革新機構の民間取締役9人が退陣、経産省と報酬めぐり対立

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  • 田中社長は会見で「経産省との信頼関係を回復するのは困難」と発言
  • 傘下ファンドのINCJはJDI25%、ルネサス33%の筆頭株主

The Japan Display Inc. logo is displayed atop the company's plant. 

Photographer: Kiyoshi Ota/
Photographer: Kiyoshi Ota/

経済産業省と対立が続く官民ファンド、産業革新投資機構(JIC)は10日、民間出身取締役9人が総退陣すると発表した。官庁出身の取締役2人は残留するが、田中正明社長ら大部分が去ることで、機能不全状態に陥りそうだ。傘下ファンドのINCJ(旧産業革新機構)は投資先に経営不振に苦しむジャパンディスプレイ(JDI)やルネサスエレクトロニクスを抱える。

  JICと管轄官庁である経産省の確執は、3日に同省が公表した機構の予算変更を許可しないという発表文によって表面化。同省は9月、就任前の田中社長に業績連動を含めて1億円超の報酬を提示したが、省内などから「高過ぎる」と反対を受けて撤回。納得できない機構側が当初案を前提とした予算変更を申請した。

  田中社長は10日の記者会見で、9人が辞任するに至った経緯について「11月初旬に報酬批判が発生し、経産省が一方的に白紙撤回してきた」などとし、「もはや経産省との信頼関係を回復するのは困難」と判断したと述べた。各取締役の辞任時期は残務処理の終了後となる。

  発表済みの1号ファンドは清算するが、同社長はJIC傘下のINCJのオペレーションは「しっかり守らないといけない」と強調した。今後の経営体制は関係者間で協議していくという。

  世耕弘成経産相は報道陣に、田中社長ら9人が「こういう形で辞任せざるを得ない状況になったことは断腸の思い」だと述べた上で、事態の早期収拾に向けたJIC連絡室の設置や第三者諮問委員会の早期立ち上げなどの対策も併せて発表した。

  菅義偉官房長官は10日の会見で、JICの民間出身取締役総退陣について「混乱した事態を早期に収拾することが大事だ」と強調。報酬やガバナンスの在り方について株主である国として「透明性の確保や適正な報酬水準の在り方についてしっかりと議論していく」と述べた。

株価下落

  ブルームバーグのデータによると、INCJはJDI25%、ルネサス33%の株式を保有する筆頭株主。JDIは18年3月期まで4年連続の赤字となるなど不振が続く。10日の取引でJDIの株価は一時前週末比12%安まで下げた後、11%安の59円で取引を終え、上場来安値を付けた。ルネサスは一時同5.0%安となり、4.1%安の518円で取引を終えた。

  しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹運用部長は、JICのトップ退陣による影響について「再建の路線変更は基本的にはないとは思うが、株価はどうしてもネガティブなニュースに反応しがちだ」と指摘。「最悪のシナリオとしては支援が止まるということだが、そこまで考えなくても悪い連想で売っている投資家もいるのだろう」と述べた。

  JICは、JDIやルネサスなどの大型案件に投資した旧産業革新機構を引き継ぐ形で9月に発足。初代社長には、元三菱UFJフィナンシャル・グループ副社長の田中氏が就任。取締役会議長にはコマツ相談役の坂根正弘氏が就いた。田中社長は発足時の会見でソフトバンクのビジョンファンドを念頭に「日本には10兆円ファンドを作った人もいるので、我々も負けないように頑張りたい」と抱負を述べていた。

  旧機構は09年に設置され、JDIやルネサスなどの大型案件に投資。経営不振に陥ったシャープや東芝への出資を検討したこともあった。活動期限が7年を切り長期投資が困難となったことなどを受け、政府が改組・再編を決めた。JIC発足前の既存案件については、子会社のINCJに残し、期間内の投資回収を目指している。

(第1、10段落でJICとINCJの関係について説明を追加しました.)
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