コンテンツにスキップする
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

【インサイト】なぜ低下?ゼロ金利20年で変わる日銀の予測精度

The Bank of Japan (BOJ) headquarters stands in Tokyo, Japan, on Wednesday, Sept. 13, 2017. The BOJ\'s next monetary policy meeting is scheduled for Sept. 21. The central bank pushed back in July the projected timing for reaching its 2 percent inflation target for the sixth time as economic growth failed to drive price gains.
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

現在の日本銀行は20年前にゼロ金利を導入した際と同じ中央銀行ではない。デフレとの20年の闘いを経て、より戦略的に巧妙となった。これはインフレと経済成長率の日銀見通しの正確さを評価した結果だ。

  • 公表される日銀見通しの役割は進化してきた。非伝統的政策の導入初期、日銀の政策委員の見通しは純粋な予測に近いものだった。最近では、黒田東彦総裁の下で、見通しは2%のインフレ目標を達成するために期待を誘導するものに変化し始めたように見える。結果的に、予測の精度は低下している。
  • 主要な政策転換点前後の日銀のインフレ予測は、コンセンサス(市場予測の平均値)よりも正確である傾向が見られる。サプライズを伴う政策変更の際に、日銀はその影響を事前にある程度評価できるが、市場は必ずしもそうではない。
  • 大きな政策変更から時間が経過するにつれて、日銀のインフレ予測はコンセンサスよりも正確さが低下する傾向にある。これは、日銀が物価目的を達成するための期待を導こうとする一方で、政策効果の低下という厳しい経済的現実に直面していることを反映している可能性がある。

インフレ予測-日銀対コンセンサス




relates to 【インサイト】なぜ低下?ゼロ金利20年で変わる日銀の予測精度

  

 

  ゼロ金利政策導入から20年間で大きく改善したものがある。日銀の見通しの透明性を高める動きだ。上のグラフが示すように、日本銀行は見通し公表開始から少しずつ予測期間の範囲を広げてきた。速水日銀がゼロ金利政策を導入してから1年半が過ぎ、同政策が一時解除された後の2000年10月に最初のインフレ見通しが公表された。その予測は5カ月後に終了する00年度のものだけだった。最近では、今後3年間程度のインフレと成長率の見通しが四半期ごとに公表されている。

  もう一つの傾向はグラフからも明らかだが、 日銀は11年度予測以降、コンセンサスよりも当初高いインフレ見通しを示し、予測期間が接近するにつれて、その予測は市場コンセンサスに近づいていく。

予測誤差-コアCPIおよびGDPの日銀予測対コンセンサス

relates to 【インサイト】なぜ低下?ゼロ金利20年で変わる日銀の予測精度

   

   

  04年からのデータを見ると、特に過去数年間で、日銀のインフレ予測は市場コンセンサスよりも予測精度が悪くなっている。注目すべき例外は13年で、市場は同年4月に日銀が発表した大規模緩和の影響を過小評価していた。

  一方、国内総生産(GDP)成長率については、日銀が14年の消費税引き上げ時の影響を若干過小評価していたように見受けられるが、全般的に日銀と市場の予測誤差に大きな違いは見られない。

  以下は平均予測誤差(実績値と予測値の誤差の絶対値の平均)の比較だ。数値が小さいほど精度が高いことを示している。

2004〜2008年度

  • 消費者物価上昇率:日銀が0.23%ポイント、市場予測が0.22%ポイント
  • GDP成長率:日銀が1.57%ポイント、市場予測で1.62%ポイント

2014〜2017年度

  • 消費者物価上昇率:日銀が0.78%ポイント、市場予測が0.41%ポイント
  • GDP成長率:日銀が0.80%ポイント、市場予測が0.72%ポイント

  この20年で日銀の政策は、ゼロ金利から量的緩和へと発展し、さらにマイナス金利を導入し、最終的に長短金利を操作することを目的としたハイブリッド型となる、日銀の非伝統的政策の特徴の1つは、金融市場と経済に対する初期効果がほとんどの場合大きくポジティブであることだ。

  その結果、日銀は当初の予測で先んじ、後にそのアドバンテージを失う。さらに、市場期待に影響を与えることが金融政策の重要な要素であることを考えると、特に13年3月に黒田が総裁になった後は、日銀は政策意図と相反する予測をする余地が少なかった可能性がある。

黒田日銀での物価予測は市場よりも楽観的

relates to 【インサイト】なぜ低下?ゼロ金利20年で変わる日銀の予測精度

  

  

  黒田総裁が日銀のかじを取って以来、インフレに関する政策委員会の中央値予測は一貫して市場のコンセンサスよりも楽観的だ。任期の最初の2年間で、日銀予測はより正確だった。しかし、それ以降は市場より大幅に高いインフレ予測を提示し、最終的な実績値との予測誤差は大幅に拡大している。

黒田日銀での成長率予測は市場予測と近い

relates to 【インサイト】なぜ低下?ゼロ金利20年で変わる日銀の予測精度

  

  

  一方、GDP成長率になると、日銀予測と市場予測はほぼ同じ推移をしている。これは、日銀がインフレに関しては2%の物価目標を設定しているのに対して、特定の成長率を目標にしていないという事実を反映しているかもしれない。

  日銀の政策委員見通しの中央値は機関としての予測値ではない。従って、予測値そのものに過度な政策的意図を求めるのは行き過ぎかもしれないし、その解釈は難しい。しかし、少なくとも予測の精度という観点からは比較可能だといえる。市場コンセンサスの平均値の代わりに中央値を用いても、上記の結果はほぼ変わらない。

日銀はプラスの需給ギャップのために資金を投じ過ぎ?

relates to 【インサイト】なぜ低下?ゼロ金利20年で変わる日銀の予測精度

  

  

  日銀のインフレ率と成長率予測の正確さの違いは、日銀の需給(GDP)ギャップの推計値から部分的に導き出されるかもしれない。 18年第3四半期の時点で、日本銀行は、内閣府推計の0.2%ポイントのマイナスギャップと比較して1.25%ポイントのプラスのGDPギャップを持っていたと推計している。

  プラスのGDPギャップが拡大するとインフレ率は上昇する傾向にあり、日銀は2%のインフレ目標を達成するための手掛かりとしてきた。問題はこのプロセスに時間が掛かることだ。日銀の予測通りにインフレ率が上昇しない期間が長いほど、市場が日銀のインフレ目標達成に対する信頼を失う可能性は高まる。

  市場の信頼を失い、金融不均衡を蓄積するリスクはあるが、ブルームバーグ・エコノミクスは、過去20年間にわたる日銀の非伝統的金融政策から日本経済は恩恵を受けてきたとの見解だ。 1980年代のバブル経済崩壊後の銀行部門と不動産市場の大幅な縮小を考えると、デフレとの長期的な闘いが予想されていただろう。しかし、その闘いは当時の速水優総裁が想像したよりも恐らく長引いている。

  日本は緩慢な経済の衰退を許容するか、危険だが強力な治療を施すかの選択に直面していた。速水元総裁はゼロ金利で第一歩を踏み出した。黒田総裁は6年前にさらに強力な治療法を施すことを選んだ。

  依然として、日銀予測は先の物価見通しほど楽観的だ。2019年1月時点で20年度にコアインフレ率が1.5%に達すると見込んでおり、これは市場コンセンサスの1.0%より大幅に高い。

原文の英文記事はこちらをクリック
JAPAN INSIGHT: 20 Years of Hard Knocks - BOJ Now Leans on Hope

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE