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【コラム】中ロとの覇権争いで有利な米国、リスクは日本-ブランズ

  • 米国にとって第1のリスクは日独など同盟国の少子高齢化
  • 人口が減る競合国が捨て身で米国に挑んでくる恐れもある

21世紀の覇権を握るのは米国だろうか、それとも米国と競い合う強権国家だろうか。その答えを導き出す上で、政策に劣らず非常に大きな意味を持つのが人口動態だろう。

  中国やロシアと対峙(たいじ)する米国の座標を読む上で軍事費や国内総生産(GDP)に目が向きがちだが、富と力の創造に極めて重要なインパクトを与えるのが人口動態だ。もし人口動態こそが一国の命運を左右するとすれば、米国の地政学的未来はかなり有望ということになる。ただし、世界が将来的に抱える人口動態上のリスクをコントロールできればという前提が付く。

  人口減少や少数の若者が多数の退職者を支える不健全な人口動態の国は、経済的競争力の維持が一段と難しくなるだろう。人口問題が厳しくなれば、社会・政治的緊張が高まり、壊滅的な不安定も招き得る。そして偶然にも米国の競争相手は今後数十年、人口動態を巡る急激な圧力に見舞われる可能性が高い。

  中国の「一人っ子政策」は、世代を超えた人口減という結末になりそうだ。中国の総人口は(国連のデータに基づけば)2017年時点で14億1000万人だったが、50年には13億6000万人になり、2100年までには恐らく10億人に縮小する見込みだ。アメリカン・エンタープライズ研究所のニコラス・エバースタット氏がまとめた統計によれば、中国の退職者人口は15年の1億3500万人から40年までに3億4000万人近くに急増し、その間に労働年齢人口は約1億人減少することになる。

  ロシアの人口は現在1億4400万人ほどだが、50年までには1億1900万人程度に減る見通しだ。労働年齢人口も全人口の60%から50%未満にその割合が縮小するとみられる。

  中ロ両国と比べると、米国の先行きは相当よく見える。比較的健全な出生率と高水準の移民数のおかげで、米国の人口は17年の3億2400万人から50年には3億9000万人に増えそうだ。ベビーブーマー世代の退職で米社会の高齢化は大きく進むが、総人口の伸びがこの変化の影響を和らげ、米国が直面する圧力は競合国が受けるほど厳しいものとはならないはずだ。ランド研究所は最近の報告書で、「大惨事がなければ、米国は少なくとも2050年まで世界に不可欠の国であり続けるための人口動態・経済的資源を保持する公算が大きいようだ」と結論付けた。

  米国が中ロに対する強みを短・中期的に保ち続けることができれば、長期展望もかなり有望だろう。それでも米国が対応しなければならなくなる人口動態に絡んだリスクは3つある。

  第1のリスクは、米国にとって重要な同盟国である日本と、ドイツはじめとする西欧諸国における少子高齢化だ。特に日本の人口は17年の1億2700万人から50年には1億900万人に減り、その後も減少は続くと予想されている。結果として、米国の中核的な同盟国が将来、米国の力を増幅させることは今ほど期待できなくなる。このことは、17年の13億人から50年までに17億人に人口が増える見通しのインドなどの国々と関係を深める重要性をかつてないほど高める。

  2番目のリスクは、数字が示しているよりも米国の人口動態の未来が脆弱(ぜいじゃく)なことだ。米国の人口増加予測を大きく支える1つの要因は高水準で推移する移民流入数だが、現在の傾向が今後を示唆するのであれば、米国が極めて厳格な移民規制を法制化するか、あるいは大志を抱いてやって来る人々を歓迎する国というイメージが崩れることで、人口動態の利点を簡単に損ねてしまう恐れがある。一方で、移民が増え続け白人の人口が減ると、外国人嫌いと人種に基づく政治が今まで以上にはびこりかねず、米国は人口動態の優位性を保つためにこうした矛盾をはらんだ問題に折り合いをつける方策を見いだす必要がある。

  そして3番目のリスクは、人口が減る競合国が捨て身で米国に挑んでくることだ。攻撃的なのは台頭しつつある大国だと考えがちだが、劣勢の強国はより攻撃的になり得る。歴史はそうした事例でいっぱいだ。チャンスが狭まりつつあると考えたドイツは極めて大きな地政学的リスクを取ることを決断。その後、第1次世界大戦が始まった。

  仮に中国とロシアの指導者が自国の未来は暗いようだと判断すれば、力のあるうちに成果を得ようと一段と攻撃的に行動しかねず、台湾やバルト諸国といった「ホットスポット」を巻き込む危機の可能性を高め得る。従って米国は、中国とロシアに今動かなければ永遠にチャンスは巡って来ないと思わせる不必要な挑発的行為を避けながら、修正主義的な行動を阻止するために必要な軍事力などでの強さを維持すべきだ。

  人口動態は最終的に中ロとの競争において米国の勝利を十分手助けすることになるだろうが、その過程において対立は一段と緊張をはらむ可能性もある。

  (ハル・ブランズ氏は米ジョンズ・ホプキンズ大学高等国際問題研究大学院の「ヘンリー・キッシンジャー・ディスティングイッシュトプロフェッサー」で、戦略予算評価センターの上級研究員です。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:America’s Greatest Global Advantage Is Demographics: Hal Brands(抜粋)

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