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「自らを変えよ」のリクルート、気付けばアマゾンが競争相手に

  • 売上高の半分が海外、20年に人材関連事業で世界一が目標
  • 積極的に権限を与える文化、「個が競争力の源泉」と峰岸社長
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インターネットを通じ人材仲介や外食予約サービスを手掛けるリクルートホールディングス(HD)。創業者が残した「自らを変えよ」という言葉を原動力に、紙媒体から海外展開するテクノロジー企業に変化した。見えてきたのは米アマゾン・ドット・コムやグーグルなど世界のIT大手との競合関係だ。

  情報検索やネット通販などのIT企業は、膨大な数の消費者と接点を持つ。そこに集まるデータの活用でニーズを先読みし、新たな収益につなげようと人工知能(AI)を駆使した競争が始まっている。

  リクルートHDの峰岸真澄社長(55)はインタビューで、世界のIT大手について「どの産業のどのプレーヤーから見ても脅威だ。だが一方でパートナー、協業先、顧客であったりもする」と指摘。「ライバル視することはあまり考えてない」とし、まず「一つひとつのサービスを磨く」と述べた。

Inside The Recruit Holdings Headquarters and CEO Masumi Minegishi

峰岸真澄社長

Photographer: Shoko Takayasu/Bloomberg

  同社は2012年に求人検索サイトの米インディード、18年には職場体験談などを投稿できる同業の米グラスドアを買収した。売上高の約半分を人材仲介中心の海外事業で稼ぎ出す。20年に人材関連事業で、30年に人材と販促支援関連(レストラン予約など)の合計で世界ナンバーワンの目標を掲げる。

  米ハーバード・ビジネススクールのサンドラ・サッチャー教授は、「アマゾンが製品だけではなくサービスを提供するという道を進むならば、脅威になる可能性がある」と予測する。一方、職探しの最前線では、世界最大のビジネス向け会員制交流サイト(SNS)である米リンクトインが潜在的な競争相手になるとみている。

  リクルートはアマゾンで買い物する際、別の商品が提案される仕組みも意識し、AIを駆使して顧客希望と合致するサービスの提供を目指す。人材仲介なら採用決定までワンクリックが究極の姿だ。自由な発想で社員と会社が目標を共有する点でもグーグルなどに共感、エンジニアの待遇も重視する。IT企業の買収を軸に今後約3年で4000億円程度を投資する準備がある。

  「やはり『こと』のサービスだ」-。峰岸社長は米IT大手が競合相手に浮上する中で、それと伍(ご)する戦略の一端を明かした。転職すること、結婚すること、家に住むこと、レストランで食べること、旅すること。ライフステージに応じて「こと」と消費者を結び付けるビジネスにリクルートの強みがあると分析する。

Inside The Recruit Holdings Headquarters and CEO Masumi Minegishi

社員のミィーティング風景

Photographer: Shoko Takayasu/Bloomberg

  インディード、ゼクシィ、じゃらんスーモ、ホットペッパーグルメ、カーセンサーなど人材仲介から販促支援まで約350のスマホアプリと約200のウェブサイトを持つ。グーグルが日本で求人情報のまとめサービスを始めるなど一部で競争も始まっているが、国内市場を中心にデータを握る点でリクルートには一日の長がある。

  マッキンゼー・アンド・カンパニーの野中賢治シニアパートナーは、「日本企業としてはかなり先進的で、紙媒体からの切り替えも早く、電子データを持っている印象だ」と分析。「美容室予約などではアマゾンと直接競合していない」とし、独自開拓してきた分野を中心に攻勢が続くとみている。 

  1960年に企業と学生を結ぶ情報誌として始まったリクルート。伝統は変化の足かせとなる場合もあるが、社内の能力ある個人に積極的に権限を与えることで停滞を防ごうとしている。外食予約のホットペッパーグルメや結婚関連情報サービスのゼクシィは社内公募から生まれた。

  月額980円で4万本以上の動画授業をネット配信する「スタディサプリ」もその一つだ。起業コンテストで優勝し、事業を立ち上げた山口文洋氏(41、リクルートマーケティングパートナーズ社長)はTシャツ姿でインタビューに現れた。

Inside The Recruit Holdings Headquarters and CEO Masumi Minegishi

本社のあるグラントウキョウサウスタワー

Photographer: Shoko Takayasu/Bloomberg

  06年に中途採用で入社後、毎年別の案で応募し、11年に事業化を決めた。格安動画なら未開拓の「ブルーオーシャン的なサービスになると思った」。いきなり200人、20億円の予算が与えられた。有料会員数は約47万6000人(18年3月末、小中高生)に上り、中国やインドへの参入、東南アジアでの事業拡大も狙う。

  山口氏はコンテストの結果発表に先立ち、教育事業担当の執行役員に抜てきされた。「青天のへきれきだった」と振り返る。「プロパーでもなく中途入社5年目なのに?」と驚いた。「でもプレッシャーというよりラッキー」と感じた。「自分がトップになったら、こうしてやろうと思っていた」からだ。

  「自ら機会を作り出し、機会によって自らを変えよ」ー。創業者、江副浩正氏の言葉はリクルート社内に浸透する。そして会社を14年の上場に導いた峰岸社長の口癖は、「君はどうしてだと思う。君ならどうする」だ。社員は常に自分の考えを求められる。政財界を巻き込んだリクルート事件で会社を離れた江副氏は、上場を約1年半後に控えた13年の2月8日に76歳で息を引き取った。

  峰岸社長は「創業者がいなくなったら続かない企業もある。今でも個を尊重しているのは、それが競争力の源泉と考えているからだ」と語った。

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