屋台からお寺までスマホ決済、IT企業の福岡陣取り合戦に地銀も参戦

  • 屋台が一番キャッシュレスに合っていることを実感-福岡市担当者
  • 自ら取り組まないと戦況は見えないー福岡銀行の柴戸頭取

博多の屋台での勘定からお寺のさい銭まで、スマートフォンをかざすだけで支払い完了-。アジアの玄関口である福岡でスマホ決済によるキャッシュレス化推進事業が進行中で、有力IT(情報技術)企業に交じり、新たな収益源を模索する地元金融機関も未知の分野に挑んでいる。

  福岡市が主導して6月以降、公共施設や福岡空港、商店街、飲食店などで実施しているキャッシュレス実証実験LINE楽天、ソフトバンクグループヤフーの合弁会社PayPayなどIT企業のほか、ふくおかフィナンシャルグループ傘下の福岡銀行がQRコードによるスマホ決済サービス「よかペイ」でドラッグストアでの実証実験に参加している。
 
  博多の夜の風物詩である屋台でも8月から実証実験が始まった。事業者はIT企業4社で、市内100軒のうち22軒が参加する。LINEが中小の加盟店の手数料を3年間無料、11月末まで2000円を上限に飲食代の半額を還元するなど、各社が積極的にキャンペーンを打ち出している。

屋台が軒を連ねる中州(博多)

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  那珂川沿いに並ぶ屋台19軒の一つ「中州十番」の田中博臣さん(45)は「QRコード決済は1割、クレジットカードを入れるとキャッシュレス決済は3割に達する」と語る。外国人観光客も多く、売り上げ増に貢献しているという。決済は店側が端末に金額を入力し、客のスマホとQRコードをやり取りする方法と、店に置くQRコードを客がスマホで読み込み、自ら金額を打ち込む方法がある。

  福岡市の西依正博経営支援課長は、実証実験の狙いとして、中小企業の事務の効率化、人手不足の解消、生産性の向上のほか、インバウンド需要の取り込みを挙げる。「屋台は福岡観光の目玉。ITとは縁遠い存在だったが、注文、料理、勘定を少ない人数でこなす屋台が一番キャッシュレスに合っていることをやってみて実感した」と話す。

  福岡銀が市のプロジェクトに先駆けて3月からサービスを提供しているよかペイは、預金口座と直結しているのが最大の強み。代金は即時に利用者から引き落とされ、翌営業日に加盟店に入金される。同じグループの熊本銀行と親和銀行の分も合わせると導入店舗は約2000店に達する。相互利用が可能な横浜銀行の「はまPay」と共に全国の金融機関の先頭を走る。

  福岡銀の柴戸隆成頭取は「銀行の収益は厳しいが、何もしないとさらに厳しくなる」と話す。IT企業が繰り広げる陣取り合戦を「誰が勝つのか観客席で見極めるのもありかもしれないが、自ら取り組まないと戦況は見えない。われわれはグラウンドに出て参加する」と決意を語る。

外国人観光客に人気の太宰府天満宮

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

 
  博多湾の人工島アイランドシティを対岸に臨む「妙法寺福岡分院」。禅を通じ外国人と積極的に交流する院代の清水日勢さん(52)は、台湾からの観光客にキャッシュレスでさい銭を払えないのか、と聞かれたことをきっかけに、オプションで中国アリババ・グループの決済アプリ「アリペイ」も使えるよかペイを導入した。

  水郷・柳川の名物ウナギせいろ蒸しの「御花」も採用しており、藩主立花氏の18代目当主、立花千月香社長(47)は「クレジットカードは手数料が高いし、少額決済だと事務も煩雑なのに対し、QRコード決済はずっと楽」と話す。

  学問の神様、藤原道真公をまつる大宰府天満宮は、中国はじめアジアからの旅行者であふれている。参道の一角にある土産屋「ふく富」もよかペイを導入したが、利用が多いのはアリペイ。篠原久美子店長(63)は、11月の売り上げの半分近くが外国人で、クルーズ船の寄港情報をチェックし店員の人繰りを調整しているという。

  キャッシュレス決済の比率が2割程と他の主要国に比べ低い日本。日本銀行の超金融緩和の下で低収益にあえぐ金融機関にとって、キャッシュレス化に乗り遅れれば、顧客の決済情報という経営資源まで異業種企業に握られるリスクがある。日銀が11月末に開いたフィンテック・フォーラムで、木村武決済機構局長は「日本の金融機関は決済サービスから十分な対価を得ていない」との現状認識を示した。

  福岡銀の柴戸頭取が「戦況は混とんとしている」と語るように、利用者や加盟店の囲い込み競争は激しさを増している。フォーラムに参加した横浜銀の島山幸晴総合企画部担当部長は「正直、決済はもうかるのかと日々言われている」とこぼす。LINE Payの池田憲彦プロダクト室室長も「今はコスト先行で使っていただく時期だと思っているので、収益性は本当に厳しい」と明かす。

  メガバンクや全国の地方銀行が連携し、来年10月にQRコード決済を試験的に始めると報じられており、先行する福岡銀も合流を視野に入れている。難航した十八銀行との統合計画も8月にようやく承認された。さらなる経営統合も「志を同じくするのであればやぶさかではない」と語る柴戸頭取。QRコード決済での連携が合従連衡につながる可能性に「われわれとしてはそういうものを目指している」と語った。

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