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「現代金融理論」、にわかに脚光-米財政赤字拡大や「AOC」効果で

  • 米国の財政収支はすでに大幅な赤字も市場は気にせず
  • トランプ政権やオカシオコルテス氏の主張、日本の経験も追い風

過去30年ほどを振り返ると、「現代金融理論(MMT)」について無名のブロガーがあしざまに言うことはしばしばあった。だが、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長やブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)といった人物が話題にすることはなかった。

  MMTを発展させた経済学者は学会でもインターネット上でもおおむね非主流派として活動してきた。しかし今や、彼らの考えはにわかに脚光を浴びている。ウォール街の大物や政策当局の重鎮がMMTについて意見することのない日はほぼ皆無で、否定的な見解が示されるのが通常だが、支持が寄せられるケースもある。

  何年も無視されてきたMMTが、なぜ今になって突如、米国の経済論議の焦点となったかを巡っては当然、疑問が生じる。次に幾つか考えられる答えを挙げてみる。

すでに赤字

  MMTの論旨は、自国通貨を持つ政府の支出余地は一般的に想定されるよりも大きく、全てを税金で賄う必要はないというものだ。この見解によれば、米国はいかなる債務返済に必要な貨幣も創出できるため、デフォルト(債務不履行)に追い込まれるリスクはゼロということになる。

  米国はすでに過去10年間にわたり公的債務を積み上げていることから、こうした主張にあまり異論はないかもしれない。公的債務は当初、グレートリセッションへの極めて正攻法的な取り組みとして、金融危機対応の中で急増した。ところが現在では、すでに拡大局面にある景気をさらに加速させるために財政刺激策が講じられ、その規模は1960年代以来の大きさだ。

Trump's Bump

Average growth is 59 basis points faster than during the Obama recovery, and a deficit-spending government delivered most of them.

Source: Bureau of Economic Analysis

Note: Households = consumption + residential investment. Business = other private investment.

  このため、MMTの提唱者はこの理論について、いつの日にか採用されるかもしれない政策パッケージと見なすべきではないと指摘する。むしろ、どのような手段が政府に利用可能かを理解するための枠組みのようなものだとされる。しかも、それらの手段の一部はすでに活用されている。

市場は気にせず

  「財政赤字は金利をずっと高く押し上げるだろう」。こう主張するブラックロックのフィンクCEOはMMTを「くず」と一蹴した。

  市場の地合いは急変する可能性があるが、投資家は今のところ財政赤字の規模を不安視していない。米国の財政赤字はすでに国内総生産(GDP)比4%を上回っている。それでも米政府が実施する国債入札で、30年債の落札利回りは3%程度にとどまっている。赤字の危険性を巡る警告には事欠かないものの、市場はそれに同調する様子がない。

Bond yields have stayed low even as the national debt surged


低インフレ

  米国の失業率は過去最低水準にあり、本来なら物価高をもたらしているはずだが、現実はそうなっていない。

  この結果、25年前には自明と受け止められていた考えにエコノミストらは自信を失いつつある。そうした中で、他の先進国に比べ米国で一段と極端な所得格差の拡大や、国民皆保険というセーフティーネットの欠如といった21世紀型の懸案に対処することに重点を置く枠組みが新たに求められるようになった。

トランプ効果

  政治的には、MMTの提唱者は左派寄りの傾向があるが、右派・左派いずれの政権でも自分たちの理論を応用することは可能だと主張する。そして、トランプ大統領が財政政策のアプローチで法人減税や国防費拡大などの経済目標にまず優先的に取り組み、財政収支の影響への心配は二の次としている様子に、MMTの提唱者がひそかに称賛を表すこともときどきある。

  ホワイトハウスのクドロー国家経済会議(NEC)委員長は10日、「優れた成長政策においては、必ずしも財政赤字を気にする必要はないと思う」と話した

relates to 「現代金融理論」、にわかに脚光-米財政赤字拡大や「AOC」効果で

一般教書演説を行うトランプ大統領と、それを聴くオカシオコルテス議員

Photographer: Bloomberg; Getty Images

AOC効果

  米国の政治にMMTを持ち込んだのはバーニー・サンダース上院議員だ。しかし、サンダース議員がMMTをはっきりと支持したことはない。

  支持を明確にしたのはサンダース議員の選挙運動に参加したこともあるニューヨーク州選出の新人議員で、AOCの頭文字で知られるアレクサンドリア・オカシオコルテス氏だ。オカシオコルテス氏はMMTについて、「会話でもっと盛り上げる」べきだとし、議会がその「財政権」を動員するよう呼び掛けている。経済・政治課題についてのアイデア表明の場である同氏のソーシャルメディアは何百万人ものフォロワーを誇る。

日本も大幅赤字

  MMTの措置を本格的に活用したとほぼ言える国は日本だろう。日本では20年前に金利がゼロに達し、日本銀行が一部ファイナンスしている公的債務残高はGDPの約2.5倍の規模にある。

  赤字続きでもインフレ高進はなく、債券市場からの資金逃避の動きもない。

Rescue Act

Budget deficits helped Japan and U.S. to recover after the 2008 crisis.

Source: World Bank, Bloomberg data for period from 2009 to 2017.

主流派も動く

  米国トップの大学の著名エコノミストは一斉にMMTを批判している。ハーバード大学教授で元財務長官のラリー・サマーズ氏は「重層的な誤り」があると論評。ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン氏や国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミストを務めたオリビエ・ブランシャール氏もMMT攻撃に加わった。と同時にこうした著名人らから、公的債務懸念は行き過ぎだとして赤字拡大の支出に好意的な姿勢が見られるのも最近は多くなってきた。

原題:MMT Bursts From Obscurity Helped by Trump Deficits, ‘AOC Factor’(抜粋)

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