環境規制に対応の船舶向け浄化装置、受注は来年本格化-三菱造船社長

  • 1年前と比較すると中小型船を中心に後付け設置の引き合い増加
  • 2020年の環境規制開始から2年程度は需要が継続する見通し

大気汚染防止に向けた船舶燃料に対する世界的な環境規制導入を2020年1月に控え、三菱重工業傘下の三菱造船の大倉浩治社長は、排ガスから硫黄酸化物を除去する浄化装置の設置工事の受注は来年本格化し、規制開始から2年程度は継続するのではないかとの見通しを示した。

三菱重工業長崎造船所

JIJI PRESS/AFP/Getty Images

  大倉社長はインタビューで、「スクラバー」と呼ばれる浄化装置を既存船に後付けする工事の引き合いが1年前と比べて国内の中小型船を中心に増えており、「船主との商談では対応策が常に話題に上がっている」と述べた。18年度に入ってからは受注済みの契約を含め商談は進んでおり、受注数については非公開だが、数十件について協議中という。

  スクラバーを設置するための船舶改造工事は「個々の受注金額は小さく、数億円程度。1隻で100億円、200億円規模になる新造船の受注ではないので、数をこなして収益につなげる必要がある」と説明する。ただ、ドッグは既に埋まりつつあり、現時点で決断しても半年でスクラバーを設置するのは難しく、20年に間に合わない船が出てくるのではないかとの見方を示した。

  国際海事機関(IMO)は、大気汚染防止策として船舶が排出する硫黄酸化物を減らすため、20年1月から船舶燃料の高硫黄C重油に含まれる硫黄分濃度の上限を従来の3.5%以下から0.5%以下に制限することを決定。海運会社や石油会社は規制への対応を迫られている。

  対応策は、従来と同じ安価な高硫黄C重油の使用を可能にするスクラバーの設置、硫黄分含有量が0.5%以下の軽油や低硫黄C重油などの燃料油の利用、液化天然ガス(LNG)などの代替燃料の使用の3つ。ただ、既存の船舶にLNGを燃料とするシステムを導入するにはコストが高額となるため、スクラバー設置か低硫黄燃料への切り替えが現実的とされている。

コスト負担が問題

  大倉社長は、スクラバー設置のメリットとして、海運会社には「安価で供給体制が整ったC重油を使い続けられる安心感がある」と話す。中小型船向けのスクラバーは、三菱重と三菱化工機が共同で開発・製造している。

  ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスの9月のリポートによると、スクラバー搭載船は20年までに約2300隻、25年には約4800隻まで増加する見込み。世界の商船数は現在9万隻を上回る。既存船の大半は規制開始の時点では低硫黄燃料への切り替えで対応することになる見込みだ。 

  大倉社長は、環境規制への対応は、コストを誰が負担するのかという問題に行き着くと指摘。同じ海運業でもフェリーや貨物船など業態が異なり、運賃への転嫁が難しいケースもあるため、スクラバー以外も幅広く環境エンジニアリング事業を強化し収益拡大を目指す考えを示した。

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