求む「みずほをぶっ壊す人」-自己否定からの変革、採用様変わり

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  • 創造的思考力が増す、内々定者の資質-他業界と争奪戦に
  • 異質な人材を生かせるか、問われる組織の寛容力

「やっぱりそうか」-みずほフィナンシャルグループで人事戦略を統括する宇田真也執行役員は、同社採用に応募した学生の過去3年分の資質診断を見てつぶやいた。チームワーク力、状況判断力、問題解決力で高い評価を得た非常に似たタイプの人材が揃っていたのだ。

2016年のジョブフエア

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  点数が低かったのは、創造的思考力やプレッシャーへの耐力。資質評価を同心円グラフ上に表した波形は、コンサルティング系人材と真逆だった。金融機関に変革が必要な今、「器用にそつなくこなせる人材ばかりでは前に進めない」。宇田氏らが中心となって、みずほFGは昨年、19年度の新卒採用方針を大胆に変えた。

  マイナス金利政策の影響で国内金融機関の経営環境は悪化し、収益力の強化が課題となっている。昨年、大手3フィナンシャルグループは相次いで収益構造の改革を発表。みずほFGは1万9000人の人員削減を含む構造改革計画で、システムや組織・人員の最適化などを柱に据えた。

  採用にあたっては、担当部門がこれまでと違う人材を求め大学研究室を回り、他業界志望者との個別質問会を開いた。学生に配ったリーフレットには、「みずほはみずほである必要があるのか」と疑問を投げ掛け、「今のみずほをぶっ壊す人を必要しています」と従来との違いをアピールした。

みずほFGのリーフレット

brochure: "We want to meet people who aren’t Mizuho types". Photographer: Takaaki Iwabu/Bloomberg

  マネックス証券の大槻奈那チーフアナリストは、銀行が新たな収益源を求める中で新しいタイプの人材を求めるのは理にかなっており、「時流に沿った採用方針」とコメント。ただ、本当に求める人材を採用できるか、また採用後に良いところを生かせるかの2点が課題になると語った。




創造的思考力アップ

  新規採用では、のべ1000人の社員が学生に会い、リーダーシップの素養があるかなど見極める。採用担当者は採用に関わる社員全員に、求める人材像を繰り返し伝えて理解を求めた。その結果、8月29日時点での内々定者の資質スコアは、「創造的思考力」「状況適応力」「プレッシャーへの耐力」が数ポイントずつ伸び、創造的思考力が一定レベル以上の割合は従来の20%から35%に伸びた。

  外国人、海外大学出身者などグローバル人材や科学・数学などの理系、いわゆる「STEM」人材も積極的に求めており、19年度のSTEM人材の採用割合は、従来2倍の2割程度を見込む。

  手応えは内定辞退者の調査からも感じられた。従来は5割程度が他メガ銀行との取り合いだったが、今年の内々定段階では金融機関との競合は約37%に減少。その分、リクルートホールディングスやトヨタ自動車など非金融分野との掛け持ちが目立った。宇田氏は、グーグルやアップルなどトップIT企業向きの資質を持つ人材獲得も意識。業界を超えた人材争奪の様相となっている。

  金融サービスの担い手にフィンテック企業が台頭する中、みずほは17年にデジタルイノベーション専担役員を設置し、ビッグデータを活用した個人向け融資サービス「Jスコア」を稼働させた。昨年の銀行法改正で、IT関連企業への出資や子会社化が可能になったことで流れは加速するとみられている。

  3メガ銀行の採用では、三井住友フィナンシャルグループが19年度から新たに理系大学院生を対象としたコース採用を新設した。「デジタライゼーションコース」では、ITや人工知能などのスキルで金融業界をリードする覚悟を持った学生を、「クオンツコース」では高度な数学的知識で市場動向把握やリスクの見える化を図り銀行経営に関わりたいという学生を募る。三菱UFJフィナンシャル・グループは適宜必要な人材を求めており、今年度採用方針に大きな変更はないとしている。

  経団連の中西宏明会長は9月25日の会見で、企業側が学生に対し、「具体的にどのようなスキルを備えていてもらいたいか、そのためにどのような勉強をしてほしいのかといったことを明確に示していく必要がある」と述べている。

失敗を許せるか

  これまでと違う人材が増える来年度以後、宇田氏は「この組織の寛容力、懐の深さが試される」と考えている。同社は16年に人事の基本ポリシーを公表し、「積極的な挑戦を促し、失敗を許容し、失敗も含めた全ての経験からの学びを評価する人事」を実践するとした。しかし、同期世代での競争や失敗を恐れ挑戦を敬遠する傾向は完全にはぬぐい切れていないという。

  みずほFGの坂井辰史社長は5月、同社の課題に基礎的収益力低下への対応と企業文化の改革を挙げた。従来と違う人材が活躍できるための社内改革も今後本格化することになる。

(更新前の記事は宇田氏の名前を訂正済みです)

(第11段落に経団連・中西会長のコメントを追加します.)
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