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【コラム】骨折り損の「次の中国」探し、為替管理は悪くない-レン

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  • ドル建て投資の場合、中国からの資産移転に妙味あるのは理論上だけ
  • 実行すれば悪魔が姿を現す-中国に代わる投資先はまだ見えず

世界の投資家が今探しているのは、米中貿易戦争で最も大きな「漁夫の利」を得る国だ。

  ここ10年、外国人投資家にとって良かったのは中国だ。 2008年の米リーマン・ブラザーズ・ホールディングス破綻後、中国株の指標MSCI中国指数は年8.6%のプラスリターンを提供してきた。

  ただ昨年はひどかった。中国株は世界の中でも下げが目立ち、MSCI指数は約20%下落。人民元は金融危機以来見られない1ドル=7元近くまで値下がりし、中国政府が元安を武器にしているのではないかとの懸念が広がった。

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イラスト:ブルームバーグ市場向けジャスティントラン

  中国を見限り、別の投資先を探すべき時なのだろうか。対中関税率引き上げで米企業は半導体部品をマレーシアから、データ記憶装置をタイから、綿花をパキスタンから輸入する誘惑にかられるだろう。実際、一部資産の再分配はすでに進行中だ。

  昨年のアジア株低迷にもかかわらず、海外投資家はベトナム株を買い越した。米中対立から大きな恩恵を受けるのがベトナムだと考えている投資家は多い。米中貿易戦争が始まる前から韓国のサムスン電子などグローバル企業は工場をベトナムに移していた。
 
  しかしドル建てで投資する場合、中国からの資産移転に妙味があるのは理論上だけだ。実行すれば悪魔が姿を現す。

  為替変動リスクを考慮しない国際投資家はいない。新興国通貨はボラティリティーが大きく、突然の変動に対するヘッジコストは高くつきかねない。例えば今年最初の週、1年物フォワードでのヘッジはインドネシア・ルピアで5.4%、インド・ルピーは4.2%の負担となった。株価収益率(PER)を見れば、インドネシアが16.8倍、インドが21.6倍といずれもすでに高水準だ。これらのホットな新興国市場は、もはやそれほど魅力的でないように見える。

Peace of Mind

Cost of hedging the yuan using the one-year offshore forward

Source: Bloomberg

  一方で、人民元のヘッジは今年、1年物フォワードを用いて0.2%と、17年初めの5.6%や18年の2.2%と比べると極めて安い。中国株のPERは11.5倍と1年前に比べ28%割安だ。こうした点からすると、貿易戦争や経済成長鈍化を踏まえても、中国はそれほど悪くないように思える。

  新興国投資での通貨安定の重要性は、どんなに強調してもしきれない。人民元を巡りその点で疑いがあるなら、トルコ・リラやロシア・ルーブル、ブラジル・レアルと比べてみればいい。過去10年間にこうした市場に飛び込んだ外国人投資家は、中国株のパフォーマンスが上回っているのを横目に、羨望(せんぼう)のまなざしと共にうめき声を上げることぐらいしかできなかっただろう。

Lender vs. Borrower

China’s current account

Source: CEIC Data

  中国の輸出モデルに倣い衣料品やエレクトロニクス製品などを世界に輸出し経済成長を遂げているベトナムなど比較的小さな国にしても、経常収支の黒字が長く続くとは限らない。それを示唆しているのは、ほかならぬ中国の軌道だ。中国は、07年に経常黒字が国内総生産(GDP)の10%を超え、わずか10年ほど前はグローバルな収支不均衡の根本原因だった。だが昨年は黒字がGDPの0.4%相当にまで縮小。そしてモルガン・スタンレーによれば、19年には経常赤字となる公算大だ。

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「ブルームバーグ・マーケッツ」誌

アートワークをカバーする:Bloomberg MarketsのRebecca Mock

  それでも中国には強みがある。10億人を超える人口だ。乗用車や家電などの消費者向け製品は、規模が物を言うビジネスだ。中国はその人口規模でこうした産業を支えることができる。だが、乗用車などの製品を輸入しなければならない小さめの国では難しい。そうした国が経常黒字を維持しようとすれば、節約しながら輸出を続け、対外支出の抑制を図ることは可能かもしれない。だがそれでは「次の中国」となることはできない。

  中国政府が資本主義を受け入れて40年が過ぎた今も、元相場はまだ厳しく管理されている。しかしそれは外国人にとって悪いことではないのだ。新興国全体の資産クラスを見回してみても、中国の代わりとなる投資先はまだない。中国という存在に、投資家はもっと慣れた方がいい。

  (原文は「ブルームバーグ・マーケッツ」誌に掲載。シュリ・レン氏はブルームバーグ・オピニオンの香港在住コラムニストで、アジア市場を担当しています。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Finding the ‘Next China’ Will Confound Investors: Shuli Ren(抜粋)

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