コンテンツにスキップする

政府が基幹統計全体を総点検へ、勤労統計の不適切調査の影響拡大

更新日時
  • 内閣府はGDP統計で雇用者報酬の再推計発表-厚労省再集計受け
  • 雇用保険など567.5億円追加給付、19年度予算案に計上の方針

厚生労働省が賃金や労働時間の動向を把握する毎月勤労統計の調査を不適切な方法で実施していた問題で、政府は56ある基幹統計全体を総点検する方針だ。菅義偉官房長官が11日の会見で表明した。内閣府が国内総生産(GDP)統計の再推計を発表するなど、他の主要統計にも影響が波及している。

  菅義偉官房長官は「統計の信頼性を損なう事態が生じたことは甚だ遺憾だ」とした上で、「失業給付などへの影響を含め国民に不利益が生じないように対応に万全を期し、原因究明と再発防止に取り組みたい」と述べた。政府は雇用保険などを過去にさかのぼって追加給付する必要が生じ、2019年度予算案に必要額を計上する方針。

  厚労省は同日、04年以降の勤労統計で全数調査すべきなのに一部抽出調査で済ませていたため、賃金額が実際より低くなっているとし、必要なデータが存在する07年以降を復元して公表した。それによると、試算可能な12ー17年までの「決まって支給する給与」の再集計値と公表値との誤差は平均で0.6%だった。雇用保険などの追加給付の対象者数は延べ1973万人で、総額約567億5000万円に上るとしている。

  根本匠厚労相は記者会見で、勤労統計は「政策立案や学術研究、経営判断の礎として正確さが求められる」として謝罪した上で、「組織的隠ぺいがあったという事実は現段階ではないと思っている」と述べた。

  勤労統計は、労働経済情勢を示す重要な指標として、GDPの推計にも使われている基幹統計の1つ。内閣府は同日、厚労省が勤労統計の再集計値を公表したのを受けて、雇用者報酬を再推計すると発表した。昨年12月25日に公表した17年度GDP統計年次推計(フロー編)の一部計数の改定を行い、再推計結果を1月下旬をめどに公表する予定。

  政府の月例経済報告のほか、日本銀行の経済・物価情勢の展望(展望リポート)にも、雇用・所得環境や家計支出の説明で図表などの原データとして活用されている。日銀は「今回の件がどのような影響を及ぼすかについては、本日公表された資料と今後の調査結果に基づき精査していきたい」(広報課)としている。

  勤労統計は毎月、厚労省が都道府県を通じて実施しており、従業員5人以上の事業所が対象となっている。問題があったのは東京都分で、500人以上の場合は全事業所を調査したと公表しながら実際は抽出調査を行っていた。

  JPモルガン証券の足立正道シニアエコノミストは、「この問題で一番大きいのは信頼の喪失。このデータをもう信用できなくなってしまった。本当に賃金に何が起こっているか分からないので、日銀に対してこれだけの緩和をしていても賃金上昇には至っていないという議論ができなくなってしまった」との見解を示した。

(日銀のコメントを追加して更新しました.)
    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE