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日銀は追加緩和で「やったふり」、年前半に95円のリスク-長井元局長

  • 安倍政権との関係からも何もやらないというのはないだろう
  • 金融政策の反応関数の「最重要変数は為替相場であり続けてきた」
General Views of the Bank of Japan Headquarters Ahead of Monetary Policy Meeting
Photographer: Akio Kon/Bloomberg
General Views of the Bank of Japan Headquarters Ahead of Monetary Policy Meeting
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

元日本銀行国際局長の長井滋人氏は、ドル・円相場が今年前半に1ドル=95円程度まで円高になる可能性があり、その時、日銀は追加緩和に踏み切るとみている。

  長井氏は4日のインタビューで、海外経済は年後半には回復局面に戻るとみているが、その間、米中貿易摩擦や中国経済への懸念などから「円が安全通貨として買われる可能性は十分高い」と指摘。年前半に95円程度まで円高が進むリスクは「否定できない」と述べた。

  そのくらい極端な円高になり、株価も崩壊するような時に、「安倍政権との関係からも、日銀が何もやらないというのはないだろう」と語る。緩和手段や政策効果は限られているものの、フォワードガイダンス(政策金利の指針)の強化や指数連動型上場投資信託(ETF)の買い増し、マイナス金利での貸し出しといった金融機関への補助金をつなぎ合わせて、「やったふりをするのだろう」とみる。

ドル・円相場の推移

  ブルームバーグが1月10-15日にエコノミスト50人を対象に実施した調査で、今後円高が進行した場合にどの水準で日銀が追加緩和を行うか尋ねたところ、回答した39人の水準は90円~103円で中央値は98円となった。長井氏は95円と回答した。追加緩和の効果に関しては「ない」(53%)が「ある」(47%)を上回った。

  長井氏は東大経済学部を卒業後、1986年に日銀に入行し、欧州統括役や国際局長を歴任した。2017年にオックスフォード・エコノミクスに入社、在日代表を務める。「日銀に入行して以降の日本経済の歩みを振り返ると、一貫して為替相場の動きに翻弄(ほんろう)されてきた感が強い」と指摘。日銀の金融政策の「反応関数の最重要変数も為替相場であり続けてきた」と語る。

  黒田東彦総裁の就任以降の金融政策については、為替という企業経営者が一番気になるところで「市場に翻弄されて過度の円高になるような状況には戻らない」とのメッセージを繰り返し発することにより、「大きな安心感を与えた」と評価する。

  ただ、サプライズで市場を動かし、人々や企業のマインドを変えようとしたため、「長期戦になったからといって、市場のことは気にしないという姿勢に転換することはあり得ない」と指摘。一度、為替や株式市場を金融政策のツールとして最大限使おうと思った時点で「それに付き合い続けないと、しっぺ返しを食らうことは逃れられない。宿命として背負っている」と語る。

  日銀にとって100円が大きな分水嶺(れい)になるとも指摘する。黒田日銀の下で極端な円高にはならないという安心感がある中で、「それが揺らいでしまう水準が100円を切った水準だ」と語る。100円を割り込むと「市場に振り回され、もっと円高になってしまうという恐怖心を皆が感じ始める。その時、株価も揺らぐだろうし、実業界からの政策要望が相次ぐだろう」とみている。

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