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Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

日銀出口政策で新アコード締結を、国債市場安定が不可欠-小林慶大教授

  • 財政再建の道筋示さなければ、出口で金利と物価の安定は両立できず
  • 日銀は「出口を出ない戦略」、緩和続けて政府債務の膨張支える狙い
Pedestrians cross a road in front of the Bank of Japan (BOJ) headquarters in Tokyo, Japan, on Wednesday, Oct. 31, 2018. The BOJ stayed the course on monetary stimulus while confirming in updated price forecasts that it won’t meet its inflation target for years to come.
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

小林慶一郎慶応義塾大学教授は、異次元緩和からの出口政策には国債市場の安定が不可欠とした上で、財政に対する信認を確保するため、日本銀行は政府と2013年に結んだ政策連携に代わる「アコード」を新たに締結すべきだとの考えを示した。

Keio University Professor Keiichiro Kobayashi

小林慶一郎・慶応義塾大学教授

Source: Keiichiro Kobayashi

  小林教授は20日のインタビューで、2%物価目標と財政再建を掲げた政府・日銀の共同声明から6年たつが、ともに達成できず、現状維持を続けてもゼロインフレ、ゼロ成長の「じり貧になっていく」と指摘。政府が財政再建の道筋を示さなければ、出口で国債金利と物価の安定は両立できないため、「日銀は出口戦略のためのアコードを結び直し、政府にちゃんと守ってもらう必要があると言うべきだ」と語った。

  日銀は2%物価目標が達成されるまで粘り強く緩和を続ける構えだが、小林教授は「政府に物申したくないため2%目標を言い訳にしている」と指摘。日銀が今考えているのは「出口を出ない戦略」で、10年、20年、30年と緩和を続けて膨れ上がる政府債務を支えることだろうが、「どこかで国債と通貨に対する信認が失われ、資本逃避が起きれば一挙に崩れる可能性がある」との危機感を示した。

  政府と日銀は13年1月、日銀が金融緩和によりできるだけ早期に2%物価目標の実現を目指すと同時に、政府は構造改革と財政再建を進めるとした共同声明を発表した。同年3月に就任した黒田東彦総裁は翌月に2年間での目標達成を掲げて量的・質的緩和を導入、追加緩和を重ねてきたが、目標には程遠い状況。この間、消費増税は二度先送りされ、潜在成長率は0%台後半とほとんど上昇していない。

超低金利の弊害

  日銀がゼロ金利政策を導入して今月で20年たつ。小林教授は、ゼロ金利にしてマネーを供給してもモノやサービスの購入に向かわず、タンス預金のように資産をため込む現象が「経済学で想定したよりずっと長く、大規模に起こり得ることがこの20年で示された」と指摘した。

  国民や企業がただお金をため続けることは不合理なので、マネーを増やせば必ずどこかでインフレになるというのが「リフレ派的な発想の根本」だが、あればあるほどため込むことが自己目的化し、マネーを増やしても物価が上がらない状況と説明。金融緩和の景気刺激効果は「長期的に失われてしまったのではないか」と語った。

  債務残高の対国内総生産(GDP)比は230%超と先進国で最悪だ。小林教授は、政府債務の持続可能性への懸念が消費や投資を抑制することは理論モデルで明らかになっていると指摘。ハーバード大学のラインハート、ロゴフ両教授の研究でも、同比率が90%を超えると成長率は1%強低下することが示されているという。

  景気の先行き不透明感が強まっており、日銀の追加緩和を予想する向きも増えている。小林教授は、政府が財政出動して国債を発行し、日銀が購入すればいくらでもマネーは拡大できるが、「一時的に景気を刺激しても、長期的に成長率を低下させ、物価が上がりにくい状況を作り出してしまう可能性がある」と語った。

財政再建なくして出口なし

  将来、仮に何らかの理由で物価が上昇し出口を迎えても、「金利が2、3%上がるだけで国債残高が増え不安をあおるため、市場が相当不安定になる」と危惧。逆に、金利を抑えようとすると国債購入を増やさざるを得ず、「物価を2%にとどめることが難しくなる」とみる。不安定化する金利を放置し金融を引き締めるか、金利を安定化させようとしてインフレ高騰を甘受するか、二者択一だという。

  小林教授は、出口政策に財政再建が不可欠なことは「日銀の人も分かっているが、口に出さない。自分たちの子供や孫の世代の経済財政運営を縛るようなやり方を続けていいのか、今の世代には財政や金融を早く健全化する責任がある」と語った。  

  小林氏は1991年に東大大学院修士課程修了、通商産業省(現経済産業省)入省、98年にシカゴ大学博士(経済学)、2013年から慶大教授。経済産業研究所上級研究員、東京財団政策研究所研究主幹などを兼務する。昨年出版の「財政破綻後 危機のシナリオ分析」など著書多数。

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