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投資家も地政学から逃れられず-スマホ市場、相互依存から分断へ

  • アップルCEOら称賛の相互依存は武器にもなり得る
  • 米政界の対中強硬派は華為とZTEに絡み「死刑」に言及

米アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)は昨年5月の決算発表時、トランプ米大統領が中国に仕掛けた貿易戦争について懸念していないと投資家に伝えた。世界2大経済大国の結び付きは極めて強く、どちらかが一方を本当にたたこうとすることなどできないと説明した。だが今年1月2日の米市場終了後、クックCEOはこれまでとは異なるメッセージを発した。

  アップルは15年ぶりに売上高見通しを下方修正。その理由としてクックCEOが挙げたのはトランプ政権の貿易政策がもたらした中国での「iPhone(アイフォーン)」需要への悪影響だ。アップル株は急落。グローバル化反転の可能性が突然浮上し、世界中の投資家が売りに回った。

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ブルームバーグ・ビジネスウィーク(2019年1月14日)

撮影:Bloomberg BusinessweekのByran Schutmaat

  アップル投資家への教訓があるとすれば、誰も地政学から逃れることはできないということだ。中国側の投資家はすでに承知だろう。中国の2大電話・通信機器メーカー、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)と中興通訊(ZTE)に中国政府が「バックドア」と呼ばれる情報の抜け穴を通信機器に施すよう強いているとの懸念から、米国は同盟国に対しこれらの両社の製品を使わないよう働き掛けている。両社は一切のスパイ活動を否定しており、中国ではトランプ政権の真の政策目的は経済競争の妨害だと一般的に信じられている。

  対イラン制裁に違反したと主張する米国の要請に基づき、華為の孟晩舟最高財務責任者(CFO)が先月カナダで逮捕された。だがそれより先に、ZTEにはイランと北朝鮮への輸出に絡み米国からの技術購入の7年間禁止という制裁が発動された。事業活動のほとんどが停止に追い込まれたZTEだが、罰金支払いなどの条件を受け入れ制裁解除に至った。

  クックCEOら世界のテクノロジー企業幹部がしばしば称賛する相互依存は武器にもなり得る。米政界の対中強硬派は華為とZTEに絡み「死刑」に言及し始めた。ヘリテージ財団のディーン・チェン上級研究員は「ZTEの頭にはまだ縄がかけられている」と指摘する。

  ZTE創業の物語は、国の防衛産業界で働いていた侯為貴氏による1980年台半ばの米国への旅から始まった。中国に戻った侯氏は西安にある政府の航空宇宙関連施設に配属された。2016年に引退し今は70歳代後半の侯氏は国営の新華社通信との13年のインタビューで「中国は自国の通信機器メーカーが必要だと極めて強く確信していた」と語った。侯氏は同僚らと1985年にZTEを創業。87年にネットワーク機器の開発に乗り出し、97年に上場を果たした。同社はウェブサイトで、国が保有し民間が経営する新たなビジネスモデルの会社であり、日常業務に政府は関与していないとうたっている。

2017 Revenue

  だが米国が中国企業の説明による社歴をうのみにすることは決してない。米下院情報特別委員会は2012年の報告書で、「入手可能な機密および機密扱いでない情報に基づくと華為とZTEが外国政府の影響を受けないと信じることはできず、よって米国とわれわれのシステムに安全保障上の脅威となる」と記している。

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ZTE・USAの本社(テキサス州リチャードソン)

写真家:Bloomberg BusinessweekのByran Schutmaat

  ZTEにとって猶予は一時的かもしれない。制裁解除に反対する共和党員もいたし、 マルコ・ルビオ(共和、フロリダ)、クリス・バンホーレン(民主、メリーランド)両上院議員はZTEによる米制裁への違反が見つかれば直ちに米技術購入禁止を復活させる法案を導入した。

  元米国務省のサイバーセキュリティー専門家で今は米戦略国際問題研究所(CSIS)に協力しているジェームズ・ルイス氏は、欧米のテクノロジーに本当に頼らないようになるにはまだ数年を要するため中国企業は脆弱(ぜいじゃく)だと指摘する。ZTEへの制裁は中国側の「米国のテクノロジーから脱却したいという願いを加速させた」とも分析。すでに中国国内で米国製テクノロジーに反発する兆しもあり、華為CFO逮捕後にアップル製品ではなく華為のスマートフォンを選ぶよう従業員に金銭的な奨励策を提供した中国企業もある。

  米国内でのイメージ回復にあまり期待していないのか、華為はワシントンでのロビー活動をほとんど取りやめた。対照的にZTEは18年にそれまでの3年間の合計より多いロビー活動費を投じた。同社はまた国家安全保障上のリスクを巡る同社製品への米国内の懸念評価でジョゼフ・リーバーマン元上院議員を起用。これに対し、20年の大統領選挙への立候補が有力視されているエリザベス・ウォーレン上院議員(民主、マサチューセッツ)は厳しい批判を浴びせた。

  同議員のように、米政治家の多くは中国のテクノロジー企業を巡る対応をすでに決めているようだ。昨年5月の議会公聴会で、アナ・エシュー下院議員(民主、カリフォルニア)は米国の通信から中国製機器をなくすコスト試算を専門家に問い、「われわれは一切彼らに依存しないシステムを持ちたいと考える」と語った。

(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)

原題:The Trade War Is Putting the World’s Smartphone Makers in Danger(抜粋)

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