野村、リーマン事業買収から10年-欧州投資銀部門の起死回生図る

  • 指導部人事刷新や顧客重視の対応進める-米投資銀との競争も
  • 「経営陣にとって難題だが、野村はやろうとしている」-アナリスト
Photographer: Akio Kon/Bloomberg
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

野村ホールディングスは2008年の金融危機のさなか、破綻した米リーマン・ブラザーズ・ホールディングスの欧州投資銀行事業をただ同然で取得したが、この買収は今もコストを生んでいる。

  このため最新の決算発表で財務統括責任者(CFO)が緊急にパフォーマンスを改善させる強い必要性に言及したほどだ。野村は少なくとも13年以降、欧州の投資銀行トップ10に入ったことがない。コーリション・デベロップメントのデータが示した。

  他の証券会社と同様、野村も規制の負担とマイナス金利に苦しんだ。それに加えて欧州では、経営陣の混乱や裏目に出た高リスク取引などの困難にも見舞われた。同社は今、指導部人事刷新と複雑なファイナンス案件への参入、テクノロジー活用によって起死回生を図ろうとしている。事情に詳しい関係者らが語った。

  野村がリーマン資産を受け継いでからの10年で、欧州部門は税引き前ベースで約7670億円の損失を出してきた。今年4-6月期は52億円の赤字。同社の届け出資料から分かった。関係者によると、社内の数字ではリーマン買収以降の欧州での営業損失は約5億ドル(約570億円)だという。

  北村巧CFOは電子メールで、欧州・中東・アフリカ(EMEA)について、社内的な数字が示すのは過去9年は厳しかったが過去2年は黒字ということであり、それが重要だと強調した。

  ジェフリーズ・グループのアナリスト、ジョゼフ・ディッカーソン氏は、「野村のリーマン買収は資本市場事業での買収の難しさを浮き彫りにした」と指摘する。社内や同社に近い関係者らによると、野村はEMEAで、安定した収入をもたらす長期ベースの顧客層確保に苦戦。これをカバーしようと投資銀部門が通常より大きなトレーディングに賭けた可能性があり、失敗に終わることもあったという。

  ハーミーズ・インベストメント・マネジメントのシニア・クレジット・アナリスト、フィリッポ・アロアッティ氏は「トップグループに入れないと、市場シェアを伸ばそうとして無理をしてしまうことがある」と話す。事情に詳しい関係者によると、野村のトレーダーは昨年終盤、シンガポール上場の商品取引会社ノーブル・グループを巡る取引で約2300万ドルを失った。また、ほぼ同時期に中国の公的機関が絡む大型の欧州債取引でも損失を出したという。

率いるのはアシュレー氏

  こうした苦戦の流れを反転させることを任されたのが、世界の証券事業を率いるベテランのスティーブ・アシュレー氏だ。英国人の同氏はEMEAでの16年の大規模リストラを率いた。12年にトレーディング責任者となりその後、投資銀行全体のトップとなった同氏は今年6月以降にロンドンで、最もベテランのトレーダーや事業部門責任者を含め約50人を削減した。

  事情に詳しい関係者によれば、この目的は単なるコスト削減ではなかった。アシュレー氏は上級スタッフを更迭し、ロンドンの指導部を刷新したかったのだと関係者の1人が述べている。

  同時に、ヘッジファンドのミレニアム・マネジメントからジョン・グーシアス氏を採用したりトム・ヒーナン氏を金利トレーディング責任者に登用したりと、新しい人材を投入したと関係者は明かした。

  ロンドンの幹部陣は、新設のクライアント・ファイナンシング・アンド・ソリューションズ(CFS)という部門を拡張している。資金調達やヘッジなどの顧客ニーズに応えていく部門だ。アシュレー氏はまた、社債とそのデリバティブ(金融派生商品)の売買による収入を25%増やすほか、欧州債の扱いからの利益も増やしたい考えだと同社の戦略に詳しい関係者が述べた。

  アシュレー氏は電子メールで、「顧客に合わせたファイナンスやソリューションを一体化して提供していく目的で設立されたCFSプラットフォームを通じ、引き続き事業基盤の強化を続ける」と電子メールで説明。デジタル技術を活用するホールセール・デジタル・オフィスの進展やターゲットを絞った人員採用でEMEA部門を強化している点にも触れた。

  EMEAのパフォーマンス改善に向け、野村が採用した人材の一人に元ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド・グループ(RBS)の金利トレーダー、ジェズリ・モヒディーン氏がいる。同氏は今年、投資銀行の世界チーフ・デジタル・オフィサーとして加わった。アシュレー氏直属の部下として、テクノロジーのほか、コントロールとガバナンスを担当する。モヒディーン氏はコメントを控えた。

  内部立て直しとともに、野村にはリーマン後を生き残った米投資銀との競争もある。クレディットサイツのアナリスト、デービッド・マーシャル氏は、野村には米国の投資銀行と全面的に競争するリソースやコミットメントがないとした上で、「特定の商品や市場にリソースを集中させることで成功できるだろうか」と問い掛け、「これは経営陣にとって難題だが、野村はそれをやろうとしている」と語った。  

原題:After Losses in Europe, Nomura Seeks to Resuscitate Business(抜粋)

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