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秘密の子どもたちが声を上げ始めた-中国「一人っ子政策」残酷物語

  • 子ども2人なら罰金や強制的な中絶、それに公務員なら解雇など
  • 「後にも先にもこんなことを経験しなければならない世代はない」

中国が1970年代に導入した「一人っ子政策」は社会構造を根本的に変え、ようやく終わった。出産を制限する世界最大の社会実験に人知れず苦しんできた両親や子どもたちが今、声を上げつつある。
 
  共産党はこの産児制限政策により人口4億人が抑制されたと主張するが、学術関係者はそうした試算は過大だと指摘する。生活レベルの向上や教育水準上昇、それに女性の社会進出で、政府の干渉がなくとも出生率が徐々に低下しただろうとみているためだ。

Fertility Rate, Births Per Woman

Data: World Bank

  2人以上の子どもを持てば多額の罰金や強制的な中絶、それに公務員なら解雇などに直面するが、それでも国の出産計画に従わないことを選んだ中国人もいる。一人っ子政策導入後、「違法」に生まれた子どもの総数に関する信頼できる推計はないが、数百万人でないにしても何十万人にも及ぶ可能性が高い。

  「公共政策は国民が理解し支持した場合のみスムーズに進められるが、そうでなければ強制もしくは暴力に頼ることになる」と張治湖さん(54)は話す。2人目の子どもを持った張さんは2012年、教職から解雇された。「出産制限政策がまさにそれに当てはまる」。

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謝先梅さん

撮影:Qilai Shen / Bloomberg

  中央政府が地方当局に対して人口の抑制が地方行政の業績を図る重要な指標だと伝えた数日後、四川省で2人目の子どもとして生まれたのが謝先梅さん(28)だ。地元の家族計画局は謝さんの両親に地方住民の平均所得の12倍超に相当する8500元(約13万5300円)を支払うか謝さんを手放すかどちかを選ぶよう命じた。
  
  謝さんは結局、官僚用語で言う「再配置」となった。200元を支払った男性の下で育てられたのだ。この男性は豚2頭を売って資金を調達した。父子家庭で育ち「拾われっ子」などと言われ、いじめに苦しんだ謝さんは14歳で学校を辞め、国中を転々としながらさまざまな仕事に就いた。家族再会を取り上げるテレビ番組を見た謝さんは13年、四川省達州市の生みの親を見つけ出す決心をした。
 
  「私は捨てられたのか」と常に悩んでいたが、そうではないことが分かった。だが今は同じ市に住む母親だが、本当の親子の間で愛情を持てないのではないかという新たな恐れを感じている。結婚して1歳の子どもを持つ謝さんは「私たちは他人のようで、それについてはあまり話したくない」と胸の内を明かした。

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郭春平さん

撮影:Bloomberg BusinessweekのYan Cong

  江西省の公務員だった郭春平さん(42)は2人目の子どもを持つと決めたことでキャリアを犠牲にした。一人っ子を失った両親の葛藤について読んだ郭さんは「私の一人娘に何か起こったらどうすればいいのかと自問した」と言う。2番目の娘が生まれる前から脅された。地元の家族計画当局者から中絶を迫られたのだ。人工中絶は一人っ子政策の中核手段だ。

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郭春平さん

撮影:Bloomberg BusinessweekのYan Cong

  郭さん夫妻はその要求を拒否。だが罰金12万4000元を支払っただけでなく、地元の財政局から解雇された。書面の説明と補償を求める要求は無視され、年収8800ドル(約96万円)の中学教師となった。地元で数学を教えているが、収入は約40%減った。農村で医者をしている妻の所得はその半分だ。

  一人っ子政策に逆らったとして解雇された公務員は何十年にもわたり補償を求め続けている。「もう1人生まれたからといって、働く権利を剥奪すべきではない」と郭さんは述べる。

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陳嘉さん

撮影:Bloomberg BusinessweekのSim Chi Yin

  予定外の子どもが生まれた場合、親族や隣人にその子を託してきた中国人は数知れない。陳嘉さん(23)もそうした1人だ。広東省の親族に育てられた陳さんは、定期的に深圳市からやって来る「おばさんとおじさん」が実の両親であることをずっと知らなかった。

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陳嘉さん

撮影:Bloomberg BusinessweekのSim Chi Yin

   両親が出生の秘密を伝えたのは陳さんが6歳の時。深圳に移り住むことになったが、自分を「お客さん」でしかないように感じ、なじむことが難しかったと語る。

  今はロンドン芸術大学でドキュメンタリー映画について学ぶ陳さんは、中国のソーシャルメディア「知乎」で「シークレットチャイルド」というグループを主催。生みの親と育ての親のインタビューをまとめた15分の動画を制作し、一般公開しているものの、アクセスは制限している。両親がまだ公的な仕事に就いているためだ。

  「僕たちの物語は語られなければならない。僕たちの後にも先にもこんなことを経験しなければならない世代はないだろう。政策を批判しているのでもなければ、政府を非難しているのでもない。ある時代に起きた出来事を記録したいだけだ」と話してくれた。

(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)

原題:China’s Secret Children Step Out of the Shadows to Share Stories (1)(抜粋)

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