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トランプ大統領も感謝、ステルス機を大量購入へ-新防衛大綱

更新日時
  • 中期防は過去最大の27兆円超、護衛艦改修で事実上空母化
  • F2後継機は「わが国主導で早期着手」、技術喪失へ与党に危機感

政府が18日に閣議決定した新しい防衛計画の大綱(防衛大綱)と中期防衛力整備計画(中期防)では、1機当たり100億円超の米ロッキード・マーチンの最新鋭ステルス戦闘機F35の追加導入などが盛り込まれた。トランプ大統領が米製品の輸出増を進める中、日本の防衛費拡大が加速している。

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米軍のF35B戦闘機

Photographer: SeongJoon Cho/Bloomberg

  大綱の改定は2013年以来、5年ぶり。今後5年間の防衛装備品の取得計画を定める中期防(19-23年度)の予算総額は、27兆4700億円。現行計画(14-18年度)に比べ、3兆円近い増額で過去最大を更新する。米政府を通じて高性能な装備品を購入する有償軍事援助(FMS)で調達するF35や陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」などが総額を押し上げた。

  菅義偉官房長官は同日の記者会見で、「わが国を取り巻く安全保障環境に対応できる防衛力強化に取り組める」と強調。防衛費拡大について、国民に「丁寧に説明したい」と語った。

  防衛省幹部によると、政府はすでに42機の導入を決めているF35Aの追加と新たに短距離離陸・垂直離着陸が可能なF35Bも取得する方針。あわせて105機を購入して計147機体制とする。総額は1兆円を優に超える。今回の中期防には45機の購入を盛り込んだ。

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トランプ米大統領

Photographer: Yuri Gripas/Bloomberg

  1日(現地時間)のアルゼンチンでの日米首脳会談では、トランプ氏が安倍晋三首相に対し、日本がF35など米国から多くの戦闘機を購入していることを感謝すると述べると同時に対日貿易赤字の是正を求めた。

  防衛大綱では、中国の軍事動向を「安全保障上の強い懸念」と明記。特に太平洋への進出も「高い頻度で行われている」と警戒した。海上自衛隊の護衛艦いずも型(いずも・かが)を改修し、事実上空母化することも新たに書き込んだ。防衛省幹部によると、改修後はF35Bを約10機搭載することが可能で、動く飛行場としての役割を果たす。

F2後継機

  米国製の戦闘機購入が拡大する中、30年代に退役時期を迎える日米共同開発の戦闘機F2の後継機については、「国際協力を視野に、わが国主導の開発に早期に着手する」とした。国産か国際共同開発、既存の戦闘機改修のいずれかにするかを今後判断する。これまでに米ロッキード・マーチンが三菱重工業と共に共同開発を提案するなど米国や英国企業が開発に名乗りを上げている。

  与党内にはF2後継機開発を国内戦闘機産業の行く末を決めるものと重視する声も上がっていた。浜田靖一元防衛相ら自民党の国防族議員でつくる研究会は先月、岩屋毅防衛相に手渡した提言で、戦闘機開発は総額5兆円以上が見込まれる国家プロジェクトであり、数十兆円規模の経済効果が見込まれると指摘。早期に日本が開発方針を決定しないと「外国企業に依存する選択肢しか取れなくなる」と危機感を示した。

  浜田氏は日本に戦闘機開発、製造の「技術がなくなってしまうのは大変な問題」として、遅くとも20年度の開発着手を求めている。

  ただ、拓殖大学国際学部の佐藤丙午教授は、外国企業が絡まない純国産での開発は「技術的にも資金的にも、ほぼ不可能」との見方を示す。特にソフトウエア部分で十分な経験がなく、海外の技術を使用せざるを得ないという。エンジンなど主要部分の国内比率をどこまで守れるかが鍵となるが、国内企業の主体的な開発については、「今の状況を見ている限り、見通しは暗い」と語った。

コスト削減 

  財務相の諮問機関である財政制度等審議会は11月、拡大を続ける防衛予算に関して効率的な防衛装備品の調達を5年間で1兆円以上を節約するよう求めている。大綱と中期防では、調達の効率化などにより約2兆円のコスト削減目標を書き込んだほか、後年度負担の増大を防ぐため新規に購入する装備品の取得額の上限を17兆1700億円に設定した。

  初年度に当たる来年度予算では、最終組み立てと検査(FACO)を国内企業(三菱重工)が行ってきた戦闘機F35Aは6機購入の予定だったが、割高だったため、完成機の輸入に切り替えることで1機当たり約40億円を削減する方向で検討中だ。

  FACOは国内技術基盤を維持するために行われていたが、役割を終える。大綱・中期防の策定に向けた与党ワーキングチームの座長代理を務めた公明党の佐藤茂樹外交安全保障調査会長は13日、「防衛関係費だけがチェックされず増えていくことは、この財政状況からしても許されることではない」と述べた。

防衛大綱の主な内容

  • 優先事項は、宇宙、サイバー、電磁波領域の能力獲得と強化
  • 陸海空の自衛隊に新領域を加えた「多次元統合防衛力」の構築目指す
  • 北朝鮮の核・ミサイル能力に本質的に変化なし
  • スタンド・オフ火力(長距離ミサイル)の獲得
  • FMS調達の合理化、米国の高性能装備品の効率的取得
  • 国内生産の高コスト化・国際競争力不足を克服し、高性能装備品生産と高稼働率を確保

中期防の主な内容

  • 航空自衛隊に宇宙領域専門部隊1個隊、サイバー防衛部隊1個隊を新編
  • 企業の再編や統合も視野にわが国の防衛産業基盤の効率化・強じん化
(第3段落に菅官房長官のコメントを追加して更新します.)
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