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【コラム】対中テクノロジー「冷戦」なら傷付くのは米国-ブラウン

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  • 現代のテクノロジーはほぼ全て軍用にも民用にも使用可能
  • テクノロジー窃盗巡り全産業規制ではなく個別企業罰する方が妥当

キューバ危機のあった1962年、ソ連(当時)の石油パイプラインを東欧につなげるプロジェクトを阻止しようと米国は同盟国の結集を図った。西ドイツは高品質の鋼管を提供しないことに渋々合意したが、英国とイタリア、日本は米政府の主張を受け入れず、「フレンドシップ」と呼ばれるこのパイプライン事業は多少遅れたが進められた。欧米間のきしみが露呈しただけでなく、米国にとってさらに悪いことに、鋼管の自給体制が不可欠だとソ連に認識させた。

  米国は今、最先端テクノロジーへの中国のアクセスを止めようとしている。戦略的な競争相手の台頭を妨げようとする過去の米国の取り組みと似ているかのように、テクノロジー「冷戦」と軽々しく口にする向きも多い。そうした前提はソ連とは似ても似つかない中国経済を曲解するだけでなく、米ソ冷戦そのものを全く間違って解釈することにもなる。

  米ソ冷戦から得た重要な教訓は、テクノロジーの囲い込みと競合国への輸出阻止は極めて困難だということだ。経済のグローバル化がはるかに進んだ現在はあまりにも複雑で、米国が中国との間で冷戦を再現しようとするなら、米経済そして同盟・友好国の経済も、中国以上ではないにしろ、同程度に傷を負うだろう。

  世界中が核戦争の恐怖におののいていた1962年でさえ、米政府の真の狙いはソ連が西側市場で石油を安値で売りさばくことを防ぎ、米大手エネルギー各社の利益を守ることだと欧州諸国はシニカルに捉え、そうした懐疑的な見方は米国と同盟国の関係に何年も付きまとった。対ソ制裁で問題となったのは、軍事のハードウエアというより、軍用にも民用にも使えるテクノロジーだった。自由貿易の原則と安全保障を巡る正当な懸念は相いれなかった。

  中国を標的に、冷戦期に資本主義陣営が設けた対共産圏輸出統制委員会COCOM(ココム)をほうふつとさせるような動きが米政府や議会で進行中だが、現代のテクノロジーはほぼ全て軍用にも民用にも利用できる。人工知能(AI)は生産現場でも戦場でも使えるし、ドローンは郵便だけでなく爆弾やミサイルも運べる。
   
  米国の対中制裁が広範に適用されればサプライチェーンが混乱に陥るとアジアの製造各社は戦々恐々だ。中国で組み立てられる電子製品には米特許が広く使われ、米シリコンバレーには日独含む世界の企業が中国市場への導入を視野に自動運転車など新技術を育てようと集まる。中国への技術移転を止めれば、米国でのイノベーション(技術革新)を損ねるリスクがある。

  中国はソ連ではない。AIを含むテクノロジーの多くの分野で中国はすでに米国と肩を並べようとしており、冷戦を読み誤れば必然的に政策ミスを招くことになる。

  安全保障については、脅威と共に米経済への悪影響を最小限にするための的を絞ったアプローチが必要だ。クリントン政権時代の国務省幹部スーザン・シャーク氏が提案するのは、長距離レーダーなどその分野で負ければ米国の国家安全保障が危うくなるテクノロジーを範囲を狭めて定義し、それを徹底的に守るというものだ。同様に、全産業を対象に包括的な措置に訴えるのではなく、テクノロジーを盗み出すことで利益を得ている個々の中国企業を罰する方が妥当だ。

  とりわけ、米国は自らの産業競争力に照準を定めるべきだ。中国テクノロジー産業への米国人投資家のパイオニアの1人であり、ベンチャーキャピタルの啓明創投を創業したゲーリー・リーシェル氏は「中国封じ込めに投じる資金全てを米国の研究所とイノベーションセンターに投じるべきだ」と指摘し、「米国は守りがうまくない」と続けた。

  (アンドルー・ブラウン氏はブルームバーグ・ニューエコノミーフォーラムの編集ディレクターで、ブルームバーグに入る前はウォールストリート・ジャーナルの中国エディターと上級特派員、コラムニストをしていました。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:How the U.S. Could Lose Tech Cold War With China: Andrew Browne(抜粋)

    This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.

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