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【コラム】習国家主席の「夢」、最大の敵は自分自身ーフィックリング

  • 自給自足を目指した時代の「自力更生」という言葉を習氏は多用
  • 「中所得国のわな」、回避できるのは政府が国民を信じてこそ

中国の経済的台頭を止めることで米国の優位性維持を狙うのが、トランプ政権内の対中強硬派だ。中国の習近平国家主席が米国と同じゴールを目指しているように見えるのは奇妙なことだ。

  中国が今直面する問題は、イノベーション(技術革新)に欠け賃金上昇が競争力を損ねるなどして高所得国の仲間入りができないという「中所得国のわな」だ。中南米諸国や旧ソ連、中東の大国は日米欧との経済格差を埋められなかった。アジアでは比較的小さな経済規模のシンガポールと香港、台湾、韓国がこのわなを回避している。

Stuck in the Middle With You

Singapore, Hong Kong, and South Korea are rare exceptions to the rule that emerging economies struggle to graduate to high-income status

Source: World Bank

Note: Shows gross national income per capita. The World Bank currently defines middle income countries as those with GNI between about $1,000 and $12,500.

  中国の経済政策当局がこうしたリスクを認識しているのは確実だ。アジア開発銀行向けの2017年の報告書によれば、欧米の怒りを買っている「中国製造2025」は中所得国のわなを避けるために付加価値の高い輸出産業群を築き上げようという試みにほかならないようだ。アジア開銀関係者による12年の論文は、多くの輸出だけでは十分ではないとしている。テクノロジー開発の好循環を促すような最先端を行く多様な製品が必要だという。

Long March

China has grown into an upper middle income economy, but it's a still far from joining the higher income club

Source: World Bank

  これこそが習主席が中国を間違った方向に導きつつある政策だ。その種の輸出セクター構築は予測不可能で、多様な民間企業による無数の異なるアプローチがある場合にのみ最も良く機能する。だが習主席は民間セクターの利点を軽視し、硬直化した大手国有企業を常に重視している。

  中国が自給自足を図った「大躍進政策」で毛沢東初代国家主席が使っていた「自力更生」という言葉を習主席は好む。正反対の政策である鄧小平氏が推進した開放改革を称賛する演説でさえこの言葉を用いる。

  単なるレトリックではないようだ。政府の統計によれば、18年1-11月の民間企業による固定資産投資は3年前と比べ18%増。国および国有企業のペースは倍の36%増だ。17年末時点の公的固定資産支出は5年前から88%増えたが、国有企業の増益率は17%にすぎなかった。このギャップは特に懸念すべきで、生産性の伸び悩みは中所得国のわなに陥る重要な因子だ。

Profit Motive

Profits by China's state-owned enterprises have risen, but not dramatically

Source: China Ministry of Finance, Bloomberg Opinion calculations

Note: February figures have been averaged over January and February, as January figures aren't available.

  中国台頭の原動力となってきた都市部における膨大な労働力はほぼ尽きたようで、労働者は減少している。1人当たりの資本ストックは14年時点でまだ韓国の1990年代後半の水準程度だった。中国農業銀行のチーフエコノミストを務めていた向松祚氏は北京での先月の講演で、2018年の中国経済は辛うじて成長したもようだが、「長期の非常に難しい時期」に直面していると述べた。

  中国は今、成長エンジンをふかし続けるため、あらゆる側面を強力に後押しする必要がある。だが習主席の自力更生政策は中南米諸国が戦後に選好した輸入代替工業化政策に一段と似つつある。

  これまで多くの経済が直面した中所得国のわなを逃れる力を秘めた中国だが、その実現は生産的な国民の才能を政府が信じてこそだ。今世紀半ばまでに「豊かで強力な国」になるという習主席が掲げる「中国の夢」の最大の敵はトランプ米大統領ではない。習主席自身だ。

  (デービッド・フィックリング氏は商品および工業・消費者向け製品企業を担当するブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。同氏はブルームバーグ・ニュースやダウ・ジョーンズ、ウォールストリート・ジャーナル、フィナンシャル・タイムズ、ガーディアンで記者をしてきました。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Xi’s Leading China Toward Economic Stagnation: David Fickling(抜粋)

    This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.

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