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黒田日銀は来年試練の1年に、消費増税や海外リスクへの対応迫られる

  • フォワードガイダンス強化くらいしか手段ない-東海東京調査・武藤氏
  • 1月以降、副作用と景気後退時の対応を議論-JPモルガン証・鵜飼氏

2019年は黒田東彦総裁率いる日本銀行にとって試練の1年となる可能性がある。消費税率の引き上げ、海外リスクの増大、物価の低迷、長引く緩和の副作用の累積など多くの課題への対応を迫られるからだ。

  日銀は20日の金融政策決定会合で、金融調節方針の現状維持を決定した。黒田総裁は会合後の定例会見で、景気は先行き「緩やかな拡大を続ける」と言明。「リスク、特に海外からのさまざまなリスクには十分注意していく必要はあるが、現時点で何か中心的な見通しが変わったとか、日本経済の先行きの見通しが変わったということではない」と述べた。

  しかし、世界の金融市場は不安定な動きを続けており、同日の東京市場ではTOPIXが1月に付けた直近高値からの下落率が20%を超えて「弱気相場」入りした。長期金利も欧米金利につれて低下し、19、20両日に一時0.01%と昨年9月以来の低水準を付けた。

  政府・与党は19年10月の消費増税に向けて、キャッシュレス決済に対する5%のポイント還元や住宅ローン減税の延長など、各種の消費増税対策を打ち出している。黒田総裁は6日の国会答弁で、14年4月の増税に比べ「影響は小幅のものにとどまる」としながらも、「不確実性は残るので、よく注視して適切な対応を取っていきたい」と述べた。

Bank of Japan Governor Haruhiko Kuroda and Bank of France Governor Francois Villeroy de Galhau Speak At The Paris Europlace Financial Forum

黒田東彦日銀総裁

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  ブルームバーグが10-13日に実施したエコノミスト調査によると、日銀の次の政策変更は金融引き締め方向との回答が86%と圧倒的多数を占めた。しかし、米中間の貿易戦争の激化など先行き不透明感の高まりから、景気後退を意識する声も徐々に増えつつある。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所の嶋中雄二所長は同調査で、「19年9月の消費増税前月を山とする景気後退が10月から発生する」と想定している。東京オリンピック・パラリンピックが開催されるため20年8月まで景気水準は高いものの、そこから急落する蓋然(がいぜん)性が高いため、「後で振り替えれば19年10月から景気後退に入っていた」ということも十分あり得ると指摘する。

  世界的に株価が不安定な動きを続けており、世界経済の先行き不透明感も強まっている。ブルームバーグ・インテリジェンスの増島雄樹主席エコノミストは同調査で、「19年度末までに景気後退に陥る可能性は現状では低い」としながらも、貿易戦争の拡大を通じて、「米中景気が共に失速する可能性など、下振れリスクは大きい」とみる。

  景気後退に陥っても、日銀には有効な手段は乏しいとの声が強い。黒田総裁は20日の定例会見で追加緩和の手段について「短期政策金利の引き下げ、長期金利目標の引き下げ、資産買い入れの拡大、マネタリーベースの拡大ペースの加速など、さまざまな対応が考えられる」と従来の見解を繰り返すにとどまった。

  東海東京調査センターの武藤弘明チーフエコノミストは同調査で、「日銀は既に追加緩和手段を使い果たしており、これ以上金融政策での対応は無理と思われる。フォワードガイダンス(政策金利の指針)を無限に強化していくらいしか手段はない」とみる。

  たとえ景気後退に陥らなくても、物価は低迷が続く可能性が高い。WTI原油先物は10月初めの1バレル=75ドル超から足元で40ドル台後半まで下落。政府は携帯通話料金の4割値下げを各社に要請しており、実現すれば物価をさらに押し下げる。明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミストは17日付のリポートで、通話料値下げだけで生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価の前年比は0%に近づくと指摘する。

  超低金利政策の一層の長期化は必至だが、長期化すればするほど金融機関収益への影響など副作用も大きくなる。JPモルガン証券の鵜飼博史チーフエコノミストは17日付のリポートで、蓄積する副作用への対応や、下方リスクが顕在化して景気後退リスクが高まった時の政策対応について「1 月に経済・物価情勢の展望(展望リポート)を更新する時期以降に議論を始めなければならないだろう」との見方を示した。

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