせ、交渉の立場を弱めた。強硬派は首相を辞めさせようとしてできなかったが、EUの姿勢を変えさせようとしてやはりできなかった。結局、首相案を支持することしかできず、自分たちに近く出番が回ってくることを願っている。保守党議員らは新党首選出に際し、これまでの目も当てられないような強硬派の振る舞いを忘れるべきではないだろう。

  (テレス・ラファエル氏はブルームバーグ・オピニオンで欧州の政治・経済に関する論説を担当しています。以前はウォールストリート・ジャーナル・ヨーロッパの社説エディターをしていました。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:The Biggest Brexit Loser This Time Wasn’t May: Therese Raphael(抜粋)

    This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.

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