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【コラム】新冷戦、米中二股の商売狙うなら大負けも-コーエン

  • 米中が共通の意識で築いた関係が損なわれ続けたのが2018年
  • こうしたことが今年も来年も最も重要なニュースになるのを懸念

米国と中国が異なる政治・経済秩序を築き上げようとする新たな冷戦のただ中にいるのがわれわれだ。米中2陣営にインターネットは二分され、米テクノロジー企業の中国からの締め出しが続くだろう。第5世代(5G)通信網構築で華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)が直面しているように、中国のテクノロジー企業は欧米での契約や販売は難しくなる。

  米国は中国からソーラーパネルを買うべきではないという話すらある。ソーラーパネルが米国民を監視している可能性は高くないにしろ、リスクを避けたい企業や米国防総省との契約をすでに結んでいる企業は、中国以外からの調達が無難だと感じるようになるだろう。海外からの投資案件を審査する米国の対米外国投資委員会(CFIUS)はもはや、国家安全保障と先端テクノロジーという点で慎重な扱いを要する国内産業への中国からの投資を歓迎していない。

  アップルの「iPhone(アイフォーン)」は米企業による最大級の輸出成功例の1つだったが中国での売り上げは減少。景気減速のせいにもできるが、安い中国ブランド製品が「十分に良い」こととセキュリティー絡みの問題や愛国心が重なる中で、長期的には恐らくアップルはすでに中国でピークを付けたとも言える。

  影響は製品のみならず人的交流にも及ぶ。中国は国有企業の社員に米国とその同盟国への出張を避けるよう呼び掛けた。華為創業者の娘である最高財務責任者(CFO)がカナダで逮捕され米国に引き渡されるかもしれないというこの時期、あなたが米国もしくはカナダのテクノロジー企業幹部なら、今すぐ中国に出張するだろうか。ミシガン大学をはじめとする多くの米大学は誘致した中国政府の文化機関孔子学院」の閉鎖に動いている。中国人留学生を孔子学院がスパイしているとの主張が背景だが、真偽はともかく、信頼崩壊の新たな兆候だ。

  急速な脱グローバル化の時代において、少なくとも部分的には米中が共通する目的意識で築き上げてきたこれまでの関係が損なわれ続けたのが2018年だった。今振り返ると、これが昨年最も重要な出来事だったことがはっきりしたように思える。事態がより悪化することは容易に想定できる。ビジネスと政治を巡りわだかまりがくすぶり続けるだろう。中国のネット検閲「万里のファイアウオール」の向こう側に香港が組み込まれてしまう可能性もある。

  ニュースのヘッドラインは関税と短期的な米中貿易戦争に焦点を絞る。だが問題は商売の話ではない。地政学だ。結末が米中の大戦争になると必ずしも私が思わない理由は、そうした衝突が全ての関係国にとってあまりにもコストが大き過ぎるということでしかない。それでも例えば周辺国・地域、恐らく台湾に対して中国が軍事的に動くか脅しをかける可能性はたやすく想像し得る。アフガニスタン侵攻後の旧ソ連のように中国が国際的に孤立するかもしれず、そうなればデリンキング(切り離し)の基本パターンが固まる。

  この過程で米国が大負けする公算は小さい。中国製品の値上がりは米消費者には痛手だが、ベトナムやバングラデシュなどの低賃金国への生産委託を加速させる。その上、中国と比べ米国には強い同盟国が多く、地政学的な争いが激しさを増す中で米国はさらに好位置につけることになる。

  最も大きく負けるのは、米中いずれとも強い商売関係の維持を望む国だろう。例えばドイツやシンガポールかもしれない。相対的にはまだ貧しい中国は不況に入りつつあるようだ。不安定な政治の歴史のある国でもある。つまりは中国は米国よりはずっともろい。私が抱く最大の恐れはこうした全てが19年のみならず20年も最も重要なニュースになるということだ。

  (タイラー・コーエン氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。ジョージ・メイソン大学の経済学教授で、ブログ「Marginal Revolution(限界革命)」を執筆しています。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:U.S.-China Cold War Will Worsen Before It Improves: Tyler Cowen(抜粋)

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