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【コラム】トランプ大統領、FRBに永続的打撃か-ティム・ドイ

  • 大統領は危機を誘発するとともにその対処に必要な機関を弱体化も
  • 事態がどれほど緊迫しているか過小評価すべきではない

トランプ米大統領はクリスマスイブのツイッターで、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長をあらためて目の敵にする考えを示した。ムニューシン財務長官はパウエル議長解任を示唆したことはないと大統領が語ったとツイートしたが、大統領は矛を収めるつもりはないと見受けられる。

  トランプ大統領がパウエル議長を解任しようとした場合、どのような事態になるかについて、われわれはシミュレーションを始める必要がある。それは端的に言って完全な混乱をもたらす公算が大きい。

  FRB議長解任の法的枠組みは引き続き議論が分かれる問題だ。連邦準備制度の歴史に詳しいペンシルベニア大学ウォートン校のピーター・コンティブラウン准教授は、大統領がパウエル議長を単なるFRB理事に降格させようと試みる可能性を指摘する。それでもまだ、パウエル氏は政策金利を決める連邦公開市場委員会(FOMC)の議長ポストにとどまる可能性がある。こうした状況に金融当局がどのように反応するかは不透明だ。

  私見では、市場参加者にとって最善のシナリオは、パウエル氏がFRB議長および理事の座を退き、クラリダ副議長がその後任になるというものだ。その場合、株価は下落し、恐らく急落する恐れもあるが、米国債相場は急上昇する。クラリダ氏率いる当局者は2019年1月29、30日に予定されているFOMCもしくは、それに先立つ緊急会合開催で利下げに踏み切ると想定される。その結果、相場は好転し新体制への移行も急速に進み、ウォール街の変動の影響が実体経済に及ぶことはないだろう。

  最悪のシナリオはFRB側が一歩も譲らず、中央銀行としての独立性を守るための方策として、法廷でトランプ大統領と争う選択をした場合だ。そうした事態になれば、いつまでも収拾に至らないまま金融市場に「リスクオフ」の流れが続き、最終的には実体経済にも害が及ぶようなダメージを経済全般に引き起こすことになるだろう。

  だが最善のシナリオの下であっても、連邦準備制度は損害を免れることはなく、既に痛手を被っているとも言える。市場や経済への打撃を和らげる何らかの行動が現段階で金融当局によって講じられれば、それはいずれもトランプ大統領の要求に屈したのにすぎないような印象を与えるリスクがある。換言すれば、大統領のばかげた行動によって金融当局の対応を必要とする不確実性が生じれば、独立性の体裁は失われる恐れがあるのだ。

  このため今後何が起きるにせよ、われわれは今や危険かつ未知の領域に入ってしまったことになる。将来の金融危機に効果的に対処する能力が政府にあるかどうか明らかでないため、連邦準備制度は前回の危機の際よりも大きい役割を果たす必要があろう。しかし、大統領がもたらしたダメージによって、当局は以前よりも効果的な政策対応ができなくなる可能性がある。

  実際、トランプ大統領は危機を引き起こすのと同時に、そうした危機に対処する機関を弱体化させているように受け止められる。事態がどれほど緊迫しているか過小評価すべきではない。大統領がツイッター投稿で怒りをぶちまけるたびに、現在の株安や他のリスク資産の弱気相場を一段と悪化させる危険性は高まるのだ。

(このコラムを書いたティム・ドイ氏は米オレゴン大学の教授で、「 ティム・ドイのフェッドウオッチ」の執筆者です。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Trump May Have Done Lasting Damage to the Fed: Tim Duy(抜粋)

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