たっぷり寝る社員に報酬、クレイジーが日本の働き方に一石

  • 6時間以上の睡眠確保で最大6.4万円相当支給、社員の幸福度高める
  • 睡眠不足による日本の経済損失はGDP比2.9%、先進5カ国中最低
Photos of Crazy Inc. workers, including CEO Kazuhiko Moriyama, top right. Photographer: Marika Katanuma/Bloomberg
Photographer: Marika Katanuma/Bloomberg

政府が働き方改革を進める中、日本企業の従業員の睡眠時間はまだ不足している。東京都墨田区のある企業はこうした状況を打破しようと、夜にたっぷり睡眠を取った社員に報酬を付与するという思い切った福利厚生制度を打ち出した。

  この会社は、オーダーメードのウエディングを手掛ける「クレイジー」。森山和彦社長(35)によると、同社は今月から「睡眠報酬制度」を導入。6時間以上の睡眠を1週間のうち5日以上取った社員を対象に、報酬として同社の食堂で利用できるポイントを付与する。最大で年間 6万4000円相当になるという。寝具メーカー、エアウィーヴの協力も得て社員自ら専用のスマホアプリで睡眠時間を測る。

  制度導入のきっかけは森山社長が1年ほど前に国内広告大手に勤務する友人から、「働きたいけど働けない」と苦しい胸の内を聞いたことだった。当時、その友人の勤め先は女性新入社員の過労自殺をきっかけに長時間労働の改善に取り組む最中だった。友人の「働きたい人の権利が守られていない」という言葉にインスピレーションを受け、労働時間の短縮ではなく報酬によって睡眠時間を管理できたら面白いと発想を逆転させたという。

  日本人の睡眠を取り巻く問題は深刻な状況にある。米シンクタンク、ランド研究所によると、日本の睡眠不足による経済的損失額は国内総生産(GDP)比で2.9%と試算。調査対象となった米国、英国、ドイツ、カナダを含む5カ国中最大となった。損失額としては経済規模が大きい米国がトップで4110億ドル(約46兆2300億円)、日本はそれに続く1380億ドルだった。健康機器メーカーのフジ医療器が今年、20歳以上の男女4303人を対象にした調査では、92.6%が睡眠に対して不満を持っていることが判明した。

寝不足が経済に大きな影響

先進5カ国の睡眠不足による経済的損失額

出所:ランド研究所

  本来、労働時間の管理は社員を守ることが大前提だが、働き方が多様化した現代にそれでは社員を守ることができないと森山社長は指摘する。今回の制度では「いろいろなタイプの人がいる。働き方は多様でいい」とし、強制的にルールとして定めるのではなく、インセンティブ制にすることで多様な働き方をサポートした。

無料ランチ、子連れ出勤

  森山社長はクレイジーを創業する前、人材コンサルタント会社に6年半勤務していた。「幸せに働いていなかった」とし、自らうつ病に苦しんだ経験も同社が掲げる社員の健康や幸福を重んじる経営思想に大きな影響を与えたという。

  クレイジーでは創業当初から経営の最優先順位に「健康」を掲げ、自然食ランチを社員全員に毎日無料で提供。社内に託児施設を設置し、子連れ出勤も可能にした。社員同士が人間関係を築くために、就業時間内での旅行も認めている。睡眠報酬の制度も従業員一人ひとりの幸福度を高めながら、組織全体では生産性の向上を目指すために導入したという。

  森山社長にとって今回の試みは社会実験でもある。同社の多様な働き方を推し進める事例を行政や同じ裁量労働制の企業に見てほしいとし、今後は社員の医療費の自己負担分を会社が支払うことも検討しているという。将来的には「社員100万人」と壮大な夢があるといい、社名のように「世の中から見たらクレイジーと言われることをやってのけよう」と考えていると話した。

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