日銀、金融拡張続くと下方リスクため込む恐れ-システムリポート

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  • 緩和的な資金調達環境背景に信用度の低い企業中心に銀行借り入れ増
  • 不動産業向け貸出残高は1980-90年代のピークを上回って増加
Photographer: Tomohiro Ohsumi
Photographer: Tomohiro Ohsumi

日本銀行は、金融循環の拡張が続くと金融機関はバランスシート調整という下方リスクをため込む恐れがあるとの見方を示した。金融機構局が22日公表した半年に一度の金融システムリポートで明らかにした。

  金融循環上の過熱感や停滞感を客観的に評価するため、さまざまな金融活動指標について基調からの乖離(かいり)度合いを色で識別した「ヒートマップ」は、1980年代後半のバブル期並みの過熱を示す「赤」となった指標はなく、金融経済活動全体として「バブル期にみられたような行き過ぎた動きには至っていない」としている。

  一方、個別には「赤」に近接する動きもみられると指摘。 緩和的な資金調達環境を背景に信用度の低い企業を中心に銀行借り入れが増加し、総与信の対GDP(国内総生産)比率は基調から乖離して上昇しているほか、不動産業向け貸し出しは残高、対GDP比とも過去最高を更新し、基調からの乖離幅も拡大しているという。

  黒田東彦総裁は19日の全国信用組合大会でのあいさつで、地域金融機関の収益について、人口や企業数の継続的な減少や低金利環境の長期化を背景に「預貸収益などの基礎的収益力はすう勢的に低下している」と指摘。先行きも「構造的に収益へ下押し圧力がかかり続ける」の見方を示した。

  同リポートが今回新たに取り入れたのが、ヒートマップを構成する14の金融活動指標の基調からの乖離率を加重平均することで一つの指標に集約した「金融ギャップ」。バブル崩壊期以降のピークを更新しているほか、プラスの活動指標の広がりが見られ、プラス局面が長期化していることが示された。

  さらに、金融ギャップが先行きの実体経済にどの程度の景気変動リスクをもたらすかをGDPアットリスク(GaR)という手法を用いて評価すると、先行き3年間といったやや長い目でみると、バランスシートの調整圧力をため込むことで下方リスクを高める方向に作用するとしている。

  木村武審議役は記者説明で、GaRは計測誤差が相応に大きいとしつつ、「金融循環の拡張が続くと、やや長い目で見るとバランスシート調整という下方リスクをため込む恐れがある」と指摘。金融機関対象のアンケート調査から「リスク管理が必ずしも十分でないままリスクテイクを積極化している事例も確認できた」とした上で、「金融面の動向に一層注視していく必要がある」と述べた。

  日銀OBで金融機構局担当理事などを歴任したオフィス金融経済イニシアティブの山本謙三氏は電話取材で同リポートについて、金融機関が保有する有価証券の益出し余力の低下や、リスクに見合わない貸し出しの増加、投資信託のリスク管理の不備を強調するなど、金融システムに対する「日銀の懸念のトーンが徐々に強まっているように見える」と述べた。

(5段落以降に発表内容とコメントを追加します.)
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