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Photographer: Akio Kon/Bloomberg

金融庁は市場分断リスク回避に道筋を、G20で連携図る-氷見野審議官

  • 各国による規制の矛盾、重複、導入時期の不一致がリスク高める
  • 欧米の規制強化で邦銀はコスト負担や人材充当強いられるケースも
The Financial Services Agency (FSA) headquarters stand in Tokyo, Japan, on Tuesday, Feb. 13, 2018. Cryptocurrency exchange Coincheck inc., which lost about $500 million to hackers last month, faced a deadline Tuesday to explain how the hack occurred and plans for improving its security to regulators at Japan's FSA.
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

金融庁は、日本が議長国を務め6月に大阪で開催される20カ国・地域(G20)首脳会合で金融市場分断リスクの回避に向け連携を呼び掛ける。各国の監督当局による規制が矛盾しているケースなどグローバル展開する金融機関の負担が増えてきており、こうした問題に対処するための道筋をつけることを目指す。

Financial Services Agency Japan Vice Commissioner Ryozo Himino Interview

氷見野良三金融国際審議官

Photographer: Toru Hanai/Bloomberg

  氷見野良三金融国際審議官は8日のインタビューで、各国の規制が市場分断のリスクを不必要に高めるケースとして、規制の矛盾、重複、導入時期の不一致を挙げ、問題が放置された場合、金融システムの安定性だけでなく経済成長にも影響を与えかねないとして、「各国間の調整をより効率的かつ効果的にするためのプロセスの改善」を図りたいと述べた。

  具体的には、国内規制立案の初期段階で海外市場参加者の意見を聞くガイダンスを設けるほか、金融機関が二つの規制当局から矛盾した要求を受けた場合には、3者が電話会議をした上で書面に見解をまとめるプロセスに合意するなどの案がある。ただ、氷見野氏は、各国固有の事情に応じて考慮すべきニーズが異なることから慎重に議論を進める必要があるとしている。

  2008年のリーマンショックの後、主要国は自国の市場構造や課題を勘案した規制強化に取り組んできた。その結果、グローバルに事業展開する金融機関が母国と現地当局の規制の矛盾に直面したり、重複した規制への対応を迫られ板挟みになったりする例も目立ち始めている。英国の欧州連合(EU)離脱により欧州域内の規制の分断が負担となる可能性も指摘されている。

  金融庁の働き掛けを受け、世界のデリバティブ(金融派生商品)取引を行う金融機関で構成する国際スワップ・デリバティブ協会(ISDA)は今年1月、この問題への対処案を提示。金融システムを監視し安定性確保を目指す金融安定理事会(FSB)は2月、市場分断の実態と潜在的影響などを調査した上で、各国当局が規制分断によるリスクに対処できるツールを特定すると表明している。

邦銀の海外事業拡大

  国内大手銀行は、マイナス金利政策や少子高齢化による市場縮小を背景に海外事業を拡大している。18年9月現在、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の海外事業比率は約37%、三井住友フィナンシャルグループは市場部門を含めた比率で32%、みずほフィナンシャルグループは市場部門を除く対顧客部門で約37%となっており、拠点は世界各地に点在する。

  ところがEUは、域内で事業展開する大手外国銀行に中間持ち株会社設置と自己資本積み増しを求める一方、米金融当局も米国での事業規模が大きい銀行に対し同様の措置を講ずるよう求める規制強化を進めている。危機時の破綻処理での納税者負担を回避し、資産・権利の移転を円滑にするのが目的だが、金融機関にとっては組織改編も伴うコスト負担と人材の充当を強いられる。

  全国銀行協会は、欧米の金融当局に対しコメント提案を行ってきたが、個別ルールごとの対応となっているのが現状だ。MUFGの18年4-9月期の決算資料によると、規制・制度対応のための経費が前年同期比で約350億円増加した。

  全銀協の藤原弘治会長(みずほ銀行頭取)は、金融機関のみならず顧客にも影響し得る「決して無視できない問題」と危機感を示した上で、政府がG20でこの問題を取り上げることは意義深く、自国主義などで対立を深める「グローバリズムの巻き戻し」に対しても一石を投じると期待していると語った。

  みずほ総合研究所金融調査部の蔵原千咲主任研究員は、日本の当局はこれまでも国際議論の場で規制と市場の分断の問題を指摘してきたと述べた上で、G20の議長国を務めることは問題解決に向けたリーダーシップを発揮しやすくなるという点で相当の意義があるとコメントした。

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