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【コラム】トランプ政権に大チャンス、逃せば大失策-バス&バビッチ

  • 歴代米政権への中国のコミットメントで実行されたものはまれ
  • 中国の振る舞いが恒久的に変化するまで協議を終えてはならない

中国との通商交渉で、トランプ米大統領とその交渉チームは歴代の米政権より大きなレバレッジを持つ。中国当局は国内経済への打撃がさらに広がるのを避けるため、米国との貿易戦争の「停戦」に望みをつなごうと躍起だ。

  市場で最近見られる市場のボラティリティーを収束を図り、トランプ大統領が対中交渉チームに「取引成立」を命じたとの臆測もある。だが中国側が譲歩に最も傾いているこの時期、それは米中関係を大きく再構築する歴史的好機を逃すことを意味し、あまりにも安易な解決策だ。

  「水は舟を載せまた舟を覆す」とのことわざが中国にある。中国経済が今陥っている苦境はまさにこれだ。過去10年にわたり景気を支えてきた債務は、今や重荷だ。2008年の金融危機時に中国が打ち出した4兆元(現行為替レートで約65兆円)のインフラ計画は、世界経済をリセッション(景気後退)から救ったとされている。だがこのインフラ整備を通じた刺激策は終わらず、中国国家統計局によれば、17年までに14兆元規模に膨らんだ。

  銀行のみならずシャドーバンキング(影の銀行)の資産も対象にした中国人民銀行(中央銀行)などさまざまな機関からのデータに基づく広範な指標によれば、中国の与信総額は48兆ドル(約5309兆円)と国内総生産(GDP)の約3.7倍。中国の経済規模は米国より37%小さいにもかかわらず、米国の24兆ドルを上回る。

  工業生産や自動車販売、小売売上高、投資といった経済データは全て最近12カ月で数年ぶりの低水準に落ち込んだ。前回の刺激策効果が薄れ、債務負担が引き続き経済の下方スパイラルの要因となっている。中国株がここ1年で大きく値下がりする中で、世界はようやく過剰なレバレッジを抱えた中国金融システムの危険な立ち位置に目覚めつつある(このコラム執筆者の1人が最高投資責任者=CIO=を務めるヘイマン・キャピタル・マネジメントが、人民元のポジションを持っていることを開示しておく)。

  米国の交渉チームが中国に要求している重点項目は2つだ。第一は米国製品の購入を増やすことであり、2番目は中国国有企業が有利になるよう補助金をばらまいたり、国内市場を保護したり、規制に格差を設けたりするといった産業政策をやめることだ。だが最初の項目に焦点を絞り込むことは間違いだ。米国で最も価値ある仕事を支えている米経済の進化した分野をいずれ浸食し、米国の長期的利益促進にはつながらず、極めて複雑な問題を短期的に繕うだけだ。

  関税率引き下げと外資規制の調整は良いことかもしれないが、それでは米経済に年3000億ドル以上の損失を与えていると米政府が試算する中国の経済スパイ活動・窃盗という長期にわたる政策は終わらないだろう。20年余り前から幾つもの米政権がこの問題で中国に対応を求めてきたが、米国へのコミットメントで実行されたものはまれだ。スパイ活動・窃盗をやめ、そうした盗みの法的・金銭的な影響を認めるとの中国政府からのコミットメントが米国には必要だ。トランプ政権はこれを肝に銘じ追求し続けるべきであり、中国の振る舞いが恒久的に変化するまで協議を終えてはならない。

  中国は共産党が関与している大手国有企業と同じ権利を外国企業にも付与すべきだ。補助金などに基づく現在の重商主義的システムは解体する必要があるが、中国がこれまでに示した譲歩はコミットメントを欠いている。

  トランプ政権は、自らが今持つレバレッジを十全に理解しなければならない。先送りされている追加関税賦課を巡る交渉期限である3月1日以降はそうしたレバレッジがさらに働き、米国はかつてないほど強力なてこを得る。この好機を生かせなければ、トランプ政権だけなく欧米にとっての大失策となるだろう。

  (カイル・バス氏はヘイマン・キャピタル・マネジメントを創業したCIOで、ダニエル・バビッチ氏は同社のマネジングディレクターです。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Trump Has China Where He Needs It: J. Kyle Bass and Dan Babich(抜粋)

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