外国人労働者受け入れに舵、人手不足緩和も効率化抑制の弊害

  • 介護や建設など十数業種で門戸開放、宿泊業から期待の声も
  • 未活用の労働力の掘り起こしや労働生産性の向上が先決との指摘
日本政府、外国人労働者の受け入れ拡大へ:人手不足解消策

政府は、外国人労働者の本格的な受け入れに向けて舵(かじ)を切った。人手不足の分野に広く門戸を開放する法改正を行い、来年4月の施行を目指す。高齢化に伴う生産年齢人口の減少に苦しむ多くの企業が歓迎するが、専門家の間では労働市場の効率化を抑制するとの意見もある。

  具体的には、相当程度の知識や経験をもつ外国人向けに「特定技能1号」、より熟練した技能をもつ外国人用に「特定技能2号」の在留資格の創設を検討している。1号の在留上限は5年で家族帯同は認めず、所定の試験に合格して2号に移行すると家族帯同を認められ上限なく在留期間が更新でき、潜在的な永住への道が開ける。

  労働需給のひっ迫は深刻化している。日本商工会議所が6月に実施した調査では、企業の3分の2が労働者が不足していると答えた。帝国データバンクによると、今年度上期に労働者不足のために倒産した企業数は昨年度と比較して4割増えた。

  一方で、外国人労働者は増加の一途をたどっている。2017年10月の外国人労働者は約128万人と過去10年で2.6倍に膨らんだ。このうち留学生と技能実習生の在留資格を持つ労働者がそれぞれ2割と、全体の半数近くに上る。

留学生・技能実習を中心に外国人労働者が増加

外国人労働者数は約128万人と過去最高に

出所:厚生労働省

  こうした事態の是正に向け、政府は6月に決定した骨太方針で、外国人労働者の受け入れ拡大方針を示した。経済財政諮問会議の民間議員を務める日本総研の高橋進名誉理事長は7月、留学生や技能実習生に「依存するところから一定程度改善していく」と語っていた。日本総研は30年には外国人労働者が280-290万人に達し、同比率は現行の2%から5-6%に増加すると試算している。

受け入れに沸く業界

  政府は外国人労働者の受け入れを生産性向上や女性・高齢者などの就業促進を図ってもなお人手不足となる業種に限って認める。菅義偉官房長官は9月の講演で、介護、農業、建設、造船、宿泊の5業種に加え、「十数業種で外国人材がなければ事業に支障が出る」とし、必要な分野で受け入れていく方針を示した。

  約3年前から製造業への外国人労働者の受け入れ特区を申請してきた愛知県は、労働力不足が将来にわたって続くと予測される業種や職種を有効求人倍率や賃金水準などから割り出し、年2500人の受け入れが必要と試算していた。

  大村秀章知事は、政府の方針変更について「一歩前進」と評価する一方、これまで自治体任せとなっている日本語教育や社会保障といった外国人向けの生活支援を国が責任を持って取り組むよう注文を付けた。

  こうした動きに期待を寄せるのは、東京五輪を控え、訪日外国人旅行客の急増に対応を迫られている宿泊業界だ。日本旅館協会の佐藤英之専務理事は、「宿泊や旅行、観光業界は処遇面もいいわけではない。有効求人倍率が高くなると、大手企業が人の囲い込みをしているのですごい人手不足になる」と窮状を訴える。

  観光庁は30年に6000万人の訪日外国人旅行客の誘致を目標に掲げるが、同時で関連業界で7万人の人手が不足すると試算する。

労働市場改革

  三菱総合研究所によると、日本は20年代前半に200万人を上回る労働力不足に陥る一方、30年代には人工知能(AI)などによる自動化・無人化の進展によって労働力余剰に転じるという。山藤昌志主席研究員は、「将来的に機械に代替が考えられる職については余剰感が出てしまうため、むやみにいかなる職種でも足元の不足感に対応する形で膨らますのは適切ではない」と指摘する。

  慶応大学の中島隆信教授も、外国人の受け入れよりも未活用の労働力の掘り起こしや労働生産性の向上が先決と考えている。「日本人が就きたがらない待遇の悪い仕事や人の集まらない職場に、このままだとやっていけないから外国人を入れるとなると、永遠に生産性の改善もないし、企業の収益力向上もない」という。

移民政策

  連合は8月、厚労相に提出した要請で、これまで「専門的・技術的分野」に限って外国人材を受け入れるとしてきた政府の方針転換にもかかわらず、国民的な議論が行われていないと懸念を表明。17年度に技能実習生の受け入れ事業所のうち7割超で労働基準法違反が認められているとし、「日本で働く外国人労働者に対する労働関連法令順守、人権侵害が発生しない職場環境の実現こそが先決」と指摘した。

  移住者と連帯する全国ネットワークの鳥井一平代表理事は、政府方針は「日本の移住政策の転換点になる」とみる。労働力不足は日系ブラジル人を受け入れたバブル期の20-30年前に始まっており、その後も技能実習生や留学生などを労働者として受け入れ、「ゆがんだ移民政策になってきた」と指摘。過去の教訓や諸外国から学び、日本に合った施策を考える必要があるとの認識を示した。
  

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