リスク顕現化しても日銀の手段は限定的、景気下振れや金融不均衡

  • 経済・物価の見通しは「ともに下振れリスクの方が大きい」
  • 「緩和手段が世界で最も枯渇しているのは日銀」と東短の加藤氏

米中の貿易摩擦や金融市場の混乱を受けて、日本銀行は「海外経済の動向を中心に下振れリスクの方が大きい」との見方を示した。金融面の不均衡についても「注視していく必要がある」と警戒感を高めている。いずれのリスクが顕現化しても日銀がとれる手段は限られているとの見方が強い。

  日銀は31日公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、これまで「リスクはおおむね上下にバランスしている」とした2018年度も含め、経済・物価の見通しは「ともに下振れリスクの方が大きい」との判断を示した。

  黒田東彦総裁は同日の会見で、貿易摩擦のエスカレートが「米中のみならず世界貿易、世界経済全体に与える下方リスクに一番注目している」と説明。大きな下方リスクが顕在化して経済・物価見通しに大きな影響が出れば「金融政策自体を調整する」と語った。

  手段については「金利引き下げやマネタリーベース拡大、資産買い入れ拡大などいろいろな手段があり得る」と述べたが、実際にとれる手段は多くないとみられている。東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは29日付のリポートで、次の景気後退時の政策発動余地が乏しいことが世界的に心配されているが、「緩和手段が世界で最も枯渇しているのは日銀だ」と指摘した。

金融面の不均衡

  展望リポートは金融面の不均衡についても点検。低金利の下で金融機関収益の下押しが長期化し、金融システムが不安定化するリスクを「注視していく必要がある」との見方を示した。モルガン・スタンレーMUFG証券の山口毅エコノミストは会合後のリポートで、長期化する低金利環境が金融システムに与える累積的影響を「日銀がこれまで以上に気にしている印象を受けた」と指摘する。

  景気が後退すれば金融面の副作用が一気に顕在化する恐れもある。日銀は金融システムリポートで、リーマン級のショックを想定したストレス試験について、地域金融機関が株式投資信託を増やしてきたため、株式関係損が「リーマンショック時よりも大きくなる」との試算を示した。

  BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは同リポート発表を受けて、通常、金融機関の資本劣化に対して中央銀行ができることは、短期金利を引き下げてイールドカーブ(利回り曲線)を立てて利ざや確保の機会を提供することだが、大きなショックが訪れるとイールドカーブを立てる余地はなく、金融機関の「過小資本状態が長期化する恐れがある」と指摘する。

  野村証券の美和卓チーフエコノミストは会合後のリポートで、金融政策は現状、「副作用対応も含め正常化に向け徐々に微修正される方向にある」一方で、「金融市場の不安定化や景気下振れに対する政策対応余地は極めて限定されている」と指摘。その必要が生じた場合、日銀は「難しい判断を迫られる可能性が高い」としている。

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