景気の転換点は遠くない、設備投資の強さは悪材料-早川元日銀理事

  • 来年か再来年のどこかが景気転換期と考えるのが自然だ
  • 景気後退期直前の強い設備投資、失敗することはほぼ間違いない

日本銀行元理事の早川英男氏

Photographer: Tomohiro Ohsumi
Photographer: Tomohiro Ohsumi

日本銀行元理事の早川英男氏は、来年初めに戦後最長となる景気拡大が転換点を迎える時期は遠くないとした上で、最近の設備投資の強さは「悪いニュースだ」との見方を示した。

  早川氏は16日のインタビューで、来年10月の消費増税や2020年夏の東京オリンピック終了に伴い、「来年か再来年のどこかが景気転換期と考えるのが自然だ」と語った。設備投資計画は「近年まれに見る強さ」だが、景気後退期直前の強い設備投資は、過剰設備となるため失敗することはほぼ間違いないと説明した。

  企業短期経済観測調査(短観、9月調査)で全規模・全産業の設備投資計画は前年比8.5%増と9月調査としてはバブルのピークだった1990年度以来の伸びになった。早川氏によると、バブル景気の下でも拡大局面末期に設備投資が爆発的に増加し、後に雇用、債務と並ぶ3つの過剰の一つになった。

  7月の経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、設備投資の過熱度合いを示す「資本ストック循環図」が削除された。早川氏は「異常に強いので将来大きく落ちることを意味する絵になったはずだ。掲載すると具合が悪いので削ったのだろう」と推測する。

  日銀広報課は「個別の図表に逐一コメントすることは差し控えるが、展望リポートでは最も適切な図表を毎回使っている」と回答した。

  黒田総裁は2013年4月、2年で2%の物価目標達成を掲げ異次元緩和に踏み切ったが、5年半たった今も達成の見通しは立っていない。金利も上げることができず、1990年代後半の金融危機時や2000年代後半のリーマン危機時ですら0.5%あった政策金利は、今はマイナス0.1%だ。

  早川氏は「最大の問題は景気後退が来た時、何ができるかだが、金融政策は手がない。結局、元の木阿弥(もくあみ)よりひどい」と語る。

副作用

  景気後退になれば金融面の副作用が一気に表面化する恐れもある。倒産が増加した場合、金融機関が積み立てる貸倒引当金が増加するためだ。早川氏は「たくさんの銀行で簡単に赤字になる」と指摘し、「金融システムに対する信頼感がかなり揺らぐ可能性があり、日銀の責任だと言われる」と述べた。

  早川氏は、好調な米国経済も来年は減税効果が息切れし、貿易摩擦の悪影響も出てくると分析。賃金や物価が徐々に上昇する中、原油高や関税による消費財の値上がりが加わり、米国経済も「20年くらいが危ない」とみる。

  景気後退時までに米国は3%超まで政策金利を引き上げるとみられる一方で、日本は引き続きゼロ金利のため、米国が金利を引き下げた場合、日本との金利差縮小で「常識的に考えると相当円高になる」と指摘。為替相場は円安水準で推移してきており、反動で「80円台くらいになっても全然おかしくない」と話した。

  早川氏は東大経済学部を卒業後、1977年に日銀に入行し、理事や調査統計局長を歴任した。2013年4月に富士通総研経済研究所に入社、エグゼクティブ・フェローを務める。

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