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今マイナス金利やめた方が景気・物価に好影響-小枝氏インタビュー

  • 実証分析で利上げ条件を2%から1%に下げた方が物価を上昇させる
  • 理論が発展段階にある時、データに語らせるとこういうふうになる
Bank of Japan Governor Haruhiko Kuroda Speaks At News Conference Following Rate Decision
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg
Bank of Japan Governor Haruhiko Kuroda Speaks At News Conference Following Rate Decision
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

小枝淳子早稲田大学准教授はブルームバーグのインタビューで、日本銀行が今、マイナス金利を撤廃した方が景気や物価に好影響を与える可能性があるとの見方を示した。日銀の金融研究所は今月5日、約2年前にマイナス金利を撤廃していた場合の景気や物価への好影響を指摘した小枝氏の英語論文を公表した。

  小枝氏は、日銀が今、マイナス金利を撤廃した場合の影響について、まだ実証分析してないので断定はできないとしつつ、総括的な検証を行った2016年9月に比べて景気が良く、物価上昇率も高く、潜在成長率も今後上昇が見込まれるのであれば、「利上げをした方がしなかった時に比べ、経済活動や物価を押し上げる方向に働く可能性がある」と述べた。インタビューは19日に行った。

Bank of Japan Governor Haruhiko Kuroda and Bank of France Governor Francois Villeroy de Galhau Speak At The Paris Europlace Financial Forum

黒田・日銀総裁

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  小枝氏の論文「量的・質的緩和のマクロ経済の影響」は1995年から2016年末までのデータを基に、実際に起きた現実と別の想定でシミュレーションを行い、政策効果を定量的に評価するカウンターファクチュアルと呼ばれる手法で実証分析を実施。日銀が16年1月に採用した0.1%のマイナス金利を同年9月に0%に引き上げていた方が、景気や物価に好影響を与えた可能性が高いという結果が得られた。

  小枝氏は元国際通貨基金(IMF)エコノミストで、昨年10月から1年間、日銀金融研究所の客員研究員を務めた。「この論文は研究者としてデータをしっかり分析して結果を報告しようという動機で執筆した。政策提言をしているわけではない」と強調した。

  市場では、金融研究所が現政策に反する論文を公表したことで、日銀が金融政策正常化に向けて布石を打ったとの見方も出ている。黒田東彦総裁は20日の国会答弁で、同論文は「日銀の公式見解ではない」と言明。マイナス金利は「現時点では大幅な金融緩和の一環として必要」と述べ、市場の観測を否定した。

  日銀は13年4月、2年で2%の物価目標の達成を掲げて量的・質的緩和を開始したが、5年半たっても達成は程遠い状況だ。日銀は現在も、2%を安定的に持続するため必要な時まで現行の金融緩和を継続することや、安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続すると約束するなど、2%にひも付けた政策運営を行っている。

  小枝氏の実証分析では、利上げ条件を1%に引き下げた場合、潜在成長率が強ければかえって物価を上昇させるという結果が得られた。景気が十分強ければ、物価上昇率が2%に達する前に利上げしても、「利上げ後にそれほど引き締めなくてもよくなる」と指摘。長期目標として2%を変える必要はないが、「必ずしもそれを利上げの条件にしなくてよいのではないか」と語る。

  日銀の試算によると4-6月期の潜在成長率は0.78%だが、小枝氏は「そこそこ強い」と指摘。今後も0.8%前後の潜在成長率が続くと仮定すると、物価2%を利上げの条件にするより、1%の方が経済、物価に好影響を及ぼすとの見方を示す。

  主流派経済学の標準的なモデルでは「利上げの条件を引き上げるとあまりにも景気や物価に効くのでパズル(謎)と言われている」と指摘。「理論的なものが発展段階にある時に、実証分析によりデータに語らせると、こういうふうになる」と論文の意義を語った。

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