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【コラム】習政権嫌気して中国去る人材、米国は迎え入れよ-スミス

  • 米国に予期せぬ恵みにも-ナチスの迫害や旧ソ連崩壊後にも人材流入
  • 米中対立は開かれた社会と閉鎖社会の戦い-オープンさは強み

1990年代から2010年代初めまで、中国の方向に間違いはなかったようにみえる。製造業の広範な分野で中国企業がシェアを伸ばし、経済は飛躍的に成長。政治体制も強権的ではあるが、政権は鄧小平の時代からスムーズに順次移行し、安定性を増しているようだった。母国でリッチになるチャンスが広がると、米国の大学を卒業後に帰国する中国人留学生も増えた。

  だが今は止めることができないように思える巨大な力が、厳しい環境を生んでいる。10年代に入りすでに鈍化していた経済は一段と減速。習近平国家主席は最高指導者の地位に終身とどまれるよう、自らルールを変えた。ウイグル族弾圧など少数民族に対してのみならず、国民全般にも一段と抑圧的になっている。今では政府の経済政策について語ることさえ不可とされることもしばしばだ。中国が経済の基盤を再び強化し、開放をあらためて推進する可能性はあるが、あらゆるトレンドが悪くなっているように見えるのが現状だ。

  経済の鈍化と政権の締め付け強化で国から逃げ出す中国人も増えるだろう。すでに現実の話だ。米紙ニューヨーク・タイムズは特集記事で、中国の経済展望に強い自信を持つ中国人富裕層の割合が2年前の3分の2から今では3分の1に減ったとの調査結果を紹介。子どもを海外に留学させる親も増えているが、その理由が視点を広げる教育を受けさせるためか、国内の不安や圧力を回避するためかは分からない。海外での住宅購入は単に賢い投資戦略かもしれないが、国外に居場所を確保する手段にもなり得る。

  非常に多くの中国人エリート層が自国の安定と展望に自信がないという事実は、習政権にとって警告になるはずだ。一方で、米国には予期せぬ恵みになるかもしれない。こうした中国人を歓迎し、米国民とすることができれば、起業家精神にあふれた人材を多数受け入れることになる。

  米国はこれまでも、不安で国を後にした優秀な人材を活用してきた。エコノミストのペトラ・モーザー氏の検証によれば、1930年代にナチス・ドイツの迫害から逃れたユダヤ人の流入が米国の科学とテクノロジーの進歩を促進。旧ソ連の崩壊で入国したロシア人科学者についても同様のことが言えた。ある国が混乱、貧困または内戦に陥った際、スキルを持つ優秀な人材がしばしば移住先に選ぶのは米国だ。米誌フォーチュンが選ぶ500社のほぼ半数が、米国移民一世ないし二世によって創業されるなど、こうした移民は起業家精神に富む傾向もある。

  米国が中国から実業家や創意工夫に富む人々を受け入れることは特に重要だ。中国が彼らに帰国を積極的に促しているためだ。ビジネスチャンスとおいしい仕事を約束し海外留学組を母国に戻るよう働き掛けている中国は、トップクラスの科学者にアピールするため研究資金を増やしている。これに米国は対抗すべきだが、中国人受け入れを妨げる最大の障害は米国側の態度にあるかもしれない。米中貿易戦争が激化し、中国のスパイ行為を容認しないという意識が高まっているためだ。

  トランプ政権は中国から科学・テクノロジーを学びにやって来る学生へのビザ(査証)の規制に着手。米国に来る「ほぼ全ての(中国人)学生はスパイだ」とトランプ大統領が断定したとも伝えられた。米政権はまた中国人研究者に対する規制も検討。テクノロジー輸出規制がトップクラスのハイテク企業での中国人雇用阻止のためだと広く解釈されるとの懸念すらある。トランプ政権は高度なスキルを持つ人材の移住や海外からの留学生、外国人起業家を規制する全般的な政策を先に打ち出しており、中国に狙いを定めた措置はそれに追加される。

  中国による産業・知的財産窃盗を取り締まる必要性を踏まえても、これは大きな間違いだ。確かに、学んだり働くために米国にやって来る中国人のごく一部はスパイになるかもしれない。だが、大半はそうではない。なぜなら中国を捨て米国を選ぼうとする人々は、中国の体制に不満を持っている傾向があるからだ。中国政府に反発する人々と、そうした人材が持つ米国の力の構築に寄与する素晴らしい才能を活用すれば、米国のスパイ防止活動を支える逸材確保につながる。

  米中対立は開かれた社会と閉鎖社会の戦いだ。米国が自国の利点を手放せば、勝利はおぼつかない。社会がオープンであることを最大限に活用し、中国の抑圧と硬化し始めた経済から逃れようとしている人材を迎え入れるべきだ。

  (ノア・スミス氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。米ニューヨーク州立大学ストー二ーブルック校でファイナンスを教えた経験があり、ブログ「ノアピニオン」を執筆。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:U.S. Should Grab the Talent China Is Driving Away: Noah Smith(抜粋)

    This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.

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