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リーマンショック後の利下げ、「白川日銀」内で対立鮮明-08年議事録

  • 米欧6中央銀行が協調利下げ、日銀は見送り急激な円高・株安が進行
  • より積極的な行動求める民間委員に対し、白川総裁は市場機能を重視

日本銀行は29日、2008年7月から12月に開いた金融政策決定会合の逐語記録である議事録を公表した。リーマン・ブラザーズが9月15日に破綻し、世界経済は金融危機に突入。急激な円高と株安に襲われる中、より積極的な行動を求める民間出身の審議委員と市場機能を重視する白川方明総裁との対立が先鋭化していたことが分かった。

  リーマン破綻直後の9月16、17日の会合で、市場動向を説明した中曽宏金融市場局長は「リーマンの破綻で一変し、緊張感が今日の朝から一挙に高まっている」と危機感を表明。10月6、7日の会合では、門間一夫調査統計局長が「現在なお景気後退局面にはないと思うことは相当難しくなってきている」と景気の変調に言及した。

  リーマンショック前まで1ドル=100円近辺で推移していた円ドル相場は100円を突破。日経平均株価も1万2000円台から8000円台に急落した。しかし、白川総裁は同会合で「やや長い目でみた場合には、物価安定の下での持続的な成長経路に復していくのがわれわれの標準的な想定である」と述べ、静観を続けた。

協調利下げ

  米欧6中央銀行は10月8日に協調利下げを実施。日銀は14日に臨時会合を開いたが利下げは見送った。白川総裁は会見で、金利変更が「自国の経済の状況に照らして適切であればもちろん変更すべき」だとしつつ、「自国の状況に照らし望ましい行動でないにもかかわらず、協調すること自体が自己目的化してしまい、それが協調利下げあるいは協調利上げというのであれば、そうした考え方はとらない」と述べた。

2008年10月31日の日銀金融政策決定会合

2008年10月31日の日銀金融政策決定会合

Source: Pool via Bloomberg News

  利下げ見送りを受け、円ドル相場は90円に向けて高騰を続け、日経平均株価は7000円台前半まで下落。日銀はついに10月31日、政策金利を0.2%引き下げ0.3%とする利下げに踏み切った。

  同会合では、三菱商事出身の亀崎英敏氏が「出し惜しみしているとか、みられるべきではない」と0.25%の利下げを主張。「金利の引き下げによって金融市場の機能がさらに低下してしまうと、本末転倒になってしまう」として小幅の利下げを主張する白川総裁と対立した。4対4の可否同数となったため、議長である白川総裁が決する形で0.2%となった。

  午後0時半過ぎの発表後、票数が真っ二つに割れたことで円相場が乱高下。利下げ幅が争点だったことは3時半の総裁会見まで明らかにされなかった。みずほ銀行出身の野田忠男審議委員が「反対と伝わると、市場も空いている時に相当市場に与える影響というか、 受け止め方が違ってくる」と対応を求めたが、白川総裁が「単純に記者会見で私が言うことが一番すっきりして良い」と押し切った。

  11月20、21日の会合ではこの対応について、野田委員が「政策決定を正確に市場に伝達するというコミュニケーションの基本からみて極めて残念」と批判。商船三井出身の中村清次審議委員も「総裁の記者会見までの間、市場関係者は利下げに対し4人の委員が反対したと誤解したようであり、コミュニケーションに若干問題を残したのではと危惧している」と苦言を呈した。

「利下げに多少ちゅうちょ」

  利下げにも関わらず、リスク回避の動きから円ドル相場は12月中旬には80円台に突入。日銀は同月19日の会合で政策金利の0.1%への引き下げや、長期国債の買い入れ増額、コマーシャルペーパー(CP)の買い入れなど追加緩和を実施したが、ここでも政策委員会での対立が続いた。

  市場機能を重視する白川総裁の主張を代弁する形で、山口広秀副総裁が「さまざまな策とともに金利引き下げまで一挙に打ち出していくことが適当なのかどうか、この点についても若干の気掛かりが残る」と発言。「正直言って、 金利引き下げには多少ちゅうちょせざるを得ない面がある」と述べ、利下げに慎重姿勢を示した。

  これに対し、亀崎委員が「やらねばならないことを、過去にこだわらず白紙から考え、強い信念の下で迅速かつ積極果敢に手を打つことが今、本行が日本経済に求められている」と主張。中村委員も「現時点でできることはやはりやっておいた方が、企業などの不安心理を少しでも和らげることに役立つのではないか」と利下げを主張した。

  白川総裁は「過去の経験からすると、中央銀行に対する過大な期待、 あるいは過大な要請というものが出やすかったということもこれまでの幾多の歴史が示す通り」と指摘。「結果として、それが後々問題を引き起こすこともなかったわけではない」と述べたが、民間審議委員に背中を押される格好で追加利下げが決まった。

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