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元ゴールドマン胡氏の成功、中国国民は引き継げるのか-改革開放40年

  • 「中所得国のわな」回避にはイノベーションが不可欠
  • 「スタートアップ企業にとって黄金時代は今年終わった」との声も

文化大革命時代の中国で教室から教師が連行され投獄される様子をのぞき見ていた当時12歳の胡祖六少年は、貧困から抜け出しジャーナリストか教師になるという夢の実現に希望を持てなかった。だがその2年後、中国を率いることになる鄧小平氏が大学入試を再開させた。1977年後半のことだった。全生徒が入試を受けることが可能になったのだ。

  清華大学と米ハーバード大学で修士号を取得し、国際通貨基金(IMF)に勤務、そして米ゴールドマン・サックス・グループの中国部門を率いた胡氏は、「初めてはっきりとした道」が見えたと振り返る。「混乱は過ぎ去り、新しい時代がやって来た」と北京に本社を置くプライベートエクイティー(PE、未公開株)ファンドの春華資本を設立した同氏は話す。  

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中国湖南省の汨羅市新塘

写真家:Qilai Shen / Bloomberg

  毛沢東初代国家主席が死去した後、鄧氏が進めた「改革開放」は40年前の78年12月18日の共産党中央委員会総会で正式に始まった。歴史的にもまれな巨額の富を生んだこの政策で7億人余りが貧困から抜け出すことができた。

Deng Xiaoping Reinstated as Chairman

鄧小平氏

フォトグラファー:Bettmann Archives via Getty Images

  しかし数十年にわたる驚異的成長は、今の中国が直面する多くの問題の原因にもなってきた。2013年の習近平国家主席就任時、多くの人々は習氏が鄧氏の改革路線を主導していくと期待した。だが国民を豊かにした鄧氏の市場重視政策ではなく、中国を政治とテクノロジーで世界をリードする超大国にすることを目指す習氏は、国家による管理を再び強化した。

  調査会社ギャブカル・ドラゴノミクスの創業パートナーでマネジングディレクターのアーサー・クローバー氏は「経済運営という点で習氏にとって最重要目標の一つは、正式ではないにしろ、鄧氏式の改革時代が終わったと宣言することだ」と指摘。「鄧氏とその後継指導者は経済における民間企業の役割を拡大し、国家の役目を縮小してきたが、習氏はそうしたバランスがおおむね適切になったと考えているようだ」と述べる。

Shift to Services

Contribution of major sectors to GDP

Source: National Bureau of Statistics

Note: China's economy is roughly divided into the primary sector (agriculture), the secondary sector (construction, manufacturing), and the tertiary sector (services).

  中国は目立たず好機をうかがうべきだとの考えだった鄧氏に対し、習氏は中国市場の外資への開放が進まないといら立つトランプ米大統領ら各国首脳と正面からぶつかっている。テクノロジーと貿易の世界的な優位を狙う中国企業は、国からの補助金と安価な融資を通じ外国勢との競争から守られているというのが中国批判派の主張だ。  

2016 G20 State Leaders Hangzhou Summit

習近平国家主席

フォトグラファー:Lintao Zhang / Getty Images

  米国との貿易戦争を招いている習氏の経済政策に対し国内でも異例の批判が公になる中で、中国が今避けようとしているのは「中所得国のわな」だ。イノベーション(技術革新)に欠け賃金上昇が競争力を損ねるなどして高所得国の仲間入りができないという中所得国のわなを1960年以降に回避できたのは、世界銀行によれば、東アジアでは日本と香港、シンガポール、韓国、台湾だけだ。

Views Of the Shenzhen Skyline From Hong Kong

深圳市

写真家:Justin Chin / Bloomberg

  ソシエテ・ジェネラルの大中華圏担当エコノミスト、ミシェル・ラム氏(香港在勤)は「中所得国のわなを避けるには経済において民間セクターにさらに大きな役割を任せることが極めて重要だ」と語る。

  政府の「中国製造2025」で打ち出した主なテクノロジーで主導権を握るという目標の達成には高機能のスマートフォンやパソコンを生産する以上のことが必要だが、習氏が進める融資制限強化とともに政府の役割を高めるという経済モデルはイノベーションの妨げになる恐れがある。

Trading Titan

Exports as % of world trade

Sources: International Monetary Fund, Bloomberg

  米アップルの中国向けアプリストアにサッカーゲームを提供しているキャップストーン・ゲームズを率いるワン・カオナン氏は「スタートアップ企業にとって黄金時代は今年終わった。投資家を見つけることはほとんど不可能だ」と言う。 

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キャップストーン・ゲームズの北京本社

写真家:Gilles Sabrie / Bloomberg

  カリフォルニア大学バークリー校のインダストリアルエンジニアリング修士号を持つワン氏は13年に北京でキャップストーンを創業。同社の年間売上高は約1億5000万元(約25億円)に達したが、子どもたちがゲームに熱中し過ぎると懸念する中国当局がゲームの発売に関する規制を強化していることを受け、19年3月に英国でゲームを投入する計画だ。

Overtaking Maneuver

Change in share of global GDP

Sources: The World Bank, Bloomberg

  春華資本の胡氏が教師の連行を目にした湖南省の小さな田舎町、汨羅市新塘では経済発展で生じた貧富の格差が容易に見て取れる。胡氏が通っていた中学校の壁は塗装がはがれ落ちている。ベテラン教師のパン・ユエチョンさん(60)によれば、都市部に比べ教育水準は見劣りする。米スタンフォード大学のエコノミスト、スコット・ローゼル氏は「中国は国民という最も重要な資産への投資を怠っている」と論じる。

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汨羅市新塘の中学校

写真家:Qilai Shen / Bloomberg

  春華資本が投資するのはオンライン金融の螞蟻金融服務集団(アント・ファイナンシャル)やクラウドサービスの迅雷網絡技術(シュンレイ)など「ニューエコノミー」企業だ。「中国は正しい軌道にあるが、鄧氏が40年前に始めた改革を加速させるのか、それとも緩めるのか、もしくは後退させるのか誰もが知りたがっている。改革がなければ、中国は自国経済の潜在力を十分に発揮することができないかもしれない」と胡氏は述べている。

春華資本の胡祖六氏

  

Aging Economy

Population according to age group

Source: United Nations

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鄧小平氏と習近平氏の看板

写真家:Qilai Shen / Bloomberg

(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)

原題:China Built a Global Economy in 40 Years, Now It Has a New Plan(抜粋)

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